佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet! 2 (ファミ通文庫)

【佐伯さんと、ひとつ屋根の下 I'll have Sherbet】 九曜/フライ ファミ通文庫

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Kindle B☆W

ちょっとHな女の子と送る同棲&学園ラブコメディ、待望の第二幕。

ゴールデンウィークも明け、僕こと弓月恭嗣と、ひとつ年下の佐伯さんとの同居生活は幸運なことに(一部を除いて)誰にも知られることなく続いていた。学校でも容赦なく距離を詰めてくる佐伯さんと、僕の動向に目を光らせる雀さんへの対応に追われる日々だったが、ここにきて何故か宝龍さんが佐伯さんを挑発しはじめて――。常に冷静な弓月くんと、とびきりの美少女なのにちょっとHな佐伯さんが繰り広げる同棲&学園ラブ・コメディ、第二幕です。
宝龍さん、あとで嘘だと撤回してたけれど、あれマジなんだろうなあ。そして、マジなら佐伯さんに負けず劣らずこの娘も凄すぎる。
逆に言うと、そこまでしておきながら余裕かまして大魚逃してしまったんだから、大失敗どころじゃないんだろうなあ、本人としても。
でも、佐伯さんが貴女には資格がない、と言いたくなるのもわかるんですよね。弓月くんの扉を開いてみせたのはどう考えても佐伯さんの努力であって、その結果現れてしまったネオ弓月くんに、一度の失敗で距離を置いてしかも復旧作業を行うでもなく放置していた宝龍さんが、ネオ弓月くんを前にしてまたぞろ食指を伸ばして掻っ攫おう、というのはズルいと言わざるをえないもんねえ。
客観的に見るとそれはもう宝龍さんの未練に過ぎず、宝龍さん自身もう手遅れでどうにもならないと自覚しながらも矢も盾もたまらずついついつまみ食いを敢行していただけで、本心ではネオ弓月くんをご相伴に預かれる、なんて思ってもいなかったんだろうけれど、佐伯さんから見ると超人みたいな宝龍さんがちょっかい掛けてきている、というだけでなんかもう絶望的な気分になってしまう、というのもまあ気持ちはわかるってもんである。心の奥底では絶対の揺るぎない勝利の確信を持っていたとしても、それを揺さぶられるくらいには宝龍さん、凄すぎる人だけに。まあ、その感想は宝龍さんも佐伯さんに感じていたんだろうけれど。
まさに、お互い勝ち目のないラスボス相手にジタバタしているような気分だった、というと滑稽でもあり悲劇でもある。結局、とっとと弓月くんがはっきりすればよかったわけで、しかしこれを優柔というのは弓月くんのキャラクターからするとまた違うんですよね。もったいぶっていたわけでもなく、ズルズルと優柔不断にふらついていたわけでもなく、彼はもっと世界に対して茫洋として希薄な存在で有り続けたからこそ、実体を得る決断に対して意味を見出さなかったのだろうけれど……まあ、あの佐伯さんの攻勢にもうほぼ陥落しているようだった二巻の様子からして、ズルズルと引っ張っていた、と言われてもこれは仕方ないか。無駄な抵抗を続けていたわけだ。未だ、なんでそんな抵抗を必要としていたのか、という点が謎なのだけれど。彼の抱いている虚無は未だ明らかにされていない。ただ、その彼の抱く虚無にこそ、宝龍さんも佐伯さんも惹かれた、という点が明らかになっただけで。二人共、その一目惚れの理由がまた並の女の子と根源から違っていて、とんでもないなあ、と思わざるをえない。運命だとかいう他人任せじゃなくて、二人共自分でその衝撃をとっ捕まえる気迫が満天なんだもんなあ。それで宝龍さん、大失敗してしまっているというのがこの人のある意味途方もないところで、浮世離れしすぎてたんだなあ、と思ってしまう。佐伯さんのやり方を見て、はじめて自分が決定的にアプローチの仕方を間違えていたのに気づいてしまって、遅ればせながらやり方を変えてみた、というのがこの二巻までのあれこれだったんだろうけれど、その時点で表面上は抵抗しながらも、弓月くんはとっくの昔に佐伯さんに完全陥落してしまっていたわけだから、どうやったって手遅れだったんだよなあ、残念なことに。でも、宝龍さんの手遅れの攻勢が佐伯さんの余裕を奪ってしまって、それが弓月くんに無駄な抵抗をするという遊びを続ける余裕を奪ってしまった、というのがまた面白い構図でもある。
しかしこれ、お父さんが襲来してなかったら、歯止めきかなくなってたんじゃあないだろうか。何しろ、巣でぇろぃことが好きな佐伯さんである。実質的のみならず公式にも弓月くんが陥落した場合、これ幸いとやりたい放題だっただろうし。すでに、それ以前にその萌芽は見えていたわけだし。弓月くんがいくら理性的であっても、理性を本能が上回らなくても、相手から攻め続けられたら敗北することもあるのだし。実際、負けかけてたし。理性的にやっちゃってただろうし。うんうん。
いやしかし、まじでお父さん良く認めてくれたよなあ。あれはおそらく、佐伯パパも弓月くんのスマートな受け答えに、一目惚れ的にズキュンと来てしまったんじゃないだろうか。何しろ、あの佐伯さんのパパである。趣味はニてるだろうし。

1巻感想