オール・ジョブ・ザ・ワールド (ファンタジア文庫)

【オール・ジョブ・ザ・ワールド】 百瀬 祐一郎/ヤスダ スズヒト 富士見ファンタジア文庫

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Kindle B☆W

転職を繰り返すことで強くなる世界、ルードワルド。にもかかわらず、初めて転職できない最底辺の職業である“遊び人”となってしまった15歳の少年ホールデン。積み上げたステータスも急激に下がり、得たのは無意識に女の子を口説いてしまう“女殺し”という役に立たないスキルだけ。それでもなんとか就職した彼は、絶世の美少女であり王女でもある“魔術剣士”メグ、すぐに婚姻を迫ってくる巨乳“裁判官”ティア、イケメン“勇者”のサリーという上級職に就いたメンバーと共に、依頼を達成すべく今日も働く。何にもなれない“遊び人”こそが最強なんだぜ、って言える日のために―
女殺しって、女殺せてないじゃん! ほんとに女の子をときめかせるような良い言葉を折り重ねて口説くのなら意味もあろうものだけれど、無神経なこと言って女の子を怒らせるだけの能力は酷いなあ。強制発動、というのも可哀想すぎる。そもそも、これまで人生の大半をかけて努力して自分を鍛え磨き上げてきた結果が、遊び人というジョブを引き当ててしまったがために全部なかったことにされてしまった、というのは本当にキツイ。努力が報われないというのは仕方ないことなのかもしれないけれど、努力して得たものまで無に帰す、というのはなあ。これまでやってきたことはなんだったの、とこの時点で心折れかねないじゃないですか。
そのままならコルホーズみたいなところに放り込まれそうなところを幸いにして奇矯な社長に拾われ、のちに新たなスキルが開花したことによって起死回生なったわけだけれど、ジョブによってその後の人生そのものが規定されかねない世界というものが内包している歪みを、さり気なく主人公ホールデン自身が体現してるんですよね。世界の理不尽、それは敵であり犯罪者たちである闇のジョブに目覚めてしまった連中にも通じることで。さて彼らは元から悪人だったから悪しきジョブに目覚めたのか、それともそんなジョブに目覚めてしまったから否応なく大罪人として裏社会で生きなければならなくなったのか。鶏が先か卵が先か、という話になってしまうのだけれど、そも最初はホールデンの人格をまったく無視してそのステータスだけを重視して婚姻を迫ってきたティアにも通じる話であり、とにかく世界がジョブとステータスによって価値観が固定されてしまっている現状に対して、はっきりと否と告げているわけじゃないのだけれど、それとなく「なんかおかしい」という雰囲気は漂わせてるんですよね、そこはかとなく。
今の所、役立たずの遊び人になってしまったホールデンが、それでも諦めず自分の夢を叶えるために頑張って、不遇のジョブに秘められた新たな力を駆使して成り上がる、みたいな話になってはいるのだけれど、そこだけに収まらないぞ、という意気込みを感じる世界観でありました。
でも、遊び人でデカパン一丁というのは衣装としてどうなんだろう。その格好は赤塚不二夫先生のキャラのデカパンの印象が強すぎて遊び人って感じではないんだけどなあ。
あと、なんだかんだと遊び人のスキルがいろいろと強力すぎて、結局良い職業でしたね、という事になってしまっているのもなんとも。