弱キャラ友崎くん Lv.2 (ガガガ文庫)

【弱キャラ友崎くん Lv.2】 屋久ユウキ/フライ ガガガ文庫

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弱キャラの第2ステージは生徒会選挙!?

人生はクソゲー……ではないのかもしれない。少なくとも良ゲーであることは認めてもいい。学園のパーフェクトヒロインこと日南葵と付き合う(そういう意味ではない)ようになって、俺、友崎文也の価値観は根底からひっくり返されることになった。まあまだ神ゲーとは認めてないんだが、このゲームの最強プレイヤーである日南の指導のもと、レベルアップに励む日々だ。

季節は初夏。生徒会選挙の時期。日南が会長に立候補するのは当然として……え、みみみも出るの!? みみみをサポートすることになった俺は、これまでの経験をもとに日南に挑むが――?
ねえ、この人ちょっとボスキャラすぎません?
ちょっぴりレベルアップした弱キャラが挑む人生攻略ラブコメ第2弾!
すげえな、この高校生たち。人生がクソゲーか良ゲーかはわからないけれど、この子たちが総じてハードゲーマーだというのは揺るぎのない事実だろう。エンジョイ勢としては、彼らの人生に人生を賭けた生き方には途方に暮れるほかない。そんなに一生懸命生きられないよ。これが人生観の違い、というやつだろうか。
そして、友崎くんも実のところこのハードゲーマーなんですよね。これくらいでいいや、という妥協がない。人生はクソゲーだ、なんて投げきって居た時だって適当に上手く泳いでおけばよかったのに、徹底して背を向けていたのはうまく出来なかったんじゃなくて、やらないとキメていたからなんじゃないだろうか。でなければ、日南の苛烈過ぎる課題から逃げ出そうとせずに挑み続ける意思の強さがわからない。どう見てもその原動力に、ボッチからの脱却とか孤立からの怯えみたいな後ろ向きな追い立てられるようなものが見当たらないんだもの。人生をゲームと見立てて、彼は勇んで挑んでいる。難しいゲームを攻略するのを楽しむように、限界を見極め、挑み続けている。結局のところ日南は彼の背中にブースターをつけて着火してスタートさせたに過ぎないのだ。走り出せば、こいつはあとは自分でどこまでも行くのだろう。
みみみに協力して、独自に動き出したのも言ってみれば成長とは少し意味が異なっているんじゃなかろうか。いや、成長、レベルアップと言えばそうなんだろうけれど、どちらかと言うとこれまでの課題によって友崎くんのキャパシティーが拡張されたと言う方が自分は似合っている気がする。彼には、未だ使ってなかった余力がまだだいぶ有り余ってるのだ。
一方で、既に限界近くまで自分を振り絞り続けている子も居る。自分のやれることを、想像できうる範囲でやり尽くして、やりきって、頑張り抜いている子が。でも、それにも関わらず、自分の前に居て、追いつけず、何をやっても届かなくて、もう既に振り絞り尽くしているのに、むしろどんどん遠ざかっていく相手が居たら、その子はどうなってしまうんだろう。
今回のヒロイン。みみみの話である。物語である。
人間、誰しもが求道者にはなれない。妥協することは決して悪いことじゃないし、強くなること勝つことよりも楽しくやること、ということもまた王道の一つであろう。しかし、彼女は違った。自分はそっちの道は行けないのだと、短い人生の中で幾度モノ場面で実感し、体感し、身に沁みて理解してきた。だから、求道者たらんとして生きてきた。同じ道を歩む日南に共感し、憧れ、同志とみなし、妥協しない道を、自分を高め続ける道を勇んで歩いてきた。否、走ってきたのだ。
だからもう、一歩も走れなくなってしまっても、じゃあ違う道を選んでしまおう、なんて簡単に方向転換することなんて出来ない。ただただ、一歩もどこにも歩けなくだけなのだ。
それはどこか、日南に会う前の友崎にも似ていたのかもしれない。
なんでも出来る子は、だからこそこういう時何も出来ない。きっと、まだ出来ることが少ししかない過程にいる子だからこそ、自分のできることを手繰り寄せることが出来たのだろう。また、自分以外の誰が何を出来るのかを把握することが出来ていたのだろう。
なんだろうね、ほんと。なんでこんなに真っ直ぐ一生懸命に生きられるんだろうね。人生、頑張れるんだろうね。遠い世界だ、憧れはしないけれど、いささか眩しい。若さの特権と言うなかれ。純粋に、彼らの良き生き様なのだ。友崎くんにしても、みみみにしても、あれだけ直球に言葉ぶつけられるたまちゃんにしても、妥協できない日南にしても、胸を張るにふさわしい人生の歩き方をしているのだ。
凄いなあ、とただただ思うばかりである。
にしても、だ。日南のあれはなんなんだろう。スペックだの能力だのが凄いんじゃないんでね、この娘。ただただ、尋常でない努力、克己心? それとも渇望なのか。それが並外れている、尋常じゃない、化け物じみている。まさに、求道者そのものだ。それは一種の狂気であり、狂人の類いなのだろう。
そして、人類の最突端を行く人間たちは、往々にしてこの手の人種なのである。人類やべえ。
しかし、彼女はその狂気のままどこまでも走り続けることができるのだろうか。あまりにも、あまりにも途方もない遙か先を望んでいるかのような生き様は、今回のみみみではないけれど、果たして転ぶことがないのだろうかと不安になる。みみみと違って、あまりにも遠い先に居る日南には、転んだ時に手を差し伸べることの出来る場所に、きっと誰も居ないのだろうから。
だから、急げよ友崎くん。ラスボスは、いつだってずっとハルカ果てにて「待って」いるモノなんだから。

1巻感想