最底辺からニューゲーム!  ~あえて奴隷になって異世界を実力だけで駆け上がります~ (HJ文庫)

【最底辺からニューゲーム! ~あえて奴隷になって異世界を実力だけで駆け上がります~】 藤木わしろ/柚夏 HJ文庫

Amazon
Kindle B☆W

「貴方の望みは何ですか?」「俺を奴隷にしてくれ」
日本人の青年タクミは、生まれ育った環境が恵まれ過ぎていたため、自分の本当の実力を知る機会を得られずにこの世を去った。その未練から異世界転生の資格を得た彼は、これ幸いと女神に対して【実力だけが評価される過酷な世界への転生】を要求!
優しい環境もチート能力もすべて断り、無事、非力な奴隷の子どもに転生したタクミは、牢屋の中で奴隷の子どもたちを相手に情報収集を開始!
さらにエルフと獣人の奴隷美少女を交渉の上で配下に加え、あっという間に奴隷商人へと出世していき――!?
信長の野望で敢えて姉小路家とかでプレイはじめるようなもんですな、これ。まあ、昔のノブヤボだと、弱小大名プレイでもそこまで難しくはなかったのですが。
人生舐めてる、としか言いようがないのですがここまで自信たっぷりに言わしめたタクミの前世がいかなるものだったか明確には語られてないんですよね、これ。ただ、チラホラと匂わせるような情報は散りばめられているのですが、そこから鑑みると……いや君それいくら生まれ育った環境が恵まれすぎていたからって至った高みが高すぎやしませんか? というレベルなんですよね。推察が過剰すぎる可能性もあるのですけれど、なんか到達できる限界突端したところまで到達してたんじゃあ、と思わざるをえないような前世に関する情報なんですよね。
確かに、スタート地点を最底辺に設定すれば、そりゃあ難易度はあがるかもしれませんが、ふうむ。現状のタクミの立場ではあんまりまだ関係ないのですけれど、彼の目的って自分でも明言しているように、自分の力でどこまでイケるか、どこまでやれるか、というのを限界まで試したい、というものなんですが、先に例としてあげた信長の野望。あれをプレイした人や、まあシミュレーションゲームの類いですか、これをやったことのある人はわかると思うのですが、どれほどスタート地点を低く設定して難易度をあげても、ある一定のところまで頑張って自力を高めてしまうと、そこに到達するまでは困難であっても、それ以降は恵まれたところからスタートしたケースと保有する力が変わらなくなってしまって、やること一緒になってしまうんですよね。
タクミの場合にしても、現段階ではまだ使われる人間の側であるのですけれど、ここからもっと立身出世していって、自分が支配者の側に立ったなら、そこからは前世の時と何が違うんだろう、という形になっていってしまうと思うのですけれど、そうなった時モチベーションが維持できるんだろうか、という疑問は生じるんですよね。彼なりに幾つかの縛りプレイを自分に課している節はあるものの、実際に何かを縛って、失敗した時のペナルティを設定して、なんてことはやっていないのですし。マジでそれをやりはじめてしまうと、一緒にこの時代を生きている仲間や友人たちに対してあまりにも不誠実になってしまうのでそれはやってほしくはないですし、何気に微妙なゲームバランスの上でこの転生やってるんだよなあ、彼。
ともあれ、何の特殊な能力も優れた身体機能や魔力などもなく、ただただ自身の頭脳と交渉能力を以って、何も持たない奴隷身分からのし上がっていく。次々と降り掛かってくる悪意ある謀略を、より悪辣かつ周到な策略をもって覆していく、という構図には、燃えるものがあります。それに、決して自分本位ではなく、自分がどこまでやれるか、の中に周囲の人間たちひっくるめて最大公約数の幸福を掴ませる、という目的が含まれているあたり、彼が善人のたぐい……とはまあ言い切れないところもあるのですけれど。どちらかというと、彼が幸福を広めようというのは政治家的な考え方に基づいているっぽい感じもありますし、ある種の縛りプレイの一貫ともとれますからねえ。ただ、ちゃんと素朴な他者への好意、身近な人たちへの親愛も感じられるので、その意味では人間味があり、だからこそそれを捨てずに高みへと至ろうというのは実に傲慢で、自負に溢れているなあ、と思うのでありました。まあ、やることなすことうまくいくというのは、彼の能力の高さも然ることながら基本難易度が実は易しいんじゃ、という疑念もあるのですが。
ヒロインとしては、やっぱりカリンになるのでしょうね。唯一、相棒感持って接している相手ですし。

藤木わしろ作品感想