りゅうおうのおしごと! 6 (GA文庫)

【りゅうおうのおしごと! 6】 白鳥士郎/しらび GA文庫

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「重度のロリコンですね。治療法は死ぬしかありません」
竜王防衛を果たし、史上最年少で九段に昇った八一。二人の弟子も女流棋士になれて順風満帆……と思いきや、新年早々問題発生!?
不眠症や変な夢に悩まされ、初詣で怪しげなおみくじを引き、初JS研では小学生全員に告白され、弟子の棋士室デビューは大失敗。
おまけにあいはロリコンを殺す服を着て既成事実を作ろうと迫る。殺す気か!!
そんな中、銀子は奨励会三段になるための大一番を迎えるが――

新キャラも大量に登場! 熱さ急上昇で新章突入の第6巻!!
新時代の将棋の歴史は、ここから始まる。 
何度も何度も竜に救われ助けられて、その度にその竜によって奈落の底に、絶望の縁に、煉獄へと突き落とされる。
何度も何度も何度も思い知らされるのだ。身の程を、自分が銀の妖精でも将棋人形でも鬼でもない、ただの才能なんて欠片もない中学生の女の子が居るだけだ、という事実を。将棋の神様に魅入られ、いたぶられ、翻弄されるただの小娘がいるだけだという真実を、将棋の真髄へと近づくたびに、覗き見るたびに、銀子は思い知らされていく。身も心もボロボロになりながら、深淵を覗き込み、しかし深淵はこちらをまるで見てくれない。届かない、遠く遠くへと遠ざかっていく。這いつくばって進めば進むほど、遠くへ遠くへと自分を置いて遠ざかっていく。
ならば、ただ自分の口を使って言えばいいのだ、告げればいいのだ。好きだ、こっちを見て、私を見て、私を愛して。愛してる、誰よりも愛してる。この世の何よりも、誰よりも、アナタが好きだ、と。私の全ては、あなたの為に存在しているのだと。
言葉で告げればいいのだ。ただの女の子として。突きつけられた事実を踏まえて、ただの女の子として、その手で彼を捕まえればいいのだ。
しかし、彼女は。空銀子にはそれが出来ない。たったそれだけのことができない。
彼女が語ることができるのは、将棋でだけだから。将棋の駒をもってしか、なにも告げられない、何も訴えられない、何も伝えられない。
相手も相手だ。生粋の将棋星人だ。将棋のことしか考えてなくて、将棋を通じてしか何も伝わらない男なのだ、と銀子はそう信じている。そう信仰している。そう崇めている。そう非ねばならないと、祈っている。
だから、銀子には将棋で強くなるしか無い。将棋で語りかけることができるように、彼と同じ領域にまで辿り着かなければならない。彼と同じステージに立たねばならない。彼と同じ世界に至らなければならない。
そうあれかし、と。
だから、銀子にとって生きる道はプロにしかない。プロになって、九頭竜八一と真剣勝負を、全身全霊をかけた勝負を挑まなければ、彼女の願いは絶対に叶わないのだ。

修羅の道以外のなにものでもない。

ただ告白するためだけに、これほどの修羅道を歩もうという女が果たして他にいるだろうか。この時点で、既に自分には無理だと、どうやったって天外魔境であろうプロの棋界どころか、その前段階である悪鬼羅刹の巣窟である奨励会ですらも、自分の無才では、自分の弱いメンタルではとてもじゃないけれど生き残れないと思い知らされ、打ちのめされ、叩き潰される寸前であるはずなのに。息も絶え絶えに、泣きじゃくりながら、子供のように、幼子のように、八一の名前を呼んで悶え苦しんでいたくらいなのに。
その八一が前に現れれば、彼女は立ち上がる。空っぽの心身にいったいその時、何を満たして起立させたのか、きっと彼女自身にもわからないだろう。それは愛か、執着か。
辛い。辛い。辛くて苦しくて仕方ない。
生き残れるとは思えないこの先を、果たして彼女はどう進んでいくのだろう。誰も彼女を助けられない。将棋に囚われた彼女に、言葉は通じない。想いも繋がれない。気持ちも伝わらない。
むしろ、将棋によって隔離されているのは、将棋星人である八一たちよりも銀子なのだ。そんな彼女に、誰が何を与えられるだろう。八一は、他の星に住まうあまりにステージの違うところに存在してしまった竜王では、銀子に何も伝えられないのだろうか。銀子が、同じプロの棋界に来なければ、あの熱い舞台の上で戦わなければ、想いは伝わらないのだろうか。
だったら、今の銀子にはどうやったって手を差し伸べることはできないじゃないか。
空銀子は、最後まで一人で戦え、ということなのか。助けられるのは自分だけ、なのだろうか。
こうなってはもう、何もわからない。誰か助けてあげてくれ、と懇願するのも躊躇われる。
見守るしか無いのだろうか。
いずれにしても、これほど一途で狂的なまでの想いを、献身を、他の誰にも邪魔してほしくはないものだ。竜は、彼女のものなのだ、誰も触れるな、誰も奪うな、誰も盗ってくれるな。そう思ってしまっても、仕方ないじゃないか。

他にも今回は色々あったのだけれど、兎にも角にも銀子でした。
いや、それともう一つ。天衣に対する八一の師匠としての愛情と指南は素晴らしいものだった。八一だって大人とはまだ全然言えない未成年なのに、ものすごく立派に師匠してるじゃないですか。天衣、一生忘れないですよ、これ。棋士としての、指針ともなり根幹ともなり得る素晴らしい教えでした。
そして、あとがき。どこか淡々とした語であったからこそ、胸に来るものがありました。このシリーズの熱さの根源を感じ取った気がします。

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