昔勇者で今は骨 (電撃文庫)

【昔勇者で今は骨】 佐伯 庸介/白狼 電撃文庫

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勇者⇒骨にクラスチェンジ!?チート冒険者(※ただし骨)のお気楽冒険記!

骨になっても心は勇者な最強冒険者(※ただし骨)が往く!
お気楽異世界ファンタジー!!

世界を滅ぼす魔王との、最後の戦い。
どうしても負けられぬその戦いで瀕死の重症を負った勇者アルヴィスは、最後の手段・死霊術までも使って戦いきって……スケルトンになっちゃった!?
それから三年後。魔王討伐後の処理を仲間へ丸投げした勇者改めスケルトン・アルは、平和になった世界でニート生活をエンジョイしていたのだが……
『い・つ・ま・で・遊び惚けとんじゃアルヴィスー!』
――世界が彼を放っておくはずもなく。
魔王が倒された後の世界で、それでも助けを求めている人はいる。骨になっても心は勇者! コツコツ世界を救っちゃう(※骨だけに)、お気楽異世界ファンタジー!
おおおおっ!? なにこれ、面白いぞーー!!
この方、14年も前に電撃文庫からデビューしてた作家さんだったんですね。2015年にも一迅社から一冊出してみるみたいだけれど、そっちは読んでない。デビュー作は読書メーターによると読んでたみたいなんだけれど、まったく覚えてませんでした。現代異能モノがジャンルの華だった折のものなんだけれど、感想も書いてないっぽいなあ。
だがしかし、本作はというとこれがめちゃくちゃ面白かった! なんだろう、このでっかい樹の下で昼寝するような安心感、みたいな雰囲気は。物語の土台となる部分が凄く分厚くてしっかりしているのだけれど、それが重たい感じしなくて凄く大らかで包容力がある感じの厚さなんですよね。その上で、アンデット……スケルトンになれ果てたにも関わらずホネホネ生活を何気に心から楽しんでる勇者さまのお気楽さと勇者としての一本芯の通った格好良さが相まって、凄く心地の良い軽妙アットホームなヒーローものになっているのである。
だいたい、なんだかんだとスケルトンが冒険者登録出来てわりと周りから受け入れられてしまう大らかさがたまらない。お話も、魔王との決戦で最後の勝利をもぎ取るためにアンデットと化した勇者が、お役御免とそれから数年骨でニートな生活を満喫してたら、昔の仲間にいつまで遊んでんだーと怒られて、仕方なしに冒険者活動を再開し、なぜか向こうから飛び込んでくるトラブル、事件を正体を隠しながら解決してまわる世直しモノになっているのですが、勇者本人に悲壮感がまったくないどころか、本気で骨生活楽しんでいるせいか暗い雰囲気全然ないんですよね。その上、この勇者人間できてるし大人だし世慣れしてるしで、骨となって勇者の頃より力は半減しているそうなのだけれど、そういうの関係なしに頼もしいのです。頼れる骨なのです。面倒見も良いし、下手な対応打たないし、余計なことは言わないくせにトーク力は有り余るほどあるし。現役勇者だったころも、カリスマがあるって感じではないけれど、凄く人から好かれて慕われ懐かれるタイプの人だったんだろうなあ、というのが伺えます。孤児となってしまった幼い娘との疑似家族生活、スケルトンによるホネホネ子育て編とか、胸がほんわかするような良い話でした。
とまあ、勇者本人の明るい性格もあって、本編は概ねコミカルに進んでいくのですけれど、何気に彼が巻き込まれる事件って客観的に見るとかなり深刻だったり救いがなかったりシリアスな案件ばっかりなんですよね。何気に世界の危機、に至るような話もありましたし。それでいて、鬱々とした展開にならないのはひとえに勇者のキャラクターなんですよね。本当に大した人物だ。
でも、これだけ完成された人物であっても、やはりアンデットと化したことには思うこともあり、自分の存在意義、この世に在り続けることへの不安感みたいなものからは逃れられなかったわけで、自分の行く末、或いは身の処し方についても考えることはあったんでしょう。数年に渡って墓所に引きこもって他のアンデットたちとゲーム三昧遊んでたのも、決してニート生活楽しんでただけじゃないんでしょうし。
しかし、そんな彼の悩みについてもこの新しい旅の先での出会いや交流から生まれたもの、そしてある事件でヒロインの一人が与えてくれた言葉が彼を吹っ切らせるのである。その意味でも、彼は既に完成して完結しているのではなく、スケルトンになってもアンデットと化しても人としてまだまだ成長してるんですよね。人に何かを与えられる人間であると同時に、人から与えられたものを受け取り糧に出来る人物である、という意味でやっぱりパーフェクトだよなあ、この骨勇者。
彼の旅の目的である、失踪した仲間、彼をアンデットにした死霊術師の探索はまだ手がかりもない状態だけれど、次はその仲間の話になるのかな。ある意味、出会う前に勇者は自分のアンデット化について一つの答えを得たわけだけれど、相手の仲間の娘が何を思って失踪したのかがわからないだけに、それが吉と出るか凶と出るか。いずれにしても、どんな話になるか凄く楽しみである。いやもうほんと面白かったので、楽しみである!