三国破譚 孔明になったけど仕えた劉備は美少女でゲスでニート志望だったの事 (ファミ通文庫)

【三国破譚 孔明になったけど仕えた劉備は美少女でゲスでニート志望だったの事】 波口まにま/saraki ファミ通文庫

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ニート暮らしを夢見るダメ人間な劉備とともに三国統一を目指す!?

三国志好きの中原天人は、突然諸葛亮孔明に召喚され「余命少ない自分に代わって劉備に仕えてくれ」と頼み込まれる。願いを聞き入れた天人の元に現れる劉備、関羽、張飛!! 伝説の三英雄は、なんと全員美少女!? ここは女性が活躍する三国志世界だった!! しかも、聖人君子と思われた劉備は、曹操軍と戦う気がないどころか、ニート暮らしを夢見る、卑怯・外道・ゲス作戦上等のダメ人間で!? 孔明として群雄割拠の三国時代を駆け抜けろ!!

貧困の底である草鞋売の身の上から一旗揚げて楽して生きたい、というのはごくごく自然な俗世の欲である。三国志演義での聖人君子のような生き方とも権力を握って思うがままに権勢を振るいたいという野心とも違う、わりと素朴な欲求じゃないだろうか。
この劉備が偉いところはそういう個人的な欲求が根本にあるくせに、自分についてきた人間に対しての責任感は人一倍あるってところなんですよね。周りの人間を利用して自分だけ好き勝手生きる機会はいくらでもあっただろうに、彼女は自分が面白おかしく楽して生きるためには自分を支えて一緒に戦ってくれた人たちを踏みにじって使い捨てにするようなやり方は、後味悪くて嫌だって言うのである。それをしてしまうと、楽しくニート暮らしが出来ないと言っているのだ。
それって、良い人、善人の感性以外の何者でもないのである。
乱世を終わらせて民を救うのだ、なんて高尚な考えなんて微塵も持っていない自分本位な目的な生き方をしている劉玄徳だけれど、少なくとも自分勝手や無責任とは程遠い生き様を見せていて、別に全然ゲスな人じゃないぞ、これ。
というわけで、ある意味史実の劉備に近いんじゃないか、というクレバーな在り方を見せてくれる劉備さんでありますが、これくらいの方が人間味があってよろしいんじゃないでしょうか。
歴史上の英傑の多くが女性になってる、というのは織田信奈の野望がまず想起されるのだけれど、キャラ重視のあっちと比べても本作はかなり歴史遵守のしっかりした作りがなされてる感じなんですよね。ただ、やはり一巻である程度話を完成させないといけないためか、登場人物をかなり絞っていて三国志という群像劇を期待すると登場人物の少なさにややがっかりしてしまうかもしれないけれど。
特に魏なんか敵サイドにも関わらず幾人かの赤壁関連の人物を除くとメインは曹操と許褚の二人しかいないという陣容の薄さですし。
あと、三国志の女性化モノというとかつて、或いは今も【真・恋姫†無双】というゲームの二次創作小説が隆盛を誇っているのだけれど、そこでちょっと目を剥くレベルで正史における当時の社会情勢などを緻密に描写してる作品もかなりあって、それらの既に見た作品群の体験から評価基準がどうしても高くなっているかして、どうしてもそれらと比べてしまう部分があるのだけれど。
それでも、やたらと展開をゆるくしてしまうことなく、しっかりと三国志を書いていこうという姿勢、女性化しても乱世の将星として各々のキャラがみんな気張っているところなど、好感触である。
ある意味、二巻からラブコメ要素も強くなってきそうだし、ここからの飛躍も期待できそうじゃないですか?