齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~ (角川スニーカー文庫)

【齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 ~やだこの生贄、人の話を聞いてくれない~】 榎本 快晴/ しゅがお 角川スニーカー文庫

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Kindle B☆W

「どうぞ私をお召し上がりください邪竜様」
「そう言われても困るのう。わし草食なんだけど」
突如現れた少女に、ドラゴンは困惑していた。
少女の魂と引き換えに、魔王を討つ手助けを……って言われてもただの人畜無害な草食ドラゴンなんじゃが?!
しかも生贄を村に帰す為についた適当な嘘のせいで、少女がありもしない"邪竜の魔力"を発動し――!?

邪竜(認定された無害な草食ドラゴン)と勘違い少女の、『魔王討伐の旅』始まる!?
これは酷いw というか凄い。これ生贄の少女レーコほぼ一人でドラゴンの邪竜設定を世間に押し付けている、というか押し切っている、有無を言わさず強制的に認めさせてしまってる。ハイかイエスしか許さんという勢いでw
普通、この手の本来の実力を過剰評価されてしまう勘違い系って、何故か世間一般みんなが誤解したり勘違いしたりしてくれて、その間違った設定がまかり通ってしまうのだけれど、本作ってそこまでみんな誤解したりしないんですよね。だいたいちゃんと話せばわかってくれるし、敵役みたいな連中も邪竜様を勝手に誤解したりせず、おおよそ実力は見切ってくれるのである。しかし、それを許さないのがレーコなのだ。この娘、思い込みだけでなんか邪竜の眷属になってしまい、邪竜の力に目覚め、なんかこうわけのわからない魔王よりも凄いじゃないかという無茶苦茶を押し通すあれやこれやが出来るようになってしまい、それを疑いもせず邪竜様に授けられた力ーー!と思い込んだ挙句に、邪竜さまの威光を世に知らしめるために、魔王軍も人類も分け隔てなく死んだ魚の目をするような有り様にして、ジャリュウサマスゴイ、ジャリュウサマバンザイと棒読みで唱和するような光景を道々作り出すことに。
大人しくて縁側で日向ぼっこするのが趣味な隠居したお爺さんみたいな草食ドラゴン、涙目を通り越してこっちも死んだ魚の目である。
勘違い系でたった一人で勘違いをこれだけ罷り通してしまうというのは珍しいを通り越してあんま見たことないですよ。まあ、レーコの村の人たちみんな概ね人の話を聞かない傾向があったのでわりと土地柄なのかもしれませんが。レーコは別の地域の出身なだけに地域性と言い切ってしまうのは難しいのですけれど。
前半はもうなんかひたすらドラゴン爺さんが可哀想になるばかりの引きずり回される展開で、居心地悪いくらいだったのですけれど、ある程度ドラゴン爺さんがレーコの操縦法をわかってきた上で、さらにレーコがその常識の上を軽々と羽ばたいていく、ある意味レーコのやりたい放題の幅が広がった上に、むしろドラゴンの理解者が増えてきて、レーコに対するツッコミが質量バラエティに富みだす、或いはレーコの被害者のバラエティも増えだす後半になると、掛け合いのキレとぶっ飛んだ展開のノリの良さが凄く滑らかになってきて、ドラバタギャグとしてのテンションも急速に回転をあげてくるんですよね。アクセルベタ踏みな勢いで。
同時に、レーコとドラゴンの関係がなんだか孫とお爺ちゃんみたいな雰囲気になってくるのと合わせて、後半に入ってからは本当に面白かった、というか笑った笑った。
面倒見よいように見せつつわりとイイ性格している女騎士のアリエンテとか、ポンコツ通り越してえらいことになってる聖女さまとか、あとドラドラ(笑とか、キャラもいい具合に弾けてるので、このテンションというかノリが続くといい味の作品になりそう。