ヒマワリ:unUtopial World5 (角川スニーカー文庫)

【ヒマワリ:unUtopial World 5】 林トモアキ/マニャ子 角川スニーカー文庫

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本戦進出を決め勢いに乗るヒマワリとミサキ・カグヤのペアであったが、そこに桐原士郎、木島アリスを従えた魔殺商会総帥・名護屋河鈴蘭が立ちはだかる。
「あはははははっ!!さあ野郎ども狩りの時間だぁッ!!」
隔離空間都市の債務者達を巻き込んだサバイバルゲームを仕掛けられたヒマワリは、“前大会を知る男”川村ヒデオと共闘し生き残りの道を探るのだが!?“世界を統べる権利”を賭けた闘い―第二回聖魔杯、本戦がついに開幕!
士郎、ある意味フルボッコにされて負けてしまったのだけれど、ここに至るまで一直線に走り続けながらその実、たどり着こうとしている場所が本人的にははっきりしているつもりだったのかもしれないですけれど、傍から見るとふわふわとして実体がないあやふやな代物でしかなかったんですよね。それでも、我武者羅に突き進む他なかった彼が、この敗北によって逆に自分のやりたいこと、できること、何が一番大切でありそれを叶えるべきなのか、というのを見出した、という意味では思いっきり負けたけれど初めて勝った、とも言えるんじゃないか、なんてことを思ったり。
これまでこいつ、なにやってんだろう、と半眼になって見てるしか無いようなところがあったんですよね。でも、ひまわりと真剣にぶつかり合う彼は良かった。正論、というか反論できない論拠は常にひまわりの方にあったんだけれど、共感は常に士郎のほうにあったのだし、それでも彼自身言いたい事思うこと願うことが彼の中で具体的になっていなかった間は、その言い分にももどかしさばかりが募ったし、ひまわりの言に突き放されても仕方ない部分があったのだけれど、そうやって叩きのめされ打ちのめされ、論破されて虚飾もこびりついた意地も何もかも剥がれきったあとに剥き出しになった、彼の在りようというものはなんともスッキリとしたもので、だからこそ意見も思想も一ミリたりともブレず揺るがず不動であるひまわりの中に、一滴だけでも染み渡らせ、戸惑わせることが叶ったという意味で、大したもんだと本当に良く思う。

ひまわりの方はね、あれもうむちゃくちゃ言っているのは間違いないんだけれど、無茶苦茶である上で筋は通っているし、少なくともどのような方法でもこの娘の信念は揺らぎようがないんですよね。それは価値観の違いであり、信念の強さの違いであり、育った環境の違いであり。だからこそ、彼女の主張する「暴力」によって及ぼす力、という同じステージの上に乗っちゃったら、どうやったって彼女の信念を肯定しているのとおなじになってしまう。こればっかりは、性能差をもってひまわりを上回ったとしても意味が無いんじゃないだろうか。
でも、だからこそ四年前、ヒデオによって革命を阻止されたことは、ひまわりにとって信念の崩壊でもあったわけだ。あれだけメンタルボロボロになって引きこもってしまったのは、彼女の知っているルールの埒外で徹底的に叩き潰されたから、ではないのか。
なのに、ひまわりはまた以前と同じ自己ルールに則って、それを正義として、それを真理として突き進もうとしている。
ヒデオは、これを止めることが、考えを変えさせることができるんだろうか。こうなってしまうと彼しかできない、とすら思えてしまうのだけれど。次々と役者が揃いだしているし、リップルラップルの発言からして場合によってはついにアウターすらも動き出すかもしれない。魔族や魔人、こういった連中が本格的に動き出した場合、ファンタジー方面にまったく無知なひまわりが、「暴力」で勝てるはずがないんですよね。そのステージにおいては、まったく次元が異なっている。なんでか、ひまわりたちこのシリーズのメンツは、「第三世界」というものを殆ど知らないみたいなんだけれど、それゆえに平気で一線超えかねない怖さがあるんだよなあ。
そのへんぶらついているロートルアイドルのカッコですら……【億千万の刃】としては遥か地平の彼方の領域にあるんだよなあ。
今考えても、聖魔王やってこの連中仮にも従えた鈴蘭、おかしいの一言なんですよねえ。今となっては、別の意味でおかしい人になってますけれど。
ちょっと悪の組織の総帥に長いこと偏重しすぎたんじゃなかろうか。たまには聖女とかゼルピムの機関長とか真面目にやってみるのもキャラ整える気分転換になるんじゃなかろうか。あんまりやらかしてばっかりだから、ほら、妹様が出張ってきてしまったじゃないですかー。
みこみこシスターズにはぶっちゃけわらた。

あと、久々に神殿協会の名前を聞いて忘れ去られてなかったのね、と一安心。というか、ついに勇者と神殿協会まで出張ってくるような事態になってきた、とも取れるんですよねえ。まだ、本格的にやべえ人たちはお目見えしていないですけれど。

シリーズ感想