キラプリおじさんと幼女先輩(2) (電撃文庫)

【キラプリおじさんと幼女先輩 2】  岩沢 藍/Mika Pikazo 電撃文庫

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Kindle B☆W

「今日こそ勝っ…………てねぇぇぇ!」
「私のコーデを勉強することね、2位」
女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ高校生・黒崎翔吾と小学生の新島千鶴。そんな二人の前に凄腕のキラプリプレイヤーが登場!?
「アタシはめちゃカワ☆JSアイドル美咲丘芹菜!」
翔吾にますますロリコン疑惑が掛けられる中、全国のアミューズメント施設と連動した、「キラプリ」初の大型イベントが開催! 翔吾はこのイベントを利用して、千鶴に友達を作ってあげようと奔走するのだが……。
夢いっぱいの遊園地を舞台に、もどかしくも熱い物語が再び!

なるほどなあ。小学生は最高だぜ! と喝采したくなるような小学生女子がヒロインの本作なんだけれど、他の小学生女子がヒロインとなる作品と違って……いや、違うかどうかはその手の作品を網羅しているわけではないので断言できないのだけれど、本作に限っては高校生の翔吾と小学生の千鶴の間に、いわゆる年令による上下関係は存在しないんですよね。まったく対等な戦友であり掛け替えのない相棒であり、魂の同志なのである。ところが、二人が共有するその関係はふとした瞬間に崩れてしまう脆い関係でもあるのだ。なぜなら現実として、彼らは高校生男子と小学生女子という断絶した世界観の住人だからである。ただ、キラプリという共通の魂から本気になれたモノを通じて、二人の関係ははじまり、今も徐々に形を変えながらも形成され続けている。でも本当に簡単なことで、二人はただの高校生と小学生に戻ってしまう。同じクラスの友達と仲良く喋っている翔吾を見つめている千鶴の疎外感、孤独感はいかばかりだっただろうか。ただでさえ、小学生の小さな子が高校生のお兄さんお姉さんの集団を前にしたら気後れしてしまうだろう。そして、そこには自分と一緒に居たはずの戦友が、知らない高校生のお兄さんの顔をして笑っている。千鶴が人見知りな性格だから、だけでは片付けられない、大きな溝がそこにはあったのだ。
いや、でもそれは仕方無いことでもある。本来なら自分と翔吾のホームであるゲームセンターに白川さんたちが現れたことだけでも思うところはあったかもしれないけれど、翔吾には翔吾の付き合いがある。高校生活がある。彼がそれに触れればあちら側になってしまう、というのは仕方無いことだ。
でも、遊園地で翔吾が戦友でも同志でも、友達としてでもなく、高校生のお兄さんとして自分に友達を作らせようと促してきた時に、千鶴が感じた絶望はどれほどのものだったかは、あの意地っ張りな彼女があんな悲痛な顔をして何も繕えない本心を吐露してしまったことからでも、幾ばくか伝わってくるんじゃないだろうか。理性では、聡いこの娘は翔吾の親切心を理解していたことは、あとで千鶴が素直に謝ったときのセリフからもうかがい知ることができる。でも、だからこそそうじゃないのだ。
千鶴にとって、翔吾は年上のお兄さんなんて括りであっては絶対にほしくない存在なのだ。上から目線なんて言語道断なのだ。だって、この人とは対等で居たいから。並び立っていたいから。同志なのだ、戦友なのだ。そんな、突き放した関係にまとめてしまってほしくない。そんな千鶴の叫びが、聞こえただろうか。
千鶴が人見知りで友達を作れない性格であることと、遊園地で翔吾と喧嘩してしまった件は、だから実のところ相関関係にはない。因果はあっても、問題はそこではなかったのだ。
これを、高校生のガキでしかない翔吾に悟れ、というのは実際難しい話だろう。だから、指摘されたとは言え、ちゃんと気づけた翔吾は本当に大したやつだと思う。
こいつなら、小学生とだって本気で付き合えるだろう。いや、ロリコンとか関係なしに。
なぜならば、すでにもうこの少女は一人前に一人の女なのである。
だからこそ、だからこそ、同じく一端の社会人として、アイドルとして大人顔負けの立派な振る舞いを見せる芹菜と、あれほどシンパシーを通じ合わせたのだろう。この娘、千鶴が自分をさらけ出せるのはいつだって、本気を出し切って頑張っている奴らの前だけなのだ。それは、営業用のスマイルを完璧に使いこなす芹菜も同様だったのだろう。この二人、得難い友人を得るためのハードルが凄く高い娘だっただけに、その二人がこうして出会えたのは運命的とすら思える。
本来ならあり得ないはずだった出会い。それは、小学生女子の千鶴と高校生男子の翔吾の二人の出会いと関係の醸成もまた同様で、その運命をつなぐツールとなったキラプリ、まったく侮れないコンテンツである。とりあえず、小学生のアーケード版は金銭的にハードル高いんじゃなかろうか、と思ってしまうのは野暮ですか?
にしても、千鶴のデレっぷりは凄いなあ。この娘、本気で美人系なので中学上がったくらいで既にもうヤバイんじゃないだろうか。この主人公、自分がどんな娘にどんな懐かれ方しているのかわかってないし、子供扱いせずに本気で対等の友達づきあいしているだけに、気がついた時にはもう後戻りする余裕一切残ってなさそうだな、これ。

1巻感想