僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している (ファミ通文庫)

【僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している】 手島史詞/烏羽 雨 ファミ通文庫

Amazon
 Kindle B☆W

美坂亜理寿10歳。職業は魔法使い。

浪人生になってしまった九条篤志。バイト先の珈琲店でおいしい珈琲を淹れることに腐心する日々の中、気がかりが一つあった。それは店の片隅で平日の昼間からランドセルを傍らに珈琲を飲む亜理寿のこと。そんなある日、魔法使いを自称するその少女から篤志はある悩みを打ち明けられて――「人を殺してほしいようなことを言われました。断ると今度はわたしが殺されてしまうそうで、少しだけ困っています」。――これは小さな魔法使いと若い珈琲係【バリスタ】が紡ぐ奇跡の物語。
タイトルは「僕の珈琲店には小さな魔法使いが居候している」だけれど、別に「僕」の珈琲店じゃなくて単にバイトしている店だし、JS魔法使いは別に店に居候しているわけじゃなくて普通に常連客として来店しているだけのような……。
むしろ、亜理寿とボンクラ店長との関係を考えるなら、僕の珈琲店じゃなくてアリスの珈琲店と言った方が誤謬は少ないんじゃなかろうか。
とか細かいところはまあどうでもいいとして、客が少なくても別に気にしなくていい個人経営の店って、色んな意味で最高ですよね! と、ぼんくら店長のあのやる気の無さに逆に店の潰れなさそうな雰囲気が伝わってきて、なんとも羨ましくなってくる。店の一切は九条くんに任せっきりですしねえ。
こういう店は変に客引きしないで、むしろ閑古鳥ないていた方がいいのかもしれない。繁盛してしまうと、頑張らないといけなくなってしまいますもんねえ。
でも、繁盛してアリスがエプロンして給仕してくれるような絵面になったら、それはそれで可愛らしくて良いのだけれど。小学生を働かせて店長サボってたらそれこそ末期なのですが。
本作の魔法使いはゲームみたいなそれと違って、古式ゆかしい伝統的な魔法のそれ。「魔法遣いに大切なこと」とか「ふらいんぐうぃっち」の類と思ってくれれば間違いはないだろう。アリスもまた、魔界から現れる怪物たちと夜な夜な戦う魔法少女ではなく、占いを嗜み異界に交わった障りを解き、時折持ち込まれる依頼や相談を請け負うわりと渋めの仕事人なのである、なんて言ってしまうとやはり大間違いか。大っぴらに魔法のこと承ります、と広告うっているわけではなく、彼女の依頼が持ち込まれる展開って本巻では少ないんですよね。あらすじにも載ってる一件だけじゃなかろうか。それもあんまり正式な依頼じゃなかったみたいだし、他はむしろ九条くん絡みで巻き込まれたことにアリスが助言や手助けをする、という形で短編連作とはいえ、アリスはあんまり主体とは言えないのである。ちゃんと九条君が主人公をしている、というべきなのかもしれないけれど、魔法や不思議な異界側の出来事、との遭遇という意味でもちょっと踏み込みが浅いというか、珈琲店の雰囲気も含めたこの不思議な静けさをまとった魔法の世界に、もっとどっぷりとハマった話を期待していた身とすると、ちょっと俗世の九条くんの側によってそこから魔法の世界を垣間見る、というもうちょっと首まで浸かりたい気分からスルと物足りなかった気がしないでもない。
それをしてしまうと、むしろアリスとしては気が気がないことになってしまうかもしれないけれど。でも、それほど危ない世界、というわけでもなさそうなんだよなあ。禁忌やヤバい魔導書がどうの、というのも少なそうですし、何しろアリスの師匠があんなんですからねえ。もうちょっと魔法の世界について色々と踏み込んで知りたいところでしたが、それを最も深く垣間見ることになるラストの話が、逆に大仰というか舞台のひっくり返し方がそれまでのアリスと一緒に覗いた魔法の世界とはスケールが違いすぎてて、若干その幅についていけなかった感もあるんですよねえ。
いや、そこまで大幅に改変してしまって大丈夫なのか、とか。あと、九条くんに生じていた異常って結局原因わからないままだったんだろうか。件の改変となにか関わりがあるんだろうか。いうほど話に関わって来なかったムキもありますし。
せっかくなので、もうちょっと小学生と浪人生のイチャイチャ?するような状況が発生してくれると、まあむにゃむにゃ……。アリス的にはもうバシバシ狙いすまして射掛けている節もありますし。

手島史詞作品感想