それでも異能兵器はラブコメがしたい (角川スニーカー文庫)

【それでも異能兵器はラブコメがしたい】 カミツキレイニー/切符 角川スニーカー文庫

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異能兵器”である彼女の願いは、ラブコメのような学園生活!?

俺・辰巳千樫は、クラスメートの市ヶ谷すずが好きだ。ラブコメに憧れる、引っ込み思案な不思議系女子。
そんなかわいい彼女との、待ちに待ったデート当日――この関係は始まった。
突然ビルは崩れ、降り注ぐ銃弾の中で、無傷のままの少女。
「……怖がらせてごめんね。私は、異能兵器だよ」
すずを狙ったテロに巻き込まれ死んだ俺は、復興庁終末局によって生き返り、“異能兵器(カノジョ)”が願う“ラブコメのような学園生活”を演出する《お友だち係》に任命され!?

たとえ何度死んでも、世界を敵に回しても――大好きなこの子とデートする。
新世代学園アクションラブコメ、開幕!!
ラティメリアタウンとか、なぜそんな名前つけたし!? そんなんトラブル見舞われるに決まってるからでし!
他にも縁切りに沖縄のユタが関わっていたりと、作者の他作品の要素がチラチラと散見されるんですよね。あくまでチラ見せで直接登場ではないのですけれど。世界観も別に繋がっているわけではなさそうですし。しかし、あそこまで強力な縁切りは十分異能の類だと思うんだけれどいったいどこから異能兵器扱いになるんだろう。
さて、最終兵器彼女である。改造じゃなく天然モノという違いはあるけれど。ってかそれ以前にカノジョじゃないんだけれど。
それを用いての戦争が起こっておらず、ある程度の抑止力として機能しているという意味では、戦略兵器として十分機能しているわけだが、そこまで絶対的な力があるのかな。
不意打ちだろうと奇襲は効いてますし殺そうと思うなら容易に殺せそうではある。とはいえ、前提として異能兵器の存在がそのまま国力や国際的な地位に繋がるという設定があるのでそこを問うても仕方無いのである。ってか、千樫くんに付与された再生力の方が実際ヤバイんじゃないですか、あれ? リミットが在るとはいえ、頭吹っ飛んでも瞬時に再生して意識も記憶も飛ばずに連続稼働出来るとか、どんだけ最強の不死身兵士なんですか。それ研究しろよ、研究。量産型異能兵器いけるじゃん。むしろ、他国はQを攫えよ、それか殺っちゃえ!
と、思わず殺意がほとばしるほどには、Qさん外道です。人でなしです。普通に人間のクズです。国のため、とかうそぶいているけれど、その手の信念を持っているようにも思えず、そもそも罪悪感の類を抱いている様子もなく、単なる免罪符として振りかざしているだけで絶対にあれ個人の性格だよね。
そしてそもそも、これラブコメじゃないですよね!
ラブコメがしたい! という希望は出されていらっしゃいますが、それが叶っているとは言えないですよね。ラブコメとは、ラブなコメディなんですよ。どこにコメディ要素がありますか? 主人公の頭がポンポンふっとばされるのはギャグじゃないはず。多分。

その体を張った、文字通り生命を費やしての懸命さは、異能兵器の少女たちの心を鷲掴みにする、という意味ではちゃんと女の子連中にモテてはいるけれど、コメディ分が圧倒的にたりない! ってか無い!
 むしろ、ひたすらに異能兵器として国同士のパワーゲームの渦中に放り込まれてなお、日常生活へ戻りたいと願いながら、しかし果たせず銃弾と殺意の飛び交う戦場と化した街の中で、互いに口に出すことも態度に見せることもせずに、想い合う少年と少女の悲痛なるピュアラブストーリー、というそっち方向への直球勝負じゃないですか。
ああ、そうか。もしかしたら、ラブコメは敢えて誰が誰に恋している、という事実を明示しなくても成り立つんじゃないだろうか。誰かへの恋心を秘密にしたままでも、心に秘めたままにしていても、男の子と女の子が居て一緒にドタバタ笑っていたら、そこからラブコメは発生してもおかしくない。
すずは、自分が本当は誰が好きなのかを明らかにしなくても始めることの出来るラブコメを、そして場合によっては決着がつかないままなあなあで終わることの出来るラブコメを、だからこそ望んだ、という向きもあるのかもしれない。本当の恋物語でもラブストーリーでもなく、ラブコメを。
でも、これだと。この終わり方だと悲恋になってしまうじゃないか。それで満足したら、悲しいラブコメなんていうありえないものになってしまうじゃないですか。
これを本当にラブコメにするのなら、したいのなら、千樫は腹を決めなければならない。まあ、この男、まったくもって最初から、決めるべき腹は決まりっぱなしなのだけれど。次巻に乞うご期待、てなもんだ。

カミツキレイニー作品感想