カンスト勇者の超魔教導<オーバーレイズ> ~将来有望な魔王と姫を弟子にしてみた~ (HJ文庫)

【カンスト勇者の超魔教導<オーバーレイズ> ~将来有望な魔王と姫を弟子にしてみた~】 はむばね/青乃純尾 HJ文庫

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慎重すぎて異世界で三百年もの修行の末、デタラメすぎる強さを身に付けてしまった召喚勇者キリ。彼はとある目的から「魔王の娘」たる天真爛漫少女・エイムを弟子にし、超絶育成することに。そこに訳ありの美剣姫・メイも加わって、「どんな魔物もワンパン!」の、最強師弟らの無双旅が始まる!食事を美味しくするためだけに第二百階以上の超高等魔法を使ったり、誰もが恐れる巨大な魔物を瞬殺したり、やりたい放題の師弟コンビが大暴走!一行で唯一の常識人・メイのツッコミも追いつかない、破天荒な旅の行く末は!?HJ文庫大賞「銀賞」受賞作!

んんん? 新人賞? はむばねさんって結構ベテランの作家さんだったと思うんだけれど、改めて新人賞に応募し直したのか。
あらすじでは唯一の常識人なんて書かれてる姫様のメイだけれど、うん確かに一般常識を一顧だにしないキリとエイム師弟に比べたら姫様ちゃんと常識人ではあるんだけれど、一方でキリとエイム側のぶっ飛んだ常識の方にもちゃんと適応してるんですよね。必要以上に驚かないし、そういうもんか、とわりとあっさりと受け入れてしまっている。何気に適応力に関してはこの姫様半端ないんじゃないだろうか。あれだけ無茶苦茶しまくる二人に対して、振り回されるどころかかなり上手く立ち回って美味しいところ摘んでいる場面けっこうありましたし、暴走しがちな二人をうまいこと誘導したり落ち着かせたり引き止めたり、と案外制御しきってるんですよね。
キリの三百年前の仲間だった王子とメイ姫、よく似ているという話だけれど見た目や性格以上にこの懐の広さというか鷹揚さが実はそっくりだったんじゃないだろうか。主導権を握っていたのはキリだったかもしれないけれど、それでも彼のメイ姫への接し方というのはかなり気を遣っているというか、その意向を気にしている素振りがあって、元々このキリという勇者、自分でグイグイ引っ張るよりもかつて王子にくっついていってたみたいに、誰かに方向性を示してもらうほうがあってたんじゃなかろうか。三百年間ひたすら修行していたってのも、かつての事情から人間不信に陥っていたにしても迷走しすぎであるわけですし。そんな意味でも、押し付けがましくなくサラッとフォローしてくれて、自分たちの在り方を否定しないまま往くべき道を指し示してくれるような、メイ姫のあの柔らかくも何気にタフで堪える様子を見せない前向きな受容は、キリにとっては心地よかったんでしょうなあ。
エイムも魔王の娘らしく大物っちゃ大物なんだけれど、この娘は放っておくとどうしようもなくなるある意味師匠似の弟子なだけに、この師弟もうメイがいないとどうしようもないんじゃないだろうか。お母さんと呼びなさい、ってなもんである。
というわけで、色んな意味でヒロインがキープレイヤーとして意味をなしている、重点を彼女に置いて見ているとなかなかおもしろい作品でした。