妹さえいればいい。 7 (ガガガ文庫)

【妹さえいればいい。7】 平坂読/カントク ガガガ文庫

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ついに付き合うことになった羽島伊月と可児那由多。恋も仕事も充実して、ますますリア充真っ盛りとなる2人。そんな2人の交際をきっかけに、羽島千尋、白川京、不破春斗、それから何故か大野アシュリーの心境にも変化が訪れるのだった。千尋の前には新たなライバルが出現し、春斗は彼を慕う新人作家(巨乳)・相生初に熱いアプローチを受ける。近づいてくるクリスマスの足音。変わりゆくもの、変わらないもの。大人気青春ラブコメ群像劇、待望の第7弾!作家や税理士や女子大生たちの、新たな物語が幕を開ける―。

那由多は、一時期そのエロ回路が甘酸っぱさに機能不全を起こして乙女回路へと変換されてたのに、いざ付き合いだしたらもとに戻ってしまったなあ。そこまでひたすら肉食で在り続けて大丈夫なんだろうか、この娘。ぶっちゃけ伊月はそこまでタフじゃないぞ。肉体の疲弊がそのまま精神の疲弊につながって行きかねないところがあるし。ってか、そのうち逃げ出すんじゃないのか、こいつ。
それはそれとして、主人公が一人の女性と結ばれたとしても物語は終わらない。伊月の作家としての人生においての目標である那由多と並び立つ作家になる、というものはむしろ結ばれたからこそ必要不可欠なものになったし、現状アニメの放映も迫っている。やることやらなければならないことは盛り沢山だ。そして、本作は群像劇であり、伊月の周りにいる人たちの人生もまだ道半ばだ。まだ、何かをやり遂げるに至らない途中なのである。
そんな中で、一人のやり遂げてしまった作家の話が語られる。多くの作家に、人間に影響を残して逝ってしまった一人の天才作家の物語だ。いや、そんな彼女に置いて行かれた者たちの物語か。
不思議と、本作においては作家同士でその生き方、在り方に多大な影響を、或いは生き様に傷跡を残して変えてしまうケースが散見される。作品の中身だけではなく作品に挑む作家の姿勢、背中、生き様が、それを観測してしまったものに無視できない変質をもたらすのだ。
海津さんが凄いなあ、と思うのは彼がそれを傷跡のままにしないで、自分の作家としての生き様に昇華させて、今の業界を生き抜いているところなんだろうと思う。それは誇りか、証明か。それは誰に示すでもない、自分の中の決意であり信念として完結して、表に出しもせず誰かに伝えもしていない。しかし、それこそが彼の強さとしてライトノベル作家として今を生きる原動力となっている。そんな彼の目に、悩み苦しみながらも思うがままに突き進む伊月の姿がどう映っているのか。一方で、その伊月を眩しそうに見つめている春斗がどう映っているのか。なかなかに興味深いところではある。
海津さんと比べても、アシュリーは色々と踏み外してるよなあ、と思わないでもないけれど、彼女は彼女でその外れてしまった道を軌道修正するつもりは毛頭なく、このまま外れてしまった道をてくてくと歩いて行く気でいらっしゃるのは伝わってくるだけに、それもまた人生よなあ。……この人、何気にそっちのけがある、というか芽生えてしまった過去があるということは、春斗よりもむしろ妹ちゃんの方がヤバくないかしらw
作家から作家に伝わっていくもの、同世代ゆえにリスペクトし合うものもあれば、先達と後続との間で引き継がれていくものもある。自他ともに認める那由多のフォロワーである青葉のそれと、春斗との出会いによって自分の中で描くべきものを確立させた相生初。その作風の軽重と違って、青葉のそれがまだ表層しか捉えられていないような描写であるのに比べて、相生 初の方は春斗の言葉から自分が知りもせず拒絶してたものを見つめ直し、その上で自分の中で書きたいもの、書くべきもの、表現したいナニカを徹底的に吟味して、掘り下げて、自分自身を解体しきった上でもう一度組み上げたような「実」がこもってて、春斗が感じたようにこの娘、すげえ作家になるかもしれないのねえ。
春斗って、京ちゃんに恋してしまった瞬間でもそうだったけれど、この男自分の理解者に徹底的に弱いのなあ。いや、それは大概の人間に当てはまるものなのかもしれないけれど。
今回の話は、道半ばで早逝なされた作家への想いや、作品だけではなく作家への人格攻撃すら行う心無い者たち、自分たちを取り巻く環境への情念ともつかない熱量と。それでも……その上で、その先に歩み続けることを、それを体現するこの物語に登場する作家たちというキャラクターたちへの愛情を感じさせる回でもありました。

シリーズ感想