ジャッジメント/ブラッド 真祖の帰還 (ファンタジア文庫)

【ジャッジメント/ブラッド 真祖の帰還】 長谷部 雄平/ビョルチ 富士見ファンタジア文庫

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「貴様ら、それでも吸血鬼としての自覚はあるのか?」
吸血鬼が表舞台を闊歩する近未来。対吸血鬼組織『血戦局』所属の新宮伊吹はある日、吸血鬼真祖のスカウトという前代未聞の密命を下される。死を覚悟し交渉に臨む伊吹だったが…
「我らが血戦局に加入して欲しい」
「いいぞ」
真祖ヴィクトリアは勧誘を快諾!?しかし抑止力として招かれたはずの彼女は、乱れた現代の吸血鬼事情に憤慨。不良を矯正し、眷属からの喧嘩を買い、ときには吸血鬼アニメにハマったりもしつつ、気づけばヴィクトリアの行動が誰よりも世界を騒がせていて!?原点にして頂点たる吸血鬼の、風紀粛正バトルアクション!
吸血鬼は吸血鬼らしく。オールドファッションしか認めん。伝統格式が至上。完成された吸血鬼像に革新は必要なし。新しい吸血鬼像はすなわち風紀の乱れである。しからば、風紀委員長を標榜して、吸血鬼の綱紀粛正に打って出ん。
いやこれ、言ってること完全に頭の固い時代遅れの老害なんですけど。そりゃあ、チャラチャラした吸血鬼の能力やらの上っ面だけを掠め取った吸血鬼の誇りも不死者としての威厳も何もなく、人間の枠をまったく逸脱出来ていない半端者に対して舐めとんのかー、と怒るのはわからなくもないのだけれど、旧弊に囚われずに新しい吸血鬼像を模索して常に進化を、スキルアップを、発展と革新を! と踏ん張ってる子らに、頭ごなしに「新しいものはみとめーーん!!」と押さえつけてたら、そりゃ反発されるわなあ、と。普通、こういうキャラってむしろ敵サイドに収まるタイプ何じゃないかと思う所なのだけれど、ヴィクトリア女史、平然と人間の対吸血鬼組織に胡座をかいてふんぞり返って、やったるぜーてなもんである。味方なのである。というかもう彼女が主人公じゃないのかしらこれ。伊吹くんはなんか狂言回しみたいな立ち回りで、吸血鬼マニアなのをいいことにヴィクトリアのやりたい放題を抑えるどころかむしろ煽り立てて最前席でご観覧、てなものですからね。何が一番よくわからんって、この伊吹くんの何考えてるかわからん感が一番わからんのです。いや、単純に吸血鬼のいかにも吸血鬼らしい振る舞いを舐め回すように堪能したいという、ひたすら趣味に走っているだけなんでしょうけれど、こういう自分の思う通り好きなようにやりたいようにやりますよ、なんて連中を組ませたら、しかも息ぴったりでお互い止めるどころか背中を押すような関係になってしまったら、そりゃその上にとばっちりが行きますわなあ。
わりと部下振り回してやりたい放題やってそうなキャラである司令の平逆ちゃんが、作中で一番苦労背負い込んで、疲労と寝不足で女の子としてひどい顔に成り果ててるあたり、メイン二人の酷さが伺えるというものである。
なんかもう、敵である燦ちゃんの方が吸血鬼的に言ってることまともなんかじゃないか、と思うくらいに。まあ、言ってることはともかくやってることは大いに犯罪なので、粛清待ったなしなのですけれど。
ヴィクトリアの推進する古典主義管理規制社会は、吸血鬼的にはもろにディストピアっぽいのだけれど、吸血鬼に世界的に、社会的に、人種的に制圧されそうになってる人間サイドからすると、吸血鬼にとってのディストピアは人類平和に繋がるんですかねえ。アイロニーがきいている、というほどでもないけれど。