ミリオタJK妹!  異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します (GA文庫)

【ミリオタJK妹! 異世界の戦争に巻き込まれた兄妹は軍事知識チートで無双します】 内田弘樹/野崎 つばた GA文庫

Amazon
Kindle B☆W

「確かにこれは、みぐたちみたいなミリオタじゃないと、ですね……」

ある理由から現実に落胆していた兄妹、宗也とみぐは、突如異世界に召喚される。だが、喚び出された王国は侵略を受けており、攻めてきた竜人族の大軍団が王都を包囲しているようなありさまだった。苦境にも怯まず二人は、助けを求める王女エクレアの頼みを引き受け、現代で得たミリタリー知識を駆使した秘策を仕掛けていく。まず手始めに襲い来る龍を驚きの奇策で退けて――! ?

滅亡寸前だった王国に、希望をもたらすのはまさかの『ミリオタ』! ?兄が秘策を組み立て、妹が実弾で武力を行使する、異世界軍事ファンタジー、ついに開戦!

最近のミリオタは紛争地域帰りがデフォなのか……。というのは冗談としても、ミリオタを名乗るために必要なレベルがめちゃめちゃ高すぎるw だから、生半齧った程度じゃ怖くてオタクとか名乗れないのですよ!
実のところ、軍事知識というものに時代の先進性というものはそれほどないんですよね。技術革新によって出来ることの範疇が広がって、それによって戦争のシステム自体がアップデートされることは多々あるとしても。本作においても、このミリオタ兄妹がやってる戦争指導は決して時代を隔てた未来のそれ、というわけではなく、むしろ堅実かつ実直な内容の積み重ねでミリオタだから無双できるとかじゃなく、純粋にこの兄妹だからやれたという他ないんですよね。敵軍や敵指揮官の心理状態まで読んで作戦を立案し、リアルタイムで刷新していくとか、そっちの才能がないと無理ですもん。
古代から現代までの戦争に関する体系的な知識があったからといって、そんなの現実に利用応用実行できなきゃ意味ないですからね。というか、実際に戦地の災禍を経験していないと、ここまでの糞度胸は持てないでしょうし、特殊な事情をもっているみぐは元より、兄の宗也の方もハッタリをかますにしても自分と妹の生命をああも大胆にベット出来る時点で相当ぶっ壊れてるように見える。
ともあれ、彼ら兄妹が常にアドバンテージを握り続けられたのは、ドローンに寄る詳細かつ継続的な情報の入手が大きんでしょうが。あれでほとんどの戦場の霧を常時はらい続けられてましたもんね。竜人軍にしても、常に自分の軍の動向がバレバレとか不利もなにもあったもんじゃなかったでしょうし。指揮官のラズを含めて、敵軍は殆ど下手はうってないにも関わらず、ああもやられてしまったのはリアルタイムで情報取られて続けてたのが大変大きかったと思われますし。特に市街戦なんか、敵軍の綿密な動向の入手と司令部と前線に浸透する特殊部隊との間にまったくタイムラグなく情報が行き来してたわけですしね。旧時代と近現代において戦争で何が一番変わったか、というとまさにこの「通信技術」「情報伝達速度」ですからね。この兄妹はその意味では正しく、自分たちの知識のどこがチートなのか、アドバンテージがなんなのかをわかった上で動いていたのがよくわかります。ああ、その意味ではこの時代の人間が想像できない未来の戦争の形を運用してみせてたわけですから、ちゃんと時代を隔てた未来の戦争によって優勢を取ってたとも言えるわけか。
もっとも、それだけ彼らが好き放題できたのは、召喚されてきたこの国がもう詰んでしまっていたから、とも言えるんですよね。ってか、国を動かす首脳部が王族軍部まるごと根こそぎ消滅してるとか、そりゃやりたい放題やれる、じゃなくてやるしかないじゃないかw
彼らを呼んだお姫様は、元々王家から半ば放逐されたような立場で市井でパン屋の看板娘していたような娘さんで、首脳部が根こそぎ消滅してしまったお陰で急遽自分でいらん苦労を背負いに立ってしまった人で、いい意味でも悪い意味でも兄妹を掣肘できるような娘ではなく、それでいながら王族としての責任感やカリスマを持った娘であり、丸投げではない本質を見極めた上での「全部任せる責任は自分が取る」を出来るトップ、というまあ理想的な上司なんですよね。下手に軍がまともに残ってないのも、組織間の足の引っ張り合いやパワーゲーム、新参者へのやっかみ、自分たちの知らない戦争の形への拒否感、という邪魔な要素が一切ないというプラス要因になってしまってましたし。
思ったことを思った通りに実行することの出来る環境、ってのが本来一番望めないもののはずなのに、本作ではそれが最初から手に入ってたわけですからね。その代わり、末期戦も末期戦、ベルリン陥落前夜みたいなところからスタート、という鬼畜な難易度でもあったわけですけれど。まあ、国家総力戦の末期、ではなく戦争初っ端でいきなり全軍壊滅、首脳部消滅、王都包囲、という段階でまだ色々な側面から、挽回の余地があったのですけれど。いや、普通に見たら完全に詰んでるようにしか見えなかったのですが。
しかし、ここまで兄べったりの妹さんなんですから、異世界では義妹でもアウト、変態扱いと変に妹を愛でるのにハードル上げ無くてもよかったのになあ、と思わないでもない。姫様はじめとしてヒロイン属性持ちは、みぐが警戒するように沢山いるものの、あの兄ちゃんハーレムとか無理そうな性格だし、ヒロイン属性持ちたちもイチャラブできるような娘たちでもなさそうだし、わりとみぐ一択しかなさそうなんですよね。みぐの兄依存っぷりを見てると、お兄ちゃんももうちょっと妹意識してあげてもよかろうに、と思わないでもない。まあキャラ的に妹だけじゃなく女性全般に対して可愛げを見せるタイプでもなさそうだけれど、あのお兄ちゃん。

内田弘樹作品感想