ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット2 (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 2】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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《SAOサバイバー》にして、VRMMO《アスカ・エンパイア》内で《探偵業》を営むクレーヴェル。
そんな彼の前に、クエストで新規実装された《鬼動傀儡・鬼姫》にうり二つの少女が現れる。
彼女――マヒロから、“現実世界で行方不明になった父親探し”の依頼を受けたクレーヴェルは、
助手(?)の戦巫女・ナユタ、忍者・コヨミとともに、事件の鍵が眠る《アスカ・エンパイア》へとダイブする!
他にも前代未聞、仮想空間内での温泉旅行が描かれる『骨休 旅籠夜話』と、
大カピバラ祭が展開する《茶番劇 化鼠之宴》など、《アスカ・エンパイア》での様々なクエストを収録!
その傍らで、クレーヴェルとナユタの距離も少しづつ縮まっていき――?
少しずつどころか、ナユさんめっさグイグイ距離潰してきてるんですけど! それも、本人全然自覚なさそうなのがなんとも壮絶ですらある。そりゃクレーヴェルも焦るわなあ、世間体的にも。
どう見ても、ナユさん通い妻ですやん!!
いやもう、いつの間にそんな事になってたの!? というくらいにスルリと暮井さんの部屋に来て晩御飯作って一緒に食べるようになってたし。これ、クレーヴェルもいつの間に!? てな感じなんだろうなあ。気がつくと、にっちもさっちもいかないところまで来ていたような感じで。
それで必死に男女関係、女子高生、未成年である彼女と成年男子である自分とはちゃんと一定の距離感を置いて接するべきだ、と力説してナユさんに自覚を促せば促すほど、ナユさん意地になっちゃってるし。
そりゃあナユさんからしたら、自分が女子高生というだけであそこまで警戒され、世間という周りばかりを気にして自分の方はまったく見ずに線を引こうとされたら、自分のこと信用されてないみたいで面白くはないですよねえ。社会人として、暮井さんの警戒っぷりは決して間違えてはいないんだろうけれど、あそこまでの過剰反応は確かにナユさんに対して多少無神経なところはあったかなあ、と暮井さん本人も反省していたところですけれど。
でも、ナユさんのあの無自覚な無防備っぷりも結構問題ですよね!
それだけ、ナユさんが暮井さんを無条件に信頼している、という証であると同時に、自分の容姿や色気が未成熟な女子高生の範疇では収まらないヤバイものだ、という自覚が一切ないのがまずい。コヨミほどガキっぽかったら全然問題なかったんだろうけど! なんでコヨミの方が実年齢が酒飲める社会人なのか不思議なほどである。逆だろう!?
いずれにしても、ナユさんのあの無警戒無防備さは、在る種の理性への暴力だよね!
そして、なぜかナユさん相手だとラッキースケベにも対応してしまうクレーヴェルの幸運値。ゲームの仕様じゃないとしたら、クレーヴェルのリアルラックということになってしまうじゃないか!
これもう、元警察官で理性の信奉者であるクレーヴェルじゃなけりゃ、早々にえらいことになってしまったんじゃないだろうか。まあ、そうならないからこそ、ナユさん信頼していて、だからこそああまで無警戒、という悪循環があるのですが。なにこの地獄の往還?
これでナユさんの方に下心の類とかちゃんとした恋情みたいなものがあるなら、クレーヴェルの性格からしてもうちょっとはっきりした態度取れそうなんですよね。きっぱりと線引できるタイプですし。にも関わらず、そのクレーヴェルが対処のしようもなくスルリと懐に潜り込まれてしまっている時点で、ナユさんの無心ぶりがわかろうというものである。
恐るべき事に、ナユさんこの調子だとまったく今のまんまの流れでそのまま、どうせなら同居してしまった方がよさそうですね、という感じでフラットにいつの間にか完全に生活空間を重ねてしまいそうな雰囲気なんですよね。女子高生、女子高生はだめ! と抵抗しているクレーヴェルですけれど、その文言、肝心のナユさんが高校卒業しちゃったらまったく通用しなくなるんだけれど、そのへんわかってるんだろうか。誰に通用しなくなるか、というとまず真っ先に自分に。
まあクレーヴェルが本当にナユタを拒絶しきれないのは、一時期本当に危険域にあった彼女の孤独に対する忌避感を理解しているから、というのもあるのでしょう。シミュレーターで作り出していた事故で喪われた家族との生活の再現、それにのめり込んでいたナユタがようやく家族の幻影と距離を置いて現実への比重を取り戻したものの、そこで向き合うのは家族のいないたった一人という状況。
彼女が暮井さんの部屋に来て、料理を作って一緒に食べる、という行為に地味にこだわっているのは、独りへの忌避感が少なからずあるのでしょう。彼女の事情を詳しく知っているであろう暮井さんからすれば、戦友であり親友であった男の妹であり、彼女が心的外傷を負った原因であり発端となった彼女の兄の死に深く関わった身の上としては、やはり見過ごせないものがあったはずですし。
まあ、現状では見事に餌付けされてしまった、以外の何者でもなくなっているようですが。
これもう暮井さん、抵抗のしようがどこにも見つからないな! 

お話の方はクレーヴェルのコンサルタント業関係で、MMOの開発事情、テストプレイでのあれこれに、突発イベントと短編としての日常的なエピソードが続いたところで、それぞれの話の中に埋め込まれていた種が、クレーヴェルのリアルの探偵業の方へと持ち込まれた、一人の子役アイドルの依頼によって芽吹き、一連の物語の中にあった真実が浮かび上がる、という派手ではないものの妙のある構成で、なんだかんだと読みごたえあったなあ、と。
アスカ・エンパイアを遊ぶ、というよりも開発陣が身近にいることや、今回裏事情や本命の事件もそっち関係に片足突っ込んだ話だっただけに、あと仕様変更にまつわる関係者の呪詛がおどろおどろしいものだっただけに、なんか開発四方山話的な雰囲気も。
まあクレーヴェルやナユタ、コヨミは近しくても開発の外側の人間ですし、関わることが多くてもそっち側ではなくプレイヤーサイドであるだけに、大変だねえ、という他人事めいた一定の距離感があって、そこらへんがまた面白くあるのですけれど。

次の巻では、いつの間にか暮井さんのところにナユさんの生活用具とか着替えが当たり前のように備え付けてあっても驚かない。既に食器の類いはありそうだし!
一巻時点では確かコヨミの方が先に同居の勧誘してたはずなんだが、まんまとネトラレましたなコヨミさん。

1巻感想