幼馴染の山吹さん (電撃文庫)

【幼馴染の山吹さん】 道草よもぎ/かにビーム 電撃文庫

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彼女にかけられたのは青春の呪い!? 笑ってちょっと泣ける学園ラブコメ。

「ねぇ、あかりちゃん。ぼく、やくそくするよ」
それは幼い頃に幼馴染の山吹灯里と交わした約束。けれども、今ではきっと青葉喜一郎しか覚えていない約束。
それから時は流れ、二人は自然と疎遠になり気付けば高校生になっていた。
地味な喜一郎とは違い、すっかり誰もが認める美人になった灯里だったが――
『今から貴様は呪いを受ける』
突然ふりかかった“青春の呪い”によって、彼女の存在は徐々に消されていき!?
彼女を救うためには、数々の青春(試練)をこなすこと!? 再び動き出した二人の時間。一度しかない高校生活を、少年少女が全力で駆ける青春ラブコメディ。

世界一・かわいいよ!!
とまあ自他ともに認める超絶美人の山吹さん。でも、彼女自身が自負する自分の可愛さって、他人が彼女に見ている可愛さとはまたちょっと質が違うんでしょうね、これ。山吹さんは、自分の可愛さを誇っているけれど、それを武器にして振り回しているわけじゃあない。彼女にとって「かわいい」とはとても素敵なことで、ただそれだけなんですよね。だから、自分以外の可愛さに対しても目がなくて愛でることに労力を惜しまない。彼女にとって、自分の可愛さも周りの可愛さも本質的には代わりのないもので、本当にただ「可愛い」ものが好きなだけなのだ。
それに対して、彼女を見ている周りの人たちは、その山吹さんの超絶的な「可愛さ」を崇拝してしまっている。超越したナニカを象徴するものとして、その可愛さを崇め奉っている。人によってはその「可愛さ」を自分のものにしたいと欲し、人によってはそれは他人が触れて良いものではないと祭り上げようとする。
主人公の喜一郎もまた、そんな崇拝者の一人になってしまっていたのだろう。山吹さんにとってはいちばん身近な幼馴染だったのに、彼のほうが勝手に彼女を奉り、神聖化し、恐れおののいて遠くから崇めることを選んでしまった。
二人の意識の隔絶は、あまりにも深く、あまりにも互いに理解の範疇の外にあり、本来ならそのまま年月が流れることで疎遠という関係は完全な断絶へと至ったはずだったのだろう。
ただ辛うじて、お互いに交わし、お互いに相手が忘れているだろうと思っていた約束だけが、二人を繋いでいた。意識の階層を違えてしまった二人が、辛うじて同じ高さで繋がるものが、その約束だったのだ。だがそれも経年劣化によって脆くなり、きっと時間の問題だった。
呪いとは同時に祝いであるのだという。
さて、かの呪いを施した霊樹はいったいどういうつもりだったのか。呪いというにはあまりにも理不尽なそれは、しかし喜一郎が手伝うことで随分とクリアが楽なものになっていた。というよりも、もはや内容からして二人の意識の隔絶を埋めるためのものとしか思えない内容なんですよね。しかし、その最後は随分と意地悪で、かの呪いの精霊さんは、まあお節介であるのでしょう。同時に、甘酸っぱい青春というものに、斜に構えたものも持っていらっしゃるようで。
学校という青春の場をずっと見守り続けた存在としては、そのもどかしい気持ちとリア充爆発しろという相反する気持ちを拗らせるのも、わからなくはないわけで。多少の意地悪もしちゃうよなあ、というものである。呪いなんてのは建前で、それはきっと祝いであり、そしてやっぱり試練なのだ。
応援するのは恋する少女で、蹴っ飛ばすべきなのは拗らせた男の子の方であるのは世の真理である。ダメンズはもっと痛い目を見るべきんじゃないか、と思わないでもないけれど、それで泣くのは女の子の方なので、やっぱり手心は加えるべきであり、しかし試練は自力で乗り越えて貰わないとやはり様にならない。その意味では、呪いの精霊さん、かなり良いバランス感覚の持ち主だったんじゃないだろうか。恋する少女的には、もっと十八禁ラインを跨いでも大丈夫的な心境だったのかもしれないけれど、さすがは学校在住の精霊、わりと風紀には厳しかったりスルのはなんともはや。いや、そこまでやっといて、呪い掛けた側がセーブさせるのはずるくない?と思わないでもないのだけれど。
できれば、肝心の青春ミッションの数をもうちょっと増やしてほしかったなあ。数的にあれだけだと、チュートリアルクリアしたら即座にラストミッション、みたいな感じで全然物足りなかったし。何気に山吹さんの方が最初から青信号だった、というのもあるんだけれど、もう少し長々と、そして徐々にイチャイチャの深度濃度があがっていった方が泥沼感があって濃厚だったのに、と思わないでもない。さすがにさっぱりしすぎでしたしねえ。