数字で救う! 弱小国家 2 電卓で友だちを作る方法を求めよ。ただし最強の騎兵隊が迫っているものとする。 (電撃文庫)

【数字で救う! 弱小国家 2.電卓で友だちを作る方法を求めよ。ただし最強の騎兵隊が迫っているものとする。】 長田 信織/ 紅緒 電撃文庫

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借金を負った弱小国家はさらなるピンチに……!?

異世界の数学オタク・ナオキの活躍で辛くも戦争を乗り切ったものの、戦後賠償で財政が火の車なソアラ王女率いる弱小国家ファヴェール。財政再建のためナオキとソアラが出した結論は、隣接するモスコヴィア帝国に遠征していた自軍の規模縮小と撤退だった。しかし遠征軍総司令のソアラの従兄妹、ライアスは気さくなイケメンながらも彼なりの帝王学を持つ難物。コミュ障のソアラとナオキは、果たして彼を説得できるのか!?
そして新たにナオキが雇うことになった女性助手(美人)が、ソアラから目のハイライトを奪っていく!
「首だけのナオキさんなら浮気しませんね!」
危険な発言も飛び出す波乱の第2巻!
相変わらず正論と理論で相手をフルボッコにしていくナオキ。ただ、正しいことを言われ指摘されて、それで納得するかと言うと人間感情的に受け入れられない、というケースは非常に多い。言ってることは理解できる、正しさは認めざるを得ない、しかし一方的に正論で「殴られる」ことにはなかなか耐えられないんですよね。それは攻撃であるから。正しい理屈に「理不尽に」虐げられるから。黙らされねじ伏せられ有無を言わさず封殺される、というのは普通に「不快」であり「苦痛」であり「反発」を覚えてしまうものなのである。
歴史的にも正論をただ正しいものとして押し通そうとした人物の大半は、感情的な反発によって排斥されるケースが見受けられる。これは史実というよりも概ねフィクションによる印象となっているのだけれどよく描かれる石田三成像とか、頭の切れる吏僚なんかはこのパターンなんですよね。これが過ぎると、頭の良いバカの典型になっていってしまうわけだ。
ナオキはこの点、ちゃんと自分の問題点については把握していて、自分の言動が味方を増やすどころか敵ばかり作ってしまっているのは理解しているのだけれど、じゃあどうしたらいいのか、というところに関してはあんまり考えられてないんですよね。コミュ障だもんなあ。懐刀的な傭兵団をゲットできた、というあたりを見ると全然対人能力ないわけじゃないのは見て取れるんだけれど、そういう体当たりなコミュニケーションを政敵ともいうべき諸侯や軍人に、宰相が行えるのかというとまあ確かに難しいんですよね。でも、それを個別にアタックしてでもやるべきなのが政治家、というものなんだけれど、公の場で「論破!!」ばっかりしてたらそりゃダメだわなあ。
本来なら、彼のポディションって参謀とか補佐官で影から献策して、実際の取りまとめは上の人にやってもらう、というのが最適なんでしょうけれど、何しろ彼のご主人であるところのソアラからしてナオキしか味方が居ない、理解者が居ない、同胞がいない、という見事なまでに孤立してる人物なだけに、ナオキを宰相という政軍のトップに引き上げて強権を奮ってもらうしかなかったんですよね。おかげで、緊急避難的に亡国の危機を回避できたものの、本来味方のはずの国内の諸侯、軍部、官僚機構全部から総スカンを食らってしまうという「オワタ」状態。
うん、これもう無理ですよね。
早晩、サヴォタージュがはじまってもおかしくなかったんじゃないだろうか。人間、それがどれだけ間違っていると理解していても、こいつの言うことだけは聞くもんか!という感情に支配される生き物なのである。
だから、絶対にこの取り返しがつかなくなりつつある両陣営を取り持つ仲介役が、双方の意見を聞き入れて理解し把握し噛み砕いて意思の疎通を橋渡しできる、そして両者が聞く耳を持つ権威を持つ人物が必要だったわけである。居るんかよ、そんな人物!!
居たのである、西方大陸戦線の方に。
今回は言わば、孤立無援だったソアラとナオキの、真の意味の味方を手に入れる話だったんですなあ。まあ、過程を見ているとあっちが必死にこっちを受け入れようとしてくれている事に全く気づかずに、明後日の方向向いてこいつも結局敵っぽい!とビビって毛を逆立てて吠え立ててしまってあとで落ち込んでるワンコ、みたいな有様になってましたけれど、特にソアラ。
あっちの人、ライアス公もコミュ障の扱い方を全然わかっておらず、一生懸命ソアラをもり立てようと自分のやり方でガンガン押してたらめっさ怖がられて警戒されて反発されて逃げられてへこむ、というダメ飼い主みたいな有様だったんですけど。
それでもなんとか上手く行ったのって、ライアス公がみっともないのを承知で無様を晒して歩み寄ってくれたおかげとも言えるわけで、なんかライアス公の方がすごい頑張った感があるんですが。
これだけソアラを見込んでくれて、最後まで見捨てずに忠誠を尽くしてくれようとしていた人をコミュ不足で追い詰めてえらいことにならずに済んで本当に良かったですよ。
ともあれ、ライアス公と彼の中枢戦力たるケズテルド伯が味方になってくれたのは本当に大きい。これまでと、劇的にソアラとナオキの立場も変わってくるでしょう。今までが最低最悪すぎた、とも言えるのですが。振り返っても、よくあの状況で起死回生できたよなあ、第一巻。
今回ナオキが持ち出し、各場面で活用した数学理論は一巻の時よりもわかりやすくなっていた、というか場に即していたというか、ともかく聞く人に対して確かな論拠と説得力を持つもので、これはこれでナオキなりにアプローチのやり方を考えていたのかなあ。単に作者さんの引用の作中への用い方がより上手くなってたという事でもあるのでしょうけれど。
しかし、数学を魔術と捉えてしまうことも珍しくない時代にも関わらず、みんな結構ちゃんと話は聞いてくれるんですよねえ。多分、現代ですら数字を元にした理詰めの話をしても端から聞く耳持たない、理解する気がない、信じない人間、少なくないのに。かくいう自分だって、いざ実際に理論を盾にして論陣を張られても、いやまあ理屈ではそうかもしれないけど現実はそんな理論通りに行くもんですかねえ、と話半分に聞き流したり不満感じたりしそうなの、容易に想像できてしまうだけに偉そうなこと言えないのですが。まあ理屈ばっかり先走って、現実が伴ってなかったり不必要な労力を浪費してたりするケースも多々あるだけに、ほんとこう、実際問題難しいんですけど。
とまれそんな意味でも、数学というわけのわからないものに傾倒するソアラを信じ、聞く耳持とうとし、自分から学ぼうとし、受け入れる努力を厭わなかったライアス公はほんとに尊敬しますわ。

1巻感想