なぜ、勉強オタクが異能戦でもトップを独走できるのか? (GA文庫)

【なぜ、勉強オタクが異能戦でもトップを独走できるのか?】霜野おつかい/はくり GA文庫

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「教えてやろう。勉強は最強だ! 」

異能に目覚めし『覚者』が集まる学園でただ一人、ひたむきに勉強に打ち込む男がいる。
その名は神堂学斗。
戦闘力至上主義のこの学園では決して評価されない『学業』を極めた学斗は……正に連戦連勝!
学術的知識を過度に過剰に応用すれば

ゴム手袋で電撃を無効化! 暗記術で不良どもを撃退! 超音波でテロリストを一網打尽! 量子トンネル理論で敵アジトに直接攻撃!

「って、そんなわけないでしょ!?」
しかも勉強オタクのくせに序列第1位を目指すって、頭が良すぎてむしろバカ!?

勉強オタクが己の信念を貫き通す、知識欲王子の学園下剋上ゲーム、開幕!!
この理屈で柔よく剛を制すとばかりに相手を倒すというよりも、机上の空論を腕力で殴りつけてくるみたいなわりと無茶苦茶なこの能力けっこう好き。
明らかに物理法則の都合のいい部分だけ抜き取った上でそこだけ過剰にパワーアップさせて、法則的には正しい!と無理押ししてくるわけだからかなりやりたい放題やってるんですよね。この一点だけでも、学斗の能力って規格外だと思うんだがなあ。彼の場合、自分の能力の利点を十全理解しているからこそ、あくまで「勉強」が最強であって「知識」が最強と名乗っているわけではないのであろう。つまるところ、都合よく知識をこねくり回すために、蓄積と運用法が大事なんでしょうな。その意味ではまったくテクニカルであるとも言えるわけだけれど。
彼が面白いのは、それだけ戦い方はロジカルであらんとしているにも関わらず、生き様は完全に熱血であり正義感の塊なんですよね。理不尽を見過ごせず、正しきをなすために挫けず不屈の意思で不利を克服し、挫折を乗り越え、前に前に前進していく。それは重機のごとき力強さでありながら、自分一人で周りを気にせず置き去りにして突き進んでいくような強さではなく、自分ひとりでは何も成せないことをちゃんと弁え、困っている人には手を差し伸べ、苦しんでいる人には同じ目線に立って叱咤激励し、と……まあ、変人ではあるもののこうしてみると文句なしに好漢だわなあ。
ヒロインの天音は名家の赤髪ツインテ、と強気エリート娘の王道を行くような設定の娘なんだけれど珍しく登場時点でベキベキに心をへし折られて自信を失いまさに挫折の真っ最中。自信喪失自己否定のサイクルにハマってしまっている娘に必要なのは、絶対的な肯定と信頼であるとするならば、学斗は何よりも自分自身を信じられなくなっている天音にまさにその肯定と信頼を示した上で、信じる勇気を与えるのである。
そりゃあ惚れるよね。何より彼の生き方、生き様そのものが天音にとって焦がれるような憧憬を抱かせただろう。そんな相手から信頼されてみなさいな、グズってなんかいられないのだから。
クライマックス、もうちっと盛り上がりがほしいところでは在りましたけれど、このまま折り重ねていけば面白くなりそう。楽しみである。