最果てのパラディンIV 灯火の港の群像 (オーバーラップ文庫)

【最果てのパラディン IV 灯火の港の群像】 柳野かなた/輪くすさが オーバーラップ文庫

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“鉄錆山脈”での死闘と、帰還の後。ウィルを待ちうけていたのは、めでたしめでたしの幸福な日々でなく、おそるべき更なる脅威でもなく…なんてことはない、ありふれた日常の日々だった。頼れる戦友、剣士レイストフとの友誼と決闘。吟遊詩人ビィと、雪積もる魔法の森での冒険。あるいはいにしえの、無敵の巨人との戦い。そして、灯火の神との祈りと対話。―これは聖騎士の綴る、ひと冬の日々の記録。

あ、やっぱりこの作品のヒロインって灯火の神様なんだ。いや、これに関しては前回にお姉ちゃんな不死神がウィルにちょっかい掛けてきたときの、グレイスフィールさまの嫉妬全開モードを見ていると言わずもがなというところだったんですけれど、神様ふつうに地上の種族とウィルが恋仲になることに関しては何にも言わなかったと思うんですよね。でも肝心のウィルの方がこれほどまでに熱烈な感情をグレイスフィールさまに抱いていたとは。
まあウィルの女っ気の無さは無関心故じゃなくて、徹底的に縁がないだけ、な気もしますけどね!!
ともあれ、これってもう最上級の純愛ですよね。触れることも叶わぬ相手に、ただただ愛を捧げ続ける。信仰と変わらぬ愛という名の供物を。まさにプラトニックラブ。
まあ、まさかグレイスフィールさまも、神との交感の場であれだけ熱烈な愛の告白をされるとは思ってなかったんでしょう。神様としてなら信仰だろうと愛だろうと黙って受け取るべきなんでしょうけれど、このグレイスフィールさまときたら普通の女の子みたいに、今の自分の力では受肉できないし、あなたになにもしてあげられない、なんて返事してるんですよね。それでも、死にかけてて意識朦朧としてテンパってるウィルに押し切られてしまうのですが、いやその返答とか神様じゃなくてただの女の子ですから。かわいいなあ。
レイストフさんの結婚話の際にも、神様そこで啓示しちゃうんですか!? という、誘拐婚の仲間に神様も加わってるかのような働きを見せてて、だから神様興味津々すぎるでしょう、女の子か!
正直、ウィルは女の子の趣味が素晴らしくイイと思うよ、うん。
ただし、メネルのウィルの子孫をずっと見守っていく、という野望はこれ絶対果たされないこと確定ですよね。それとも、大逆転なサヨナラホームランが控えているんだろうか。
どちらにしても、この件を知ったら不死神さまのテンションがあがっていまうだろうなあ、というのはネメルとまったく同意見である。
ウィルにしても神様にしても、この件の前に丁度レイストフさんの結婚の話があっただけに、それぞれ思う所あったのでしょうけれど。あれは、一人の剣士としての生き様の一つの終着点であり、一つの生まれ変わりでもありますもんね。この困難の時代であろうと誰もがそうではないのでしょうけれど、人を愛して人生をともにするということが、それまでの人生を終わらせるという決断を伴うだけの重いもの、いや大事なものというべきか。それだけの比重を伴っている、というケースは決して多くはないはず。それだけ、レイストフさんのそれまでの剣士としての生き様が壮烈で輝かしく一瞬一瞬が途轍もないものだったことをうかがい知ることが出来ますし、それを引き換えにしてしまえるだけのものを、アンナさんとの間に見出したのだという証左なのではないでしょうか。愛というものの凄まじさを、ウィルも神様もこうして目の当たりにしていたわけだ。
その意味ではバグリー神殿長、あっさり娘との結婚を認めずに、ああやって立ちはだかる最後の壁になってみせたのも、それだけレイストフさんの人生の終わりと始まりを尊重し、祝福していたからなんだろうなあ、と思ってしまうのです。

ビィの話もまた、彼女が大好きだった人を歌い「継いで」行こうという話でしたし、無敵の巨人の話もまた、大いなる神代から受け継がれていたものが、一度は途切れながらも悠久の果てに再会して、これからも続いていく話でしたし、それを見守り寄り添い手助けしつづける聖騎士さま、その人が両親・ブラッドとマリーから受け継いだものを心に宿して、頑張っているわけで、その象徴とも言うべきブラッドたちに向けた手紙を綴るシーンを最後に持ってきたのは、この短編集の締め方としてはとてもしっくりくるもので、しばし余韻に浸らせてもらいました。良いものだ。

シリーズ感想