ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三 (富士見L文庫)

【ぼんくら陰陽師の鬼嫁 三】 秋田 みやび/しのとうこ 富士見L文庫

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ぼんくら陰陽師・北御門皇臥のプロ嫁として、今日も厳しい家計をやりくりする野崎芹。そんな中、本家の嫁のお披露目をしろと叔父の武人がやって来る。無骨な武人は、姑・史緒佳と相性がよろしくないようで、門前からバチバチと火花を散らして嫌みの応酬!いつもは敵の史緒佳だが、今回ばかりは一時休戦で、最強嫁姑タッグ成立か!?そして、本間先輩の持ってきたいわくつきの白無垢が北御門家にさらなる混乱を招き―?旦那使役スキルもますます上がる、退魔お仕事嫁物語、第三弾!
表紙絵のレッサーパンダがえらい可愛いんですけど!! ってか、レッサーパンダってなにさ!? と思ったんだけれど、そう言えばメディアワークス文庫の【絶対城先輩の妖怪学講座】でもこれについては語られていたっけ。ある妖怪の正体ではないかって。となると、本作中では明言されていないのだけれど伊周さんの正体って妖怪ランク的にも相当レベル高いものなんじゃなかろうか。いやでも、正体レッサーパンダなんだけど! あかん、元のロマンスグレーな老紳士とのギャップがw
さて、相変わらず嫁と姑でバチバチ火花飛ばしながら家族仲良く過ごしている北御門家ですが、名門当主にようやく出来た嫁の、一門衆へのお披露目というイベントが残っていて、というか親戚連中からせっつかれて、ついに代表して叔父さんが押しかけてくるというお話で、起こる事件の要となるのが花嫁衣装の白無垢、ということでついに芹の嫁問題にスポットが当たってきたのである。なんかもう、嫁として定着しすぎてて今更!って感じがしないでもないのだけれど、だからこそ親戚一同にも周知徹底していく必要はあるわけで、これに関しては皇臥よりもよっぽど芹の方が腰も肝も据わっている。いやまあ、この件だけではなく概ねどのようなときでも芹の方が色々と据わっちゃっているのだけれど。なので、むしろ今回の話って皇臥の方にもっと旦那として嫁を守るために頑張れ、という話だったんじゃないだろうか。なんだかんだと、芹をターゲットにして直接霊障が起こるというのは初めてなケースだったわけですし。幾ら祈里・護里の式神コンビに常時守られているからって今回はかなりヤバイ感じで、芹も随分怖い思いをさせられるはめになったわけですし。芹を守るために、非事苦手とかもうそういうの脇に放り出して必死に駈けずりまわる皇臥くんの姿は、なんでも出来る完璧超人とは程遠いからこそ、一生懸命さが伝わってきて好感が持てるんですよね。芹もこの旦那のこと、なんだかんだと信頼しているのが伝わってくるし。
それにしても、友好的とは言えない叔父さんへの角は立てないけれど腰も引けてない物怖じしない、それでいて礼儀はしっかりとした芹の対応は大人というかなんというか、けっこう大人げないお姑・史緒佳さんの対応と比べてしまうと、大したものだなあ、と。いや、史緒佳さんはこの大人気なさが可愛らしいのですけれど。仲の悪い叔父さんへのそれは、芹に対する微妙に方向性間違えている意地悪と違って直球でボコボコボールぶつけるような感じなのですが、それでもじっとりとした陰湿さがないのはホント、根っからいい人なんだよなあ。史緒佳さん自体はこの家に嫁として来た時、皇臥の祖母にあたるお姑さんには凄く可愛がられたらしくて、自身いじめられた経験がない、という話は芹へのピント外れの全然ダメージにならない可愛らしい意地悪しか出来ない理由の一つとして、なるほどなあ、という風情で。芹がいい加減お義母さん大好きだろう、という感じになってきてないだろうか、これ。
まあ、叔父さんの方も史緒佳さんが嫁入りしてきたときからチクチクと嫌味の応酬を繰り広げて大変仲が悪いまま現在まで来てしまったようだけれど、こちらはこちらで嫌い合っているわりに憎み合うようなドロドロとした感情はさっぱりなくって、史緒佳さんのことも彼女の苦労や努力も認めてるんですよね。嫌いだけれど。ってか、この人も根っからいい人だよなあ。
今回のことからも、陰陽師の家に嫁ぐということは危険とも隣り合わせで、怖い目にも合うわけで、厭味ったらしい事ばかり言ってくる叔父さんですけれど、芹に対してはそういうことも心配してくれてるんですよね。
しかし、芹の方は契約上の嫁云々抜きで、この北御門家の嫁を続けていく不安とかはもう全然ないのである。怖い目にあったらそりゃ怖いけれど、逃げ出したいとは欠片も思う様子もない。それはもう、彼女にとってここが帰る家、居場所になっているということなんですよね。寄る辺のない天涯孤独の彼女のとっての、温かくて居心地の良い家族と暮らす我が家なのである。無理してしがみついているのではなく、もう根を下ろしたような感覚でいる。
冗談でお義母さんと、離婚したあとの祈里と護里の式神所有権なのか親権問題なのかわからないことを話してたけれど、叔父さんにこぼした自分の居場所の話こそ芹の本音なんでしょうなあ。皇臥はマジで頑張れよ。こんな出来た嫁は二度と見つからんぞ。
それにしても、祈里・護里コンビの可愛らしさがさらに凶悪になってきてるんですけど。ホンマにかわいいなあ、おい。なんか、おとなしかった護里の方も祈里の方に影響受けてアレな感じになってきてるのが笑ってしまったのですが。式神なのに平然と主人を脅しに掛かるこのちびっ子たちw まあそれもこれも、芹さまが一番大事、という気持ちからなのですけれど。
ラストで、ついに14年前の隠された真実に迫る急展開。北御門家の傷跡に踏み入る話へと突入しはじめたのですが、いやもうほんと皇臥頑張れよ。

シリーズ感想