ロクでなし魔術講師と禁忌教典10 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典(アカシックレコード)10】 羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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現世への復活を果たした魔人・アセロ=イエロによる、フェジテ崩壊の術式―“メギドの火”。その発動を防ぐべく、グレンたちは、学院、そして宮廷魔導士団の総力を結集する。
「やつを倒す可能性のある手段は…ある」
グレンのワイルドカード。その切り札を使用するために、グレンはもう一度、血に染まった過去の自分と向き合うことに。
「ここに居ちゃいけないんだって…皆に甘えていた」
そして、その出自が周囲に知れわたり、身を犠牲に戦うことを決意したルミアの前には、もうひとりの自分が現れ…世界が破滅に向かう時、二人は自身の罪と過去に対峙する!

明示されているわけじゃないけれど、この巻はまさに第一部完結のクライマックス! という大盛り上がりでした。ルミアの正体がついにクラスメイトたちにもバレると同時に、フェジテの街を焼き尽くすメギドの火が放たれるまでの刻限が迫り、今までの登場人物総出演ときたらそりゃあもうねえ。
ただ流れで最終回、というんじゃなく、今までの積み重ね、蓄積してきたものをここぞとばかりに全部放出するかのような構成は、満を持してという感じなんですよね。クラスメイトたちの成長やルミアの真実を受け止めるに足る交流。万全の力を発揮するに足る白猫とリィエルの心身の充実、ルミアの危うさとそれを克服する為に必要な周囲との人間関係に彼女自身の枷の解放。そして、グレンが自分の過去と向き合い乗り越えることが出来るために必要だった、これまでの教師としての日々。
色んなものが、このクライマックスめがけて収束し、結実した結果がこの最後の大盛り上がりに繋がってるんですよね。主要メンバーのみならず、どころかグレンのクラスの生徒たちだけじゃなく、他の教師やちょい役だった面々、他のクラスの生徒たちに至るまでにちゃんと活躍の場があり、それ以上に今までの事件やエピソードで得た経験を踏まえた成長があり、心得の刷新があり、次のステップに至るためのあれこれがあり、どんな微力であろうとそれをこの一番大事な場面で尽くすだけの勇気を振るい、目の前の絶望的な戦いを乗り越えるだけじゃない、それぞれが新たな自分を掴み取る成長物語らしい本分を捉えていて、ただ今まで出てきたキャラがみんな活躍するというだけでない、清々しいと思えるような燃える展開なんですよねえ。
この作品の物語の本筋からして、どうしたって描写は常に非常時と隣合わせとなるメインの子らが中心となってしまうのは当然だったのですけれど、それでありながらちゃんとグレンのクラスの子たちを疎かにせず出来る限りしっかり描こうとしてきたことが、ここに結実してるんだなあ。
加えて、それが失墜して身も心もボロボロに成り果てたイヴが新たな道を見出すきっかけにも繋がってきたというのも面白い。
それにしても、ルミアはその懐の広さや精神的な落ち着きというヒロイン力の高さに繋がっていた要素が、この土壇場で自己犠牲を厭わないどころかむしろ望んでしまう危うさへとシフトしてきてしまいましたか。
諸々の精神的な弱さや特別性の薄さを内包していた白猫が、むしろだからこそここに来て幾つか致命的な部分を克服してきたからこそ、安定性を増してきたというところも尚更に興味深い。
相変わらずヒロイン力の高さはルミアの方が圧倒的なのにね。グレン先生的には、白猫の方に自分がメンタル不安定になった際の癒やしを感じている、というあたりも。
一連の事件を乗り越えたことで、ずっと一歩自分から引く姿勢だったルミアが堂々と白猫に宣戦布告したのも、仕切り直しとなる第二部以降面白くなってきそう。
その前に、イヴの再起がメインになってきそうだけれど。

シリーズ感想