ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン (角川スニーカー文庫)

【ニートの少女(17)に時給650円でレベル上げさせているオンライン】 瀬尾つかさ/ kakao 角川スニーカー文庫

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ダメかわいいニートの少女と、同居生活はじめました。

MMOを愛するサラリーマン・石破真一(27)の部屋には、ニートの少女・瑞薙水那(17)が居候している。金髪美少女JKと同棲、といえば聞こえはいいが、「お腹空いた」と起こしにくるし、風呂上がりにタオル一枚でうろつくし、ネトゲのレベル上げバイトはサボるし……「真一っ、大好きだぞ! 愛してる!」「おだててもダメだ。給料は昨日やっただろクソニート!」社畜ゲーマーがネトゲに社会復帰に、ダメかわいいニートの少女を育成《レベル上げ》!?
またえらくエキセントリックなタイトルである。内容の方も、普段の瀬尾さんのそれとは随分と毛色が違う独特の……と、思ったんだけれど、ふーむ。
以前から口ずさんでいた事なんだけれど、瀬尾つかさという人の作品って、これはデビューしたての頃がその傾向強かったですけれど、主人公がヒロインたちに置いていかれる物語でした。遥か遠く遠くまで脇目も振らず駆け抜けていく彼女たちの背中を、あるところまでは支え背中を押していた主人公が、いつしかその腕の中からヒロインたちが飛び出し、もう主人公の力を必要としなくなった先で、その場に彼を置き去りにしてそのまま先へ先へと行ってしまう。それをどこか淋しげにしかし満足そうに見送り、見上げ、遠く手の届かないところへ行ってしまった彼女たちを眺め続ける。
特に最初期の【クジラのソラ】が顕著だったんですけれど、それ以外の作品にも色んな形であってもこの感じは常に敷かれ続けてたんですよね。
近年になって、主人公は佇んだままではなくなって、たとえ届かなくても追いかけるようになり、その手が届くケースも増えて来たのですけれど、この「置いていかれる」という要素はなかなか根強く散見されるのであります。
本作もまさにそれ、なんですよね。
初っ端から8年後のシーンからはじまり、彼女は既に遠く遠く違う世界に在るのを彼は地上から見上げている。
面白いのは、そこに至るまでの物語、つまり「現在」として描かれる本編が「激動の渦中」ではなくどちらかというと「モラトリアム」として描かれている、というところでしょうか。
これは、今現在ニートやっているニー子のことのみならず、既に28歳でバリバリのサラリーマンとして働いている社会人の石破真一についても、描かれるこの期間はどこか「猶予期間」なんですよね。それはこの物語の舞台となる2005年前。かの頃には全盛期でありながら現在プレイ人口が減りつつあるというMMORPGの現況とともに、8年前である本編時には社会人でありながら廃ゲーマーとして勇躍していながら、その熱中度が嘘のように今はかつてのゲームから離れている真一の姿にも、その隣に大人になった大家の娘の姿があるのもまた、モラトリアムというものを見てしまう理由なのかもしれない。
どこか懐かしく、振り返れば胸の奥を詰め先でひっかくような痛みと心地よさを感じる過去の情景。そして、もう二度と帰ることの出来ない想い出の時間。なんて表現するにはあまりにもバカバカしく、ダレ果てた日常。でも楽しかったかけがえのないあの頃。
それが、ここで描かれるニートな少女とそれを取り巻く騒がしい友人知人たちとの何気なくも懸命でいい加減だった、今はもう無いあのアパートの日々なのである。

瀬尾つかさ作品感想