異世界拷問姫5 (MF文庫J)

【異世界拷問姫 5】 綾里けいし/鵜飼沙樹 MF文庫J

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もう一人の『拷問姫』ジャンヌ・ド・レに誘われ、地下墓所で世界の真実に直面した櫂人たちは、彼女が語る救世に協力することを決める。
「余の積んだ屍を犬死と嗤う者は生かしておかぬ。全て殺す。それこそ『拷問姫』の名にふさわしき方法で、だ」
「称賛しましょう。それでこそ、です。初代の『拷問姫』。自ら罪人に堕ちた女よ」
十四の悲劇で始まり終結を迎えるはずだった物語はここにきて残酷さを増し、全ての者に苛烈な選択を迫り出す――――。
綾里けいし×鵜飼沙樹で贈る今最も熱いダークファンタジー第五弾。悲劇を糧に進み続ける世界の中で、櫂人はエリザベートはヒナはジャンヌはイザベラは――――そして肉屋はいかなる道を選び取るのか

お……おお…おおおお。
このラストシーンよ!! ラストシーンよ!!
世界の敵となった男が、世界を統べるのか!
世界よりも一人の少女を選んだ青年が、世界を救うのか!!
狂王にして皇帝たるを、彼は掴み取りテーブルに叩きつけ踏みにじり、見下ろすのだ、見下すのだ、見回し見渡し一望して睥睨するのだ。愚鈍なる従者であった彼よりも愚かなる高貴なるものどもを、統率者どもを、その全世界の痛みを以って跪かせるのだ。

ふわぁぁぁぁ。

やばい、これはやばい。もうなんつーかやばい!!
3巻のラストの、エリザベートを死なせないために覚悟完了したカイトも格好良かったのだけれど、そういう次元を通り越してもうこれ、至った、とでも言うべきか。
無意味に生かされ無意味に殺されたなんの価値もない魂として打ち捨てられた青年が、ただ独りの少女に憧れ追い続け、その果てに彼女を追い越してついにここまで至ったか、と。
そうなんだよなあ。まだ届いていないのだけれど、ついにエリザベートと追いつ追われつが逆転したというか、ついにカイトの方から捕まえにいく、エリザベートが待っているという構図になったことこそを感慨深いと感じているのだろう、これは。
そうするために、エリザベートを救うために、エリザベートを迎えに行くために、そのためにその為だけに彼は王へと至ったのだ、と考えるならこれほど胸震わすものはないんじゃないか?

またエリザベートの方もね、ついに彼に捕まえられるのを赦した、迎えに来ることを赦して、あれを託したあのシーン。認め赦し受け入れた。あの表情を思うと、胸がいっぱいになるのです。

なんか、今回は特に胸を突かれるシーンが多かった、と今振り返ると思うのです。リュートが見つめていた、忘れてはならないと思い定めながらカイトを見つめているシーン。ジャンヌが、イザベラを思い口ずさむ幾つかのシーン。どれもが、フッと胸を突かれるような深く淡く切ない情感が込められていて、なんだか感傷的になってしまっている自分がいる。
特にジャンヌがねえ。四巻から突如あらわれた二人目の拷問姫、という立ち位置ながら、この巻におけるイザベラに対して見せるあの一途で訥々とした想いがジャンヌというイレギュラーに物凄い勢いで強烈な存在感を吹き込んでいくのです。エリザベートと対象的な白黒相反するもう一人の拷問姫、なんて分かりやすくも品のないキャラクターなんぞではなく、独自の唯一人の、エリザベートと関係なく高らかに自らを唄うジャンヌ・ド・レという生者を、威風堂々と掲げて振りかざし、ふわりと舞って見せるこの美しくも清廉な存在感。
これをして、エリザベートと並び立つに相応しいと受け入れてしまったんですよね。拷問姫が二人いて、何がおかしいものやらか。
イザベラの顛末は衝撃的ではありましたけれど、このイザベラこそがあのジャンヌという存在をここまで確立してみせたと思えば、むしろイザベラってここから躍進していくんじゃないだろうか、あれほどの有様となりはてながら、むしろここからが本番なんじゃ、と期待してしまう。ここまで見事に自分を貫ききってみせた彼女に、その先を果たさせんとする残酷にして優しい顛末は、これでもかと悪意の地獄を現出させながらも常にその中に優しい愛情を込め続ける綾里けいしという作家の作風の髄だわなあ、と深く深く感じ入るのでした。

さあ、盛り上がってきたを通り越して、極まってきましたぞクライマックス!!

シリーズ感想