GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ (角川文庫)

【GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ】 大樹 連司(角川文庫)

Amazon
Kindle B☆W

怪獣に蹂躙されるがままだった人類は2039年のオペレーション・エターナルライトでヨーロッパを奪還、つかの間の勝利に酔いしれた。しかし2042年にゴジラが再び姿を現し、更なる絶望の日々が始まる。星をも砕くゴジラの力に対抗しうるのは、異星のテクノロジーによって開発された巨大兵器“メカゴジラ”のみ。果たして決戦の行方は!?―アニメ映画版GODZILLAの知られざる前史を描く渾身の小説版第2弾!
ハルオの両親、あの空港でのゴジラ襲来で死んだんじゃなかったんだ!!
劇場版で描かれた搭乗ゲートに向かうバスの車列が吹き飛ばされたあのシーンで、小説第一弾でインタビュアーとして報告書を執筆していた、ということになっているアキラ・サカキ調査官とその奥さんであるハルカ・サカキ戦車将校は死んだ、とハルオも彼を引率していた谷軍曹も思ってたし、実際劇場版ではハルオは両親の仇としてゴジラを強く憎むことが行動の原動力となっていたわけですが、そもそも道中のトラブルであの空港の現場に居なかったらしく、その後も二人地球連合の数少ない将校として重要なポディションについていくことになるようで。
それについては後述するとして、地球が辿った歴史。オペレーション・エターナルライトによる欧州奪還からいったい何があったのか。年表では大雑把にその後の重要な作戦とその顛末が書いてあったのだけれど、さらに詳しく当時現場の居た人間からの聞き取り調査、インタビューの内容をまとめたノンフィクション風インタビュー集が本作である。
一作目を読んだ時、そして劇場版を見てまず疑問に感じた点が、どうして地球を脱出して恒星間移民船によってわざわざ他の星系まで逃げなければならなかったのか、というところだったんですよね。
当てのない超々期間の旅に出るくらいなら、月面にでも都市作った方が安全だし確実だし救助できる人間の数も比べ物にならないんじゃないか、と誰もが思ったことでしょう。
それに対する答えが、ちゃんと容易されていたんですよ。

一応、ネタバレにもなるからこれ以降は収納しておきます。










そもそも、なんで太陽系内の他の惑星への移住ではなく、一足飛びに恒星間移民にプロジェクトが移行し、地球連合のリソースの殆どをそこにつぎ込む羽目になったのか。
そこには「妖星ゴラス」の脅威の存在があったのである!!
往年の名作特撮SF映画「妖星ゴラス」の内容はご存知だろうか。「アルマゲドン」に先んじた昭和日本映画界の創作した小惑星が地球に激突する危機を描いたスペクタル映画なんですよね。それも、小惑星自体が地球へ誘導コースを取って曲がってくる、という謎の軌道を取った上に爆破不能の質量を持っていた、と。ここで地球側が選んだ地球滅亡の方法は、まさかの「地球移動計画」! 南極で巨大なロケット推進装置を作って、地球そのものを動かして妖星ゴラスを避けるのだ!! というとんでもねースケールの内容なんですね。映画妖星ゴラスでは、冷戦の枠を超えて米ソ東西陣営も協力しあって地球一丸となって計画推進するのですが、この「GODZILLA」の世界では怪獣災害での疲弊にゴジラの存在も在り、とてもじゃないけれどそんな計画を遂行する余裕はなし。
もはや地球滅亡を避ける方法は無し、というところまで追い詰められてたんですね。そこで、恒星間移民計画の誕生である。
確かに、これはもう月面に都市作っても地球が破壊されてしまったら、月なんてどうなるかわからないし、近所の惑星も同様ですもんね。わからなくはない。
しかし、そんな地球滅亡待ったなしの絶望を打ち砕いたのは、皮肉にもゴジラだったわけです。
映画妖星ゴラスの地球移動計画が「南極計画」と呼称されたのに合わせたのでしょう。北極海深くに鎮座したゴジラから、北極の氷を溶かしきるほどの放射熱を発しながら放たれた熱線が大気圏を突破し、地球に迫る妖星ゴラスを一撃で吹き飛ばしてしまったのである!!
どんだけーー!!
このときの地球連合の面々の衝撃たるや想像にあまりあります。人類滅亡地球崩壊から救われたのと同時に、ゴジラの攻撃が地球圏内にまったく留まらないことがわかってしまったんですからねえ。
ゴジラ、その気になったら月だろうと火星だろうと、ぶっ放して来るんじゃね?
そりゃ、月面基地とか考えられないですわ。火星ですらヤベえ、となったらそりゃ太陽系脱出を考えてしまいますわ。
これ以降の人類全体の狂騒を考えると、まだ怪獣災害にパニクってた第一巻の頃の人類はまだ冷静さを保ってた、というのが伝わってくるんですよね。妖星ゴラス以降の人類はもう狂っている、としか思えない様相を呈してくる。
ヒマラヤ山脈全部を倒壊させて、ゴジラを閉じ込めようというオペレーション・グレートウォール。これはもう地球の自然環境やこれまでの人間の歴史や文化というものを完全に犠牲にしても構わない、という一線を越えたものになってしまってるんですよね。
そして、ビルサルドが総力を上げて作り上げようとしている決戦兵器メカゴジラ。ゴジラに唯一勝てる、とされたこの兵器。これが完成し起動するまでの時間を稼ぐために、人類はもう「人類そのもの」をリソースとして注ぎ込み出すのである。指導者層だけじゃなく、末端の一兵士から一般市民に至るまで、人類全体がゴジラの侵攻を食い止めるために生命を費やしていく、という狂った状況。

