双子喫茶と悪魔の料理書 (講談社ラノベ文庫)

【双子喫茶と悪魔の料理書】 望月唯一/ necomi 講談社ラノベ文庫

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「だって、篝はずっと誰かのために料理をしてきたでしょう?」
二年前。幼馴染みの少女・葉月から、なにげなくかけられた言葉。
きっとあの時、ただの幼馴染みは、初恋の少女に変わった――。

そして現在。俺はいまだ葉月に告白できないまま、葉月とその双子の妹・水希とともに、彼女たちの実家の喫茶店でバイトをしていた。
そんなある日、水希が持ち出した古本から――幼女が出てきた。
彼女は願いを叶える妖精キキと名乗り、強引に俺の縁を結ぼうとする。
だが、キキが俺の縁を結んだのは、葉月ではなく水希の方で……!?
料理と、恋と、切なさと――。喫茶店が舞台の感動ストーリー!
喫茶店と言ってもコーヒーやら一服休憩主体の喫茶店というよりも、料理メインのレストランだよなあ、これ。それだけ、篝が調理スタッフとして料理というものに真摯に向き合っているということなんだけれど、その分子供の頃に彼が料理に携わることに義務感以上のものを感じていなくて、それどころか苦痛しか抱いていなかった、というのが大きなポイントとなってくる。その感情を百八十度ひっくり返してくれて、彼の今の人生、生きがいというものを与えてくれた人。未来を開いてくれた人が、いわば葉月なのだろう。それこそが、恋の根源なのだ。
ところが、彼の気がついていない部分で葉月と同じくらい、ソレ以上に彼を支え守り影響を与え続けていた存在が居て、それが妹の方の水希なんですよね。
それを、篝がわかっていないか、というとそんな事はなくて。一途に恋し続けている相手こそ葉月だけれど、ソレ以上に自分にとって大切で掛け替えのない人が水希だ、というのを彼がちゃんと自覚しているのがまたややこしくもあり、問題でもあり、面倒くさくもあり、しかし一本筋も通っているわけだ。身近すぎると恋の対象にならない、なんて言葉があるけれど、それ=大切じゃない、ってわけじゃないんですよね。むしろ、身近であるからこそ恋している人よりも大切であることすらある。どちらが、と比べられるものでもないのだけれど、逆に恋に呑まれている相手とも比肩できる、とも言えるわけだ。
まあ、傍から見たら誰から見ても篝と水希って、ベッタベタにいちゃついているようにしか見えんもんなあ。魔書の影響がどれほどあったのか疑わしくなるほどに。何しろ書の悪魔であるキキからして、これ効いてるの?と首をかしげるほどだったし。
そう周りから見られるほどに息ピッタリの二人。客観的に見てもまだ十代半ばにして大人びた人生観を持つ二人は、それだけふわふわと何も考えずにいるそれとは違う、密度の濃い意思の詰まった人生をこれまで送ってきているのだけれど、その大半を二人寄り添うように支え合うように歩いてきてるんですよね。まさにいつも一緒、というだけではない二人三脚で。
だからこそだからこそ、水希は心の奥底で「なんで自分じゃないの?」と思う気持ちを殺しきれなかったわけだし、誰よりも一緒に居た相棒のことだからこそ、その殺しきれなかった気持ちを踏み潰して彼を応援する以外になかった、というのは辛い話である。
でもこれ、蚊帳の外に置かれている葉月からしてもずっと複雑な心境だったんだろうなあ、と思ってしまうんですよね。双子でありながらともすれば姉である自分よりもずっと篝にピッタリと寄り添っている妹。自分がとても割って入ることの出来ない親密で深い関係を築いてしまっている妹と幼馴染。この疎外感と来たら、とてつもないものがあったんじゃないだろうか、なんて気を逸らすには、今回篝と水希を見舞うトラブルの数々は深刻極まりないものではあったんですけれど。水希の方に気を傾けてあげないといけない危機であったからこそ、微妙に葉月の方も気になってしまったのも事実だったんですよね。魔書の強制認識であったとしても、幼馴染と妹がついに恋人同士になってしまったのを前にして、葉月は本当などんな心境だったのか、なんてことを。
まあそれは、二巻の方に引っ張ることになるんでしょうけれど。ラスト、あそこでズルい女になれない水希は、どうなんでしょうねえ。葉月の方も報われない女オーラ出しまくってるだけに、姉妹揃ってどうにも自分から沼にハマって沈んでいきそうな雰囲気しかないのがなんともはや。
そこは、篝の男気に期待するしかないのだろうか。

望月唯一作品感想