ストライク・ザ・ブラッド APPEND1 人形師の遺産 (電撃文庫)

【ストライク・ザ・ブラッド APPEND 1.人形師の遺産】 三雲 岳斗/マニャ子 電撃文庫

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絃神島の存亡をかけた殲教師オイスタッハとの死闘を経て、古城に命を救われた眷獣共生型人工生命実験体アスタルテ。しかしアスタルテが手に入れた第四真祖の魔力を狙って、彼女の生みの親である人形師ザカリーが動き出す。人形師の最高傑作である殺人人形スワニルダの脅威が迫る中、古城は、吸血鬼だけが発症する奇病、吸血鬼風邪に感染して寝込んでいた。ここぞとばかりに張り切って彼を看病する雪菜だが…!一方、獅子王機関の任務で独自に人形師の足取りを追っていた紗矢華は、研究所の跡地で予想外の強敵と遭遇する!シリーズ初の番外篇。四つの短篇が紡ぐもう一つの「聖者の右腕」の物語!
スワニルダって懐かしいなあ。大昔書いてたSSのネタで使ったっけ。自動人形コッペリアのバレエ作品に出てくる人間の少女がスワニルダなんですよね。人形のコッペリアになりすまして、コッペリアに懸想する恋人を取り戻す少女。図らずも人間と人形の境界を行き来して人として戻ってくることになるスワニルダ、それを本作ではアスタルテと違って永遠になれなかった人形、人の心を得られなかったモノ、人形から逸脱してしかし人形以外に成れなかったモノとして描くのは、ずいぶんと皮肉な話であるか、それともある種のメタファーなのか。
最初、何も情報を得ずに読み始めたので新シリーズか第二部なのか、と思ってたら作中の時系列的に第一巻の直後で、??となったんですが、ブルーレイの特典小説を取りまとめたものだったんですね、なるほど。
オイスタッハとか、また懐かしい名前だなあ、と感慨深く思ったりもしたのですが、この頃はまだ古城くんと雪菜の仲も出会ったばかりでぎこちなかったんだろうなあ、なんてことも思い巡らしたりもしたのですが……うん、あんまり今と変わってないな!
最初からわりとこんなベタベタでしたかね!? いやまあ、最初から凄まじいまでの正妻感出してたなあ、そう言えば。正妻系ヒロインとして業界でもナンバーワンでしたしね。
むしろ変遷として興味深いのはアスタルテの方なんですよね。那月ちゃんに保護されたあと本編ではいつの間にか普通に馴染んでいたアスタルテですけれど、人形に過ぎない自分に対する古城君、だけではなく浅葱たちが親身になって接してくれる事に、静かに心動かしていく様子が描かれていて、ああこの子なりにもこの絃神島での生活で思うところあったんだなあ、と。
そんな彼女と対照的に主人から捨てられ存在意義を見失い、人でも人形でもなくなってしまいながら自分の在り様を乞い求めたスワニルダの末路。アスタルテの可能性の一つとも言える彼女の顛末を目のあたりにするからこそ、アスタルテにはちゃんと幸せになって欲しいものです。現状で既に幸せ満了な気もしますけれど。
それにしても、絃神島の警備の人たちは毎回毎回あんだけやられて、大丈夫なんだろうか。事件が起こるたびに壊滅している気がするのだけれど、よくよく見るとどれだけ凄まじい攻撃でやられても辛うじて死んでいないんですよね。なんで死んでないんだよ!? という状況でもしぶとく生き残ってるあたり、彼ら下手な吸血鬼より生存能力高いんじゃないだろうか。重傷負っても突出した医療技術によって早期に復帰しているみたいだし。でも、いい加減心折られそうな気もするんだけれど、ちゃんと危険手当、傷害手当もらってるんだろうか。
戦闘シーンとして一番見所あったのは何はともあれ、那月ちゃんとチョロいさんの不期遭遇戦でしょう。お互い正体を知らないまま敵勢力と勘違いしての攻防でしたけれど、那月ちゃんに追いまくられてたとは言え、最後までほぼ互角に食い下がってみせた煌坂って、戦闘に関してはマジで作中でもトップクラスなんだな、と感心しました。あまりにも中身がポンコツすぎて、随分と舐められてますけれど、やるときはやるんだよなあ。いやもうなんでこれだけ出来る人なのに中身これなんだろう、とむしろため息が出てしまうのですけれど。
次回も特典小説の連作集となるみたいで、しばらくはこういう過去の幕間劇が続くのでしょうか。久しく出番ない人の登場機会も増えるので、悪くはないのですけれど本編の続きが早くみたいのも本当なので、待ってます。

シリーズ感想