デート・ア・ライブ18 澪ゲームオーバー (ファンタジア文庫)

【デート・ア・ライブ 18.澪ゲームオーバー】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

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「ねえ…今度こそ、ずっと一緒だよ、シン」
五河士道の前に、ついに姿を現した始原の精霊―祟宮澪。人類史における最大最悪の災厄。最強の精霊を止めるべく、十香たちは、戦いを挑むのだが…。澪の圧倒的な力によって、ひとり、またひとりと倒されていき…。絶望が戦場を支配する中、士道もまた精霊を巡る争いの元凶、ウェストコットと対峙する。ぶつかり合う純粋な想い。交錯する過去と未来。微かな希望を掴むため、終わりの始まりの戦争を始めましょう。
物凄いことになってきた。物凄い話になってきた。
【デート・ア・ライブ】とは、まさにこのために、これを描くための話だったのだ。物語だったのだ!!
最初からこんな壮大極まるシナリオを想定して構築されてたというのは、とてつもない事なんじゃなかろうか。
ただ独りの愛する人を救うために、その女は世界を狂わせ、友を殺し、すべての罪を背負うことを選択した。それはさながら、世界を救うために愛する人たちを殺し尽くしてきた時崎狂三と表裏であり、そんな彼女を生み出してしまった元凶である、というのは皮肉にも程があるんじゃなかろうか。
正直、士道が秘めていたものがこれほどのスケールを背負ったものだったとは思わなかったんですよね。五河士道とは何者なのか、というのはこのシリーズを通じての謎でもあったのですが、崇宮真那という実妹の存在がその謎に拍車をかけてたんですよね。士道一人ならその由来はどこからでもでっち上げられるのだけれど、真那の存在が幾つもの齟齬を生み、単純な推測ではどうにも処理できない複雑な様相を呈していたわけです。
それが、この祟宮澪の登場によって一気に紐解かれてきたわけですけれど、まさか士道と五河家の関係がそんな関係だったとは。どうして士道が五河家に引き取られたのか、というところに関してはホントなんでなんだろう、と疑問に思ってたところなんだけれど、琴里の両親はちゃんと士道のこと覚えてたんだろうか。だとしたら、どんな思いで彼を引き取り育ててきたのか。
それにつけても、士道と澪の関係である。ってか、令音さんがもうなんか凄まじすぎる。初対面の際から、彼のことを「シン」と呼び続けた彼女。それがどれほどの思いを込められたものだったか、というのはもうこの巻で余すこと無く発露していると言っていいだろう。
こう言っちゃなんだけれど、これまでの士道のデートっておおかた無理しているものばかりで、自分から意気込んでいったものも言わば使命感なんかに後押しされたもののようにも見えるんですよね。
でも過去回想で澪としていたあのデートは……本当にお互い好きなもの同士の初々しく甘酸っぱいそれで、何の背景も任務も責任もない、ただ好きだから好きな人との時間を過ごしているというだけの、年頃の男の子と女の子のそれでしかなくて。そんな当たり前の事実が、この上なく尊く感じられるものだったのです。
だからこそ、澪の覚悟がわかってしまう。すべて正気で、すべての殺戮を、すべての犠牲を、自身が生み出した歴史の歪みを、何億という人間の人生を歪めてしまった責任を、罪業を、全部一人で背負って、彼を生かそうとする思いを。
そして、それを五河士道も崇宮真士も決して受け入れられないであろうことも。

激戦が繰り広げられた本巻。澪の力はあまりにも圧倒的で、まさに蹂躙という言葉が相応しい惨劇が繰り広げられる。決して彼女には勝てない。誰も彼女には太刀打ちできない。精霊たちも味方となってくれた人間たちも敵対したものたちも、等しく皆殺しにされていく。
でもそれは、原点でもあるわけです。最初、精霊という強大な存在に人類はまったく太刀打ちするすべを持たなかった。そんな精霊に打ち勝つ手段はただ一つ。

デート。

困った時の狂三さん、と毎度ながらあまりにも便利すぎて頼もしすぎる最高のジョーカーの働きによって、士道は最後のチャンスを手に入れる。
それはまさに、原点へと立ち返る勝負。剣を振り回して戦うのではない、愛と愛の真っ向勝負。
さあ、俺たちの、私たちの「戦争(デート)」を始めよう。
このフレーズが、これほど似合い相応しい展開があるだろうか。このクライマックスに、その惨劇の向こうに、見事にこの展開をもってきたことに敬服を抑えきれない。興奮を抑え切れない。

今回の澪のジャケットデザインの衣装は、マタニティドレスだという。死んだ愛する男を、自ら産み直してこの世に呼び戻し、幾多の精霊を生みだし、世界そのものを捻じ曲げて彼を生かし続ける法則を誕生させようとするまさに母たる精霊に相応しい、衣装である。

シリーズ感想