ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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《アスカ・エンパイア》。
茅場晶彦によるVR制作プログラム《ザ・シード》から開発された和風VRMMOである。《スリーピング・ナイツ》のユウキとラン、メリダが遊んでいたこのゲームにも、秘められたエピソードがあった――。

戦巫女のナユタと忍者のコヨミ。《アスカ・エンパイア》で出会い仲良くなった二人の少女は、ゲーム内で不思議な法師ヤナギと出会う。
その老僧侶は、とあるクエストの《謎解き》を《探偵》に依頼したいという。しかもその報酬は一〇〇万円。
法外すぎる値段に驚く少女二人だが、その奇妙な依頼を受ける《探偵》も負けず劣らず奇妙な青年だった。ステータスボーナスは《運》に《全振り》――つまりバトルは最弱、しかしレアアイテムドロップ率最強のトリッキーなプレイヤーで……。
最先端VRMMOの世界で、少女二人を引き連れた《胡散臭い探偵》による《謎解き》が始まる。

時雨沢恵一さんによるSAOスピンオフ作品【ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン】に続く、もう一つのスピンオフ作品がこれ、【クローバーズ・リグレット】である。
先のガンゲイルが仮想世界故に好きなだけ銃撃ちまくって楽しく遊んでやるぜー、な話だったのに対して、本作はよりソードアート・オンラインという世界においての、フルダイブ型VRMMOとは、そしてあの「SAO事件」が遺したものについて深く踏み込んだ話になっている。
4千人ものプレイヤーが「殺害」されることとなってしまったSAO事件。それが社会に及ぼした影響というものはそれこそとてつもないものだったのだろうけれど、マクロな視点のみならず、その亡くなった一人ひとりに焦点を当ててみても、そこには想像を絶するだろう悲劇が付随してくる。
ゲーム内で生死をかけて戦い続けていたプレイヤー本人の恐怖もさることながら、ゲーム内部の状況もわからないまま、ひたすら目覚めないまま横たわる自分の家族が、友人が、愛する人が、いつ脳を焼き切られて死ぬかわからないまま見守り続けないといけない人たちの抱き続けた恐怖は、如何程のものだったのだろう。
そして、その時が訪れた時の絶望は。

この物語は、そのすべてが過ぎ去ったあとに訪れる、荒涼とした草木も生えないモノクロの大地を見るような心象風景を秘めた登場人物たちの巡るその先の話である。
それでいて、彼らが事件を通じて目の当たりにしていくものは、フルダイブ型VRMMOのもたらす確かな可能性であり、希望の未来であり、優しさによって作り出される明日なのだ。
なんという皮肉なのだろう。それとこ、これこそが救いなのだろうか。誰よりも絶望に打ちひしがれていた彼らが、そんな希望を目のあたりにするのがよりにもよって自分たちを絶望のどん底に追いやったフルダイブ型VRMMOとそれを取り巻く新たな環境なのである。しかも、そのまま日の目を見ず、闇に葬られそうだった、そのまま誰にも気づかれずに消え失せてしまいそうだったそれを、幾多の謎と不幸な偶然と無慈悲な現実の間から見つけ出し、掬い上げたものたちこそ、彼ら自身だったのですから。
でも、この事実によって、彼らの絶望や諦観が癒やされたり救われたりしたわけじゃないんですよね。でも、それを成した想いは確かに存在し、その温もりを彼らはしっかりと感じ取った。そこに、意味が無いはずがない。
今なお、フルダイブ型VRMMOを続けているということは、歩むことをやめていないということ。託された想いを、バトンを、受け取ったということなのだ。
だからこそ、それを自覚し、前を向いた彼女に、家族は言葉を送れたのだろう。その背を送り出せたのだろう。その奇跡もまた、受け継がれた種の可能性である。

それにしても、あのコヨミちゃんも一つの奇跡そのものだよなあ、振り返ってみれば。あの「一緒に住もうぜー」という感じの何気ないセリフからして、その時は全くなんの意味もない雑談の中の一言に過ぎないように見えたものだったけれど、後々考えてみると凄まじいまでにナユタにとってピンポイントついてるんですよね。いったいナユタにとって、どれほどコヨミの存在が巨大なものかというのが透けて見えてくるわけです。その出会いは本当に偶然の、たまたまの、なんでもないものであったがゆえに、よくぞよくぞ、出会えたものだと思うのです。これこそ奇跡であり、運命だよなあ。
あと、間違いなくコヨミの衣装はエロ衣装ですね! ってか、半脱ぎじゃん! あれ、インナーなかったらどういう見た目の装備なんだ!? ってか、インナーモロ出しってだけでも凄いんですけど!

渡瀬草一郎作品感想