異世界建国記 (ファミ通文庫)

【異世界建国記】 桜木桜/屡那 ファミ通文庫

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異世界に転生した少年アルムス。森を彷徨っていると神獣グリフォンが現れ、強引に住処に連れていかれてしまう。さらに「三年以内に独り立ちしろ」と一方的に告げるグリフォン。仕方なくアルムスは、前世の知識と経験を活かして農作物を育てたり、隣国の国王や大臣と交渉したりと、住処にいる子供達と一緒に村を作り始めるのだが、その一方で発展したアムルスの村を手に入れようと侵略を開始する国が現れ……!! のちに『神帝』と呼ばれる男の英雄譚、開幕!!
この味けなさすぎるタイトル! いや、よく元のタイトルを書籍化に際してむっちゃ変えてしまう、なんてケースがあるけれど、こういうのこそちゃんと変えるべきじゃないの!? と思うんだけれど。
舞台となるのが、おそらくは古代ローマ……いや、ローマという国が成立する以前の豪族が群雄割拠していた時代のイタリア半島っぽいところが物語の舞台となるようである。中世ヨーロッパどころか、共和政ローマが誕生するよりももっと前。伝説の初代ローマ王・ロムルスの伝説に当てはめているだろうから、古代も古代。国家という単位じゃなくて、部族単位で物事が動いていた時代。神代にまだ片足を突っ込んでいる時代が舞台なんだろう。なにしろ、グリフォンなんて神獣がデーンと不可侵領域を人類側に認めさせつつ存在しているわけなのだから。
このグリフォン様がまた便利でねえ。難しいことはグリフォンさまがやってくれました、とばかりに手の行き届かない部分はグリフォン様任せなんですよね。いやもう、それだけ助けてくれるならもっと親身に関わったらいいのに、と思うのだけれど、頼まれたときだけ助けてくれる、という都合の良さで。ここまで来ると単なる舞台装置なんじゃないのか、とすら思えてくる。物語の一員としての登場人物ではないんじゃないかな、これ。アルムスも、助けてもらったことや援助し続けて貰っていることに感謝はしているようなんだけれど、それにしては便利に使いすぎてるし、深く関わろうともしないですしねえ。
まあ子どもたちだけで村を作って暮らしを成立させる、といういわゆる内政モノ? としては頭で考えたことが百%以上の確率で成立しまくる、という前提で物事が転がっていく、という感じで常にサクサクっとうまいこと行きます。古代という文明レベルにも関わらず、普通に鉄製の農具とか出てくるのはおおっ!となりましたけれど。おおっ!って感じで。
ただ、適当にノリで書き散らしたようなアンバランスさは感じられなくて、村を作り、都市国家の王族と懇意になって、近隣で発生した戦争に参加し、どんどん出世して、という成り上がっていく流れをわりと淀みなく、盛り上げどころではちゃんと盛り上げながら転がしていくストーリーテリングは、けっこう巧みなものを感じさせてくれるんですよね。深くは潜らないけれど、流水プールみたくプカプカ浮かんでさえいれば、すいすいと勝手に動いていくように読み手をうまいこと誘導していくような風情で。
その意味では、読ませる文章、物語とも言えるのかもしれない。読み終わったあとに、なんとなく面白かったなあ、と不満めいたものは不思議と感じませんでしたしね。
ただやっぱりキャラクターにあんまり個性というか、印象が残らないだけにインパクトには欠けるしちょっと間をおくと色々と忘れてしまいそうなきらいもあるだけに、なるほど名は体を表すじゃないけれど、あのざっくりとしたタイトルはわりと内実に沿ったものなのかもしれない。