ロクでなし魔術講師と禁忌教典9 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 9】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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先の戦いから行方をくらましていた宿敵、ジャティス=ロウファン。彼の策略により、ルミアは誘拐され、さらにはフェジテ市庁舎爆破テロの容疑者として、グレンは指名手配を受けてしまい…
「先生!私も先生の力になりたいんです…!」
相棒として着実に成長しつつあるシスティーナ。彼女の助力のもと、事件解決にあたるべく、グレンはフェジテの街を駆け回るのだが、直面したのは存在しえない、かつての強敵で―街ひとつをまるごと崩壊する術式・“メギドの火”をめぐり、フェジテに集結する天の智慧研究会、宮廷魔導士団。それぞれの思惑が交錯し、フェジテ最悪の三日間の幕が開く!
ああ、これはなあ。白猫……システィーナってこの子、どれだけ強くなっても根本的なところで荒事向いていないんだ。能力的にもメキメキ上達してるし、精神的にも土壇場で踏みとどまれる根性がある。それでも、これだけ修羅場を何度もくぐっているにも関わらず、ピンチになるとペキッと心折れちゃう脆さはこれはもう鍛えられない部分なんじゃないだろうか。最後の最後で踏ん張ってみせたとはいえ、毎度毎度こんな感じで疲弊してたらいずれ持たなくなるのは目に見えている。その意味でも、システィーナはどれだけ強くなっても戦いに向いていない一般人というカテゴリーでの役割を得る時期に入っているという事なのだろうか。
ルミアがどんどんアンダーグラウンドサイドへと押しやられているからこそ、白猫が日向の場所を確保し続ける意味が生じてくるのだろう。白猫もそっちへと追いかけていくのは、今回の一件を見る限り厳しそうだもんなあ。彼女はどう転んでも異常者の枠には入れない。
その意味では、イヴ=イグナイトはシスティーナの在り得た未来、とも考えられるんですよね。セラを見殺しにした一件、どうやら裏がありそうというのが今回の話から伝わってきたのだけれど、手柄への執着の理由といい、セラを見殺しにした事への精神的ダメージといい、なにげにこの人、システィーナと同じレベルでこういうダーティーな仕事向いてなかったんじゃなかろうか。それが、本来向いてなかった分野を突き進んでしまった結果がこれなのではないか、と。何気にシスティーナがそんなイヴに自分の理想の将来像を垣間見て、強い憧れを抱いてしまった、というのは皮肉な話でもあり、懸念を感じるところでもあるんですよね。
白猫、凝りてないんだろうか。実際、一流の魔術師を一人で退けてみせた、というのは見事なものだし、この子の強さはあれがフロックではなく、今後も負けない戦いが出来るかもしれないくらいのものだとは思うんだけれど……それでも心が持たんと思うんだよなあ。

ともあれ、ついにタイトルにもある禁忌教典に踏み込んいく話となり、大きく展開が動きました。
ジャスティスが単独にも関わらず凄まじい存在感と蜘蛛の巣めいた手の広さを持つので、三つ巴の争いにも十分厚みが感じられるんですよね。最後までジャスティスの目論見が読めなかったところも含めて。
ここまで来ると、ルミアも元の生活には簡単には戻れなくなっただろうし、さてどう転がっていくのか。

シリーズ感想