魔術破りのリベンジ・マギア 3.はぐれ陰陽師の越境魔術 (HJ文庫)

【魔術破りのリベンジ・マギア 3.はぐれ陰陽師の越境魔術】 子子子子 子子子/伊吹のつ HJ文庫

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ドイツから戻る晴栄のもとに、学園長と陰陽寮から共同の依頼が舞い込む。
アイルランドの暁星学園で起きた殺人事件の容疑者として陰陽師が捕らえられたので、その真相究明に向かえというのだ。
嫌な予感を覚えつつも、囚われた少女と対面する晴栄だったが……
「な……なんであんたがここにいるのよ!? 土御門、晴栄ァーッ!」
そこにいたのは幼少期の晴栄と因縁深い少女、蘆屋 露花だった!
陰陽術×アブラメリン術式、ハイブリッド魔術を使う幼馴染を救い出せ!ハイエンド魔術バトルアクション第三弾!
アイルランドとはまた渋いところに行くんだなあ。ってか、このまま巻ごとに世界各地の魔術学園を巡回していくのでしょうか。ラストの展開からして一度、セイレムに戻りそうな感じではあるけれど。
しかし、相変わらず魔術関係についてはよく練られて考察されている。陰陽術とアブラメイン術式とのハイブリッドって、適当にくっつけりゃいいってなもんでもないはずでしょうに、種類の違うジグソーパズルを上手く合体させたような合致感が垣間見える。
イェイツ学長のオリジナルの魔術もそうなんですよね。アイルランドの民間伝承に本来の詩人ウィリアム・バトラー・イェイツとしてのそれをアレンジした魔術。ってか、彼やアイルランドのジャンヌ・ダルクと呼ばれたモード・ゴンなんかについては、もっと薀蓄として話を盛り込んでも良かったんじゃないかな。本邦での知名度に関しては殆ど無いに等しいと思われますし、彼とモード・ゴンとのラブストーリーがどれほど情熱的で情緒的で魂の接続を感じさせるものであるかがわからなければ、その娘イズールトのIFストーリーである本作におけるイェイツとイズールトの関係の深み、イズールトの抱く闇とも光ともつかない代替物としての恍惚の衝撃がなかなか伝わらないでしょうからね。作中でも、モードへのイェイツの求愛については頻繁に書かれていましたけれど、惜しむらくは彼らがサブキャラクターであったことか、早々比重として割けないものでもあってかそこまで深く掘り下げて描けなかったみたいですしね。
そもそも、彼らが史実の人物であるとか、後書き読むまで思いもしませんでしたし。
今回のメインとなる露花の苦悩と苦痛に満ちた人生。追い落とされ、彷徨いながらそれでも手が届かなかったものへの無力感を受け入れず、逆に撥条として努力して頑張って積み上げてきたものを、かつて憧れたその人に認められる。彼女の過去回想からラストの展開に至る露花の弱さを積み重ねて強さを手に入れた女の凛とした姿は、実に格好良かったです。まあそれだけに、登場当初の型にはめたようなテンプレート以上でも以下でもない露花のキャラ描写は如何なものか、と思わないでもないんですけどね。あんな薄っぺらな台本棒読みするみたいなセリフや反応じゃない、蘆屋 露花という少女の過去と現在を踏まえたに相応しい再会から事件解決までのキャラクター描写が出来なかったものかしら。
後半が熱いだけに、導入から前半にかけての退屈なそれが惜しまれます。

1巻 2巻感想