賭博師は祈らない(3) (電撃文庫)

【賭博師は祈らない 3】 周藤 蓮/ニリツ 電撃文庫

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賭博師と奴隷少女の物語。舞台は賭博温泉街バースへ。

ノーマンズランドでの負傷も癒え、ようやく当初の目的地バースにやってきたラザルスとリーラ。村から付いてきたエディスとフィリーも道連れに、気儘で怠惰な観光を洒落込むつもりだったが、一つ誤算があった。
温泉とギャンブルが名物のこの街で目下勃発しているのは、賭博を司る儀典長と副儀典長による熾烈な権力争い。バースへの道中で出会った知人からは忠告を受けるも、時既に遅し。
温泉から宿に戻ってみると、部屋には荒らされた形跡。そして一人横たわる血まみれの少女。面倒事の匂いに辟易としながらもラザルスは彼女を保護する。
それは、陰謀張り巡らされたバースにおける長い戦いの幕開けであった。

実のところリーラとラザルスの関係に関しては現状維持、というかはっきりとした関係にはせずに奴隷身分の女を生涯寄り添わせていくのが、アンダーグラウンドの住人であるラザルスにとっては最良なんじゃないか、と前回ある程度二人の仲が纏まったのを見て思ったものですが、当のラザルス自身がそれを良しとしなかったか。
バースの街でリーラに対して危害が及ぼうとした時のラザルスの激烈な反応を見るまでもなく、彼のリーラを大事に思う気持ちというのはもう溺愛と呼んで過言ではなくなってるんですよね。いちばん大事なものの最上位がリーラになってしまったわけだ。
そして、それは場合によっては自分自身よりも上位に位置づけている、ということでもある。リーラの幸せを鑑みて、自分の側にいることは彼女の幸せにとって決して良いことではないと思い定めていることが、リーラに対して奴隷身分の否定と先の選択の提示、そして自分の側には居てはならないという現状を続けることへの否定からも伺い知れるのだ。
愛があれば、すべては解決する、なんてお為ごかしは存在しない。それは、少女ジュリアナの突き詰めた愛情の果てやナッシュの無力さがこの巻の全部を以って証明してしまった。
それ以前に、ラザルスは自分の中に産まれ育つ「愛」から目を伏せ続けている。面倒くさい男、と思わないでもないけれど、そうやって人としてまともになることは賭博師としての堕落であり弱体化であることからすれば、リーラへの愛を受け入れてしまうのは彼にとっては究極の自己否定なのかもしれない。
賭博師として生きて死ぬ、その定めに殉じているラザルスにとって、リーラの存在は甘い毒だ。人としてまともになり、人として幸せになることが、果たしてラザルスという男にとっての幸福なのか。
当たり前の平和で安らかな人生が、彼にとって救いになるのかそれとも地獄になるのか。
それがわからない間は、ラザルスの煩悶も理解せざるを得ない。白黒つけたがるのは、勝負師たちの悪い癖なのかもしれないけれど。もっと曖昧模糊な関係でいいじゃない、はっきりさせなくていいじゃない、雰囲気に流されて、その甘い感情に浸っていればいいじゃない。
あのロマンティックなダンスシーンを見せられては、二人の甘やかな柔らかな思いを目の当たりにしてしまえば、無責任にそう思えてしまうのだけれど、ラザルスという男はそういう意味で
「潔癖」なんだなあ。

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