ロクでなし魔術講師と禁忌教典11 (ファンタジア文庫)

【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 11】 羊太郎/ 三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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“フェジテ最悪の三日間”から始まった富国強兵の流れによって、アルザーノ帝国魔術学院に新学院長が就任する。武一辺倒の教育改革にグレンは反発するのだが…。そんな折、先の戦いの失態から、イヴが学院に左遷されてきて!?
「いいわ。私も貴方に力を貸してあげる」
―戸惑うグレンをよそに、改革の是非を懸けた『模範クラス』との決闘に向け、強化合宿を敢行。道を失ったイヴは、生徒たちとの交流を通じて、自分が本当は何を為したいのか気づきはじめ…。改革に伴う裏学院の開放。学院創世の闇に触れた時、代償とするのは、誰がための命―。

とうとうイグナイト家から放逐されてしまったイブ。イグナイト家のために、という事だけを拠り所に無理して頑張ってたにも関わらずこの仕打である。でも、勘当しておきながら次の就職先用意してくれているあたり、わりと親切なんじゃないだろうか、と思ってしまうのは間違っているだろうか。あの様子だと、家名から削除してあとは知らん、となっても不思議では無さそうなくらいの態度だったのに。
それはそれとして、イブは縋っていた支柱を引っこ抜かれてもっと消沈しているのかと思ったら、来てすぐにグレンのクラスの子たちの為に自分から積極的に動いているんですよね。てっきり、最初の時のグレンみたい、とまではいかないまでも無気力惰性で指導してたら生徒たちの頑張りに感化されて段々と教師としての仕事に目覚めていく、という過程を辿るのかと思ったのだけれど。
ほら、グレン先生、あんた自分の所業振り返って反省しなさいよ。
それだけ、イブが真面目で勤勉、ということなのかもしれませんが。先の「フェジテ最悪の三日間」の折に学院の生徒たちと一緒に戦ったことで、最初からこの子たちのためになんとかしてあげよう、という想いが生じていた、というのもあるのでしょうけれど。
こういう本来真面目でロジカルな人が、あれだけヒステリックになりふり構わず手柄あげることばかりに固執していた、というのはそれだけ精神的に追い詰められていた、強迫観念にかられていた、強圧的に追い立てられていた、ということなんでしょうね。父からの命令に逆らえずにセラを死に追いやった罪悪感が、それに拍車をかけていたのでしょう。
そこまでやっていたのに、一方的に捨てられたのですからもっと自暴自棄になっても仕方ない状態だったんじゃないかと思うのですけれど、こうなってみるとグレンはそんな鬱屈を吐き出せる唯一の相手だったんだろうなあ。それも、セラの件で憎悪すらされていることは自覚していたわけですから、頼ることも出来ず余計に歪んでしまっていたのが、今回の一件でようやく吐き出せた、と。
白猫が、こいつはやべえぜ!! と警戒レーダービンビンに反応させてしまっているの、笑ってしまったんだけれど、強敵出現は確かにそうなんですよね。なんか、精神的に落ち着いたイヴは同年代の気後れ無くグレンとぶつかりあえる女性、ということで一気にヒロインレースに躍り出てきた感がビンビンである。
と、久々に落ち着いて生徒たちに指導する学校ならでわのエピソードで、何だかんだと本作ってこうやって教師やってる話が面白いんですよね。今回はイブも一緒に指導してくれることで、ついに生徒たちも実践的な立ち回りを覚えていくことに。これまでのグレンの指導がちゃんと生きていて、それを土台にしてイブの実践的な指導によって一気に実力が開花していく生徒たち、という展開が実にくるものがある。
システィーナも、あれだけ別格の強さを手に入れながらさらに一皮剥けることになって、この子だけはなんか生徒というよりも本当にグレンの一番弟子、みたいになってきた感があるなあ。
惜しむらくは、クラスの生徒たち、みんなちゃんとキャラ立っているにも関わらず、それぞれ単独のエピソードとか殆どないものだから掘り下げ、という点で若干物足りないんですよね。短編集の2巻まだ喚んでなかったんだけれど、そっちで触れてるのかなあ。既にみんなそれぞれに特徴や個性を見せてキャラ立っているだけに、もうちょいこの子たち1人1人のバックグラウンドや中身を覗いてみたいものである。
実質、これが第2部スタート編、ということで本格的に禁忌教典を巡る話になってきそうで、楽しみ楽しみ。

シリーズ感想