魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ (電撃文庫)

【魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~】 秋/ しずま よしのり 電撃文庫

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人を、精霊を、神々すらも滅ぼしながら、延々と続く闘争に飽き、平和な世の中を夢見て転生した暴虐の魔王アノス。しかし二千年後、転生した彼を待っていたのは平槇に慣れて弱くなりすぎた子孫たちと、衰退を極めた魔法の数々だった。魔王の生まれ変わりと目される者を集めた“魔王学院”に入学したアノスだが、学院は彼の力を見抜けず不適合者の烙印を押す始末。誰からも格下と侮られる中、ただひとり親身になってくれる少女ミーシャを配下に加え、不適合者(魔王)が魔族のヒエラルキーを駆け上がる!!「小説家になろう」発の話題作、待望の文庫化!!

いやこれ、アノスも実力は元よりメンタリティも安定しきってて王様の気風たっぷりなんだけれど、それよりも彼の転生先の人間のご両親がすごすぎやしないですかね!
自分の産んだ赤ん坊が突然喋りだすわ、名前つけようとしたら自分で名乗るわ、いきなり成長して大きくなってしまうわ、普通なら頭おかしくなっても変じゃないのに、「まあすごい!」で受け入れてしまってそのまま普通に一人息子として溺愛してくれるんだから。
しかも、殆ど交流が断たれている魔族領にある魔王学院に入学すると言い出した生後一ヶ月の息子に、お前はまだ生後一ヶ月だ、まだまだ若いんだから心配だし何より親の自分たちが寂しい! と引っ越ししてついてきちゃうわけですよ。
生後一ヶ月という言葉の概念が崩れる!
こんな得体の知れない存在を、息子としてめちゃめちゃ愛してくれるかなり天然入ってる両親がかなりアクセントになってるんですよね。ミーシャやサーシャを家に連れて帰ってきた時のやりとりも面白いと言うか微笑ましいというか、この両親ほんま大物やわぁ。まだ生まれて一ヶ月なのに、この両親息子に馴染みすぎでしょう。生後一ヶ月の息子が嫁を連れて帰ってきたぞー、ってどれだけ気が早いんだろう。いまだかつて無く早すぎるんじゃなかろうか。ってか、この両親もまだだいぶ若いはずなんですよね。場合によってはサーシャたちと何年も年齢変わらないんじゃなかろうか。それなのに、既にもう十代後半の大きな息子をそれこそ十五年以上もじっくり育ててきたような貫禄である。まだ一ヶ月しか育ててないし、それどころか勝手に育って特に育ててないのに。
ともあれ、一ヶ月で十数年分以上の密度でこれ以上無く親らしいことをしまくってるということなのかもしれません。アノスもこの両親のことは親としてこの上なく慕ってますし。なんだこの仲の良い親子はw

さて、天然ご両親のことはともかくとして、かつての魔王の転生であるアノスはそのことを一切隠そうとしていないのですが、伝説の魔王のことは正確には伝わっておらず誰も信じてはくれないのですが、あんまり周りの反応は気にすること無く出し惜しみなく全盛期と変わらない力を振るいまくるわけで。別に隠す必要は一切ないのだけれど、思わずちょっとは隠してもいいんじゃない!?と反射的に言いたくなってしまうほどである。これもう、魔王の転生とか信じてもらうとか関係ないんじゃないだろうか。問答無用で超絶すぎて、周りとしても事実関係どうでもよくなるだろうし。
一応、魔王の転生を事前に把握して古くから暗躍している明確な「敵」というべき黒幕がいるみたいだけれど、これ障害に成りえるのだろうか。
アノスくん自体は、やりたい放題やっているのだけれど「暴虐の魔王」という異名とは裏腹に自重は知らないし現代の常識は一切頓着しないのだけれど、それで自分ルールを一方的に押し付けたり理不尽を強いるタイプじゃなく、人の話は聞かなくても人の意志や気持ちは無視しないどころかよく汲んでくれる他者に対して寛容だったり優しい、気持ちの良い男なのでそういう男がやりたい放題やるというのは不快を催さない痛快さなんですよね。
両親のみならず、ギャラリーの反応のコミカルさもテンポ良くて、このタイプの作品としては大変面白いものでした。