暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

【暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~】 渡葉 たびびと/きただ りょうま 富士見ファンタジア文庫

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VR格闘ゲーム「プラネット」で活躍するプロゲーマーの俺は、地味で無口な同級生美少女・葵が暗殺拳継承者という秘密を知ってしまう。彼女の動きや技なら、ずっと探していた俺のライバル候補になれるはず!それでゲームに誘ったら…「俺と(ゲームに)付き合ってくれ!」「ふ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」告白と誤解されて、恋人同士に!?一瞬で加速する瞬発力。急所をついての一撃必殺!学校では寂しがりで甘えてくるけど、ゲームではチート級の強さで強キャラたちを圧倒する葵。快進撃を続けた結果、俺と葵のバトルの強さはゲーム内で拡散していき、誰もが知る存在となる!?
いやあいやあ、これは凄い好きだわぁ。シチュエーションとして大変好み。現実世界で活かしどころのない裏の業を、VRゲームで人を傷つける憂いなく思いっきり使い倒す、という展開そのものも好みなんだけれど、解放感たっぷりに思う存分暗殺拳振るいまくる葵ちゃんがそれはもう楽しそうでキラキラしているのがなんとも微笑ましいというか、素敵なんですよねえ。
決してこれまで鬱屈を貯めていた、というわけじゃないんだろうけれど、現実では使う場面もなくそれどころか交友関係にも支障をきたす原因となってしまいながらも、黙々と鍛え続けたものを、恐らく一生報われることのなかったはずの技巧の研磨を、証明できることへの歓喜。自分の習得した技術を誰も傷つけることなく存分に出し尽くせることへの解放感。そして、そんな世界へと自分を導いてくれた人は、自分と対等以上に戦ってくれる相手であり、価値観の共有者であり、この上ない好敵手であり、そして想いを通じ合わせた恋人同士であるという幸せ。そう、まさに恋愛と遊びとしてのゲームと人生を賭した生業を表に出せるという三重の完全充足である。これこそ、幸せの絶頂以外のなにものでもなく、それを衒いなく満喫している女の子の幸せそうな充実した姿というのは、見ているだけで、追っているだけでなんかもうこっちまで幸せになってくるじゃないですか。
これ、暗殺者設定を主人公側ではなくヒロイン側にしたのは出色ですよね。このシチュだと自分が鬱屈を発散させる展開よりも、対象を一番傍から主人公が愛でる方がむちゃくちゃ楽しい。
アクション描写のスピード感と、当たり判定のこう炸裂感というの? 技の組み立てから、スガーーッンと派手にぶっ飛ばす見た感じの痛快感も素晴らしくて、この描写がなかったら葵の大暴れもそんなノリ良く楽しめなかったでしょう。
もう戦闘シーン、数的に物足りないくらいで、実のところしっかりと強敵と噛み合う形で戦えてるのってラストのバトルくらいなんで、瞬殺戦はともかくとして、ある程度攻防が発生する戦闘シーンはもうちょっと欲しかったくらい。まだ全然葵のポテンシャルがお披露目出来てないんじゃないか、というくらいですからね。それはもう、次回以降に期待、ということで。
何気にヒロイン、暗殺者の家系で感情表現の乏しい無表情系キャラでありながら、戦闘しか知らない世間知らず、というわけではなく、けっこう女の子らしいかわいい系のオシャレのセンスの持ち主だったり、初々しい付き合いたてのラブコメヒロインとしてのポテンシャルも高くて、そっち方面でも楽しめる、というかゲームのバトルと付き合いたての恋人同士の逢瀬とが上手いこと噛み合ってるという意味でも良く編み上げられた物語だったんじゃないでしょうか。
あとは、シリーズ続いていく間に今回駆け抜けてまだ世界観や周辺キャラの奥行きに詰めきれてない部分に厚み詰め込めていければ、もっとスケール感とスピード感とワクワク感が増した良い作品になりそうな感じがひしひしと。いや面白かった。次巻が楽しみな作品出てきましたわ。