神域のカンピオーネス トロイア戦争 (ダッシュエックス文庫)

【神域のカンピオーネス トロイア戦争】 丈月城/BUNBUN ダッシュエックス文庫

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『世界は神々で満ちている』

神話の世界と繋がり、世界中に災厄をもたらす異空間「サンクチュアリ」。
ギリシア神話に語られるトロイア戦争の世界「サンクチュアリ・トロイア」と繋がった日本の神戸市には、様々な魔物が現れ、甚大な被害が出ていた。
事態収拾のため、日本最高の陰陽師にして神の生まれ変わりを名乗る美少女、鳥羽梨於奈が派遣される。
だが、彼女の「ご主人さま」六波羅蓮は魔術界で最も権威ある結社《カンピオーネス》に所属しながら、何の力も使えない"素人"だった。
逃げ足と口のうまさだけが頼りの蓮に呆れる梨於奈。しかし、蓮には「神の召喚」をも可能にする切り札があった……!
「必ず神話の筋書きを変えろ。必要なら――神さえも殺せ」

神々の王ゼウス、女神アテナ、英雄アキレウス……神々と英雄が入り乱れる世界で、蓮と梨於奈はおよそ人間には不可能なミッションに挑む。
任務のためには《神殺し》さえも辞さない、神域への挑戦が今はじまる! !
果たしてアテナのビジュアルは【カンピオーネ!】と一緒なんだろうか。絵師が違うのでそのへん判断しにくい。
どうやらこの世界にはパンドラはおらず、エピメテウスとプロメテウスの兄弟もいないらしい。いや、居ないことはないのかもしれないけれどカンピオーネの後援者として動いた彼らは居ない、というべきか。しかし、それでも神殺しが誕生する仕組みじたいは存在し、実際にそれを成し遂げた「魔王」は史上に幾人か存在する、というようで。まあ【カンピオーネ!】の世界のように常時何人もの魔王が世界に君臨している、なんてわりとえげつない状況ではないみたいですね。あちらの世界のように頻繁にまつろわぬ神が降臨して暴れまわる、という怪獣映画の世界みたいなことになっていないからこそ、とも言えるのだけれども。それでも、神話世界と直結してその影響がもろにこっちの世界にまで波及してくる、なんていう異世界災害が勃発している、というだけでもまあ大概である。
果たして、どれくらい【カンピオーネ!】の世界が関係してるのかは一巻の段階ではよくわからないのだけれど。平行世界、というのは間違いないみたいだけれど。ってか、二巻で「侯爵」なる人物の登場が示唆されているのだけれど、もろにあのひとだよね!という状況ではあるのですが。
さて、今代の神殺しであるところの六波羅蓮くんである。自称平和主義者でありつつも色んな意味で「魔王」そのものであった草薙護堂氏に比べると非常に軽薄というくらいには軽妙としていて、それでいて強かな立ち回りとウィットに富んだ物言いで物事を飄々と捌いていく姿は、なかなか掴みどころのないキャラクターであると言える。ぶっちゃけチャラい。それでいて、妙に信のおける雰囲気を備えていて、これはこれで王様の領域にあるといえるのかもしれない。敢えていうなら、ジョン・プルートー・スミスのごとき粋人、というと傾向にそぐうものがあるかもしれない。或いはドニのような自由っぷりといべきか。そんな彼と、在る種の自信の塊、不遜なる婦人である鳥羽梨於奈とのコンビは妙な丁々発止が噛み合う面白いコンビであると言える。ステラの存在もいいアクセントになっているというべきか。決して仲良しトリオ、ではないあたりが尚更に。
そんな彼らが乗り込むのは、ギリシャ神話群の一端にあたるトロイア戦争の世界である。もろに神界に属する神様たちがたくさん出てきたり、英雄英傑の類がわんさかと出てくるあたりまさに神代そのもので、とにかく真正面からぶち当たってぶっ壊せばとりあえずなんとかなるし、なんとかならなくてもぶっ倒す、という塩梅だったカンピオーネ!と違って、こっちの蓮くんはそこまで無茶苦茶出来るような神殺し具合にはなっていないので、今ある力と人脈ならぬ神脈を駆使してうまいこと立ち回っていくことになる。それは、神話の物語の登場人物の一人となってあるべき物語の流れに介入していく、ということでもあり、ちょっとした神話に対する二次創作みたいな展開でもあるんですよね。今回も、トロイア戦争において英雄ヘクトールが討ち取られたあとの展開にもろに介入して、本来あるべき話の流れをひっくり返していくわけですから。
しかし、トロイア戦争。あのトロイの木馬の逸話のある神話、考えてみると大まかにしか知らなかったんだよなあ。子供の頃に、子供向けの大雑把な話を読んだくらいで。わりとちゃんと読むと、ギリシャの神々の無茶苦茶さと、ギリシャの英雄たちの蛮族っぷりがもろに見えてきてしまって、わははは、ってなもんである。まあ客観的に見てあのギリシャ神話群の話の内容っていろいろとアレだもんなあ。まあ神話って往々にして程度の差はあれ、アレなんだけれど。
それにしても、世界変わってもアテナは常に敵役なのか。あの女神様はどうにもこうにも男前すぎて、なかなか味方にし辛いのもあるのかもしれない。それに比べてステラのポンコツぷりときたら……。アフロちゃん呼びじゃなくてよかったね。

丈月城作品感想