女神の勇者を倒すゲスな方法2 「返事がない、ただの聖女のようだ」 (ファミ通文庫)

【女神の勇者を倒すゲスな方法 2.「返事がない、ただの聖女のようだ」】 笹木さくま/遠坂 あさぎ ファミ通文庫

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勇者を撃退した平和な日々のなか、真一は魔族たちと畑作りを進めていた。その時―魔王を狙って放たれた最上級の光魔法『聖光奔流』。城ごと壊滅させる攻撃を放った相手は、新たな勇者“聖女”!さっそく攻略に乗り出すも、神官戦士に囲まれ真一の甘言にも耳を貸さない聖女はまさしく難攻不落。そこで真一は魔王の娘リノに協力を要請するのだが…。今度はゲスな手段でアイドルプロデュース!?大人気の異世界勇者攻略譚、第2弾!
考えてみると、いや考えるまでもなく一巻の勇者アリアンは超イージーモードだったんですよね。当人のキャラからしてチョロい上に境遇や立場、置かれている環境などもすべてが押せば転ぶところに立っていたと言ってもいい。これはアリアン自身も周りの連中も認めていることで、色んな意味で運も良かったと言えるわけだ。なので、アリアンを陥れて味方にする、と言ってもタイトルほどゲスいことをしてたわけじゃあないんですよね。
なので、本番はむしろ今回からなのである。純粋培養の狂信者であるところの「聖女」には小賢しい誰もが思いつくような通り一辺倒の作戦は通用しない。情で訴えることも正義に語りかけることも公正さを掲げてみることも、何もかも伝わらない。
となれば、それこそゲスな方法。策略をもって彼女の寄って立つものを失墜させ、陥れるしかないのである。というわけで、むしろこの巻からが魔王軍作戦参謀となった真一の真価の見せ所だったんですよね。むしろ、イージーモードでなくなってからこそ、彼の柔軟な発想と引き際の速さ、タイミングの見極め方など策略家としての筋の良さが見えてきた感があるんですよね。状況を見極める冷静な判断力なんかも見えてきましたし。かと言ってまあ、やっぱりゲス野郎と言われるほどゲスな事は全然してないんですけどね。むしろ、やるべきことを見落とさず手抜きせず、きっちり計画立てて準備して、失敗も先に考慮しながら手管を整えていくあたり、非常にやりてですし、人心を利用はしても弄ぶような真似はしないあたり、やはりゲスとは程遠いんですよねえ。ってか、普通に良い男である。
教会は相変わらず真っ黒で、ほぼ妥協の余地のない相手なのですけれど、決して古代から人類に根付いている宗教ではなく、むしろここ百年近くで急に勢力を拡大してきた新興宗教であり、まだその土地に根ざした地元の宗教や医学、薬師を迫害した記憶が民衆に色濃く残ってたり、教義と信仰で影響力を広げているのではなく、回復魔法や蘇生魔術という実益を餌に逆らえない環境を誂えて、と決して人心を集めているわけではないようなので、これならガツンガツン敵対しても落とし所は整えられそうなようにはなってるんですねえ。なかなか足場のしっかりした読みやすさで、面白かったです。