劇場版で登場した、あのエアバイク。あれもこの過程で生まれてるんですよね。一応ビルサルドの技術を使っているらしいけど、あんな戦闘機ですらない運転者が剥き出しの乗り物が攻撃兵器として使われるのって、なんなの!? と思ってたんだけれど、ちゃんとそこに至る過程はあったんですねえ。それも、メカゴジラの製作に絡んでしまうのだけれど、宇宙人の技術を用いて一気に進んだ装備体型を、いざビルサルドの支援体制が滞ったときに全く維持も出来ず、以前の装備体型に戻すことも出来なかった結果がアレだったんですねえ。A-10を寄越せ!! という現場の魂の叫びには思わず涙が。
やっぱり、あのバイク、当時から「自殺バイク」とか呼ばれてたんだ。そうだよなあ。

そして、末期戦、絶望的な遅延戦闘を繰り広げる地球連合軍の最後の希望となったのが、まさかの「ガイガン」というのがまたクるんですよねえ。ビルサルドに改造され、メカゴジラの実験素体としても使われつつ、ゴジラの前に立たされ、その度にボロボロに敗れ去り、体の一部を欠損し、その度に改造を受けて機械化されていくガイガン。それでも、身を張って貴重な時間を稼いでくれるガイガンに、現場の兵士たちは親愛と敬意と共感をいだき、ついにはガイガンを助けるために誰の命令でもなく皆が銃を手にとって、ゴジラの前に軍が立ちふさがる展開とか、もうねえ……。

一巻の段階では善き隣人、地球の救世主という扱いだったエクシフ人、ビルサルド人も、やはり人類とはどこか異なる価値観、裏の顔がありそうという姿が見えてきて、不穏さも増して来てるんですよねえ。
あいつら、やっぱりやべえ連中だったか。ただ、個人個人では考え方の違いとか人品の差もありそうですし、一人ひとりにスポットをあてると一概に言えないようなのですが。

そして、やはり存在した人間に有効的な、人を守護してくれる怪獣の存在。ゴジラに伍するほどの力を持った守護神。モスラは居たんだ。
とは言え、一巻の段階ではその存在がいると目されていたのは南米だっただけに、劇場版ではなぜ対ゴジラ戦の舞台となった日本にそのモスラの庇護下にいるっぽい残留地球人が居たのか、という疑問点があったのですが、それも本作のラストに明らかにされてるのである。
恒星間移民船が旅立ち、残された地球連合最後の戦力が未来への希望に託した最後の作戦。地球に残された滅びゆく人類を守るために、そして、いずれ帰ってくるだろう旅立った同胞たちの末裔たちを迎えるために、オペレーション・クレイドルが発動する。

いやあ、やっぱり面白かった。めちゃくちゃ面白かった。
壮大な怪獣譚、いや地球滅亡史、それとも人類の死闘を語るノンフィクションドラマというべきか。劇場版とはまた別に、この前史も映像化しないものだろうか。

1巻感想