我が驍勇にふるえよ天地7 ~アレクシス帝国興隆記~ (GA文庫)

【我が驍勇にふるえよ天地 7 ~アレクシス帝国興隆記~】 あわむら赤光/卵の黄身 GA文庫

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アドモフ帝都を目指し進軍を続けるレオナート。
しかし東より迫る新たなる脅威――草原最強の騎馬軍団クンタイト・ダラウチ氏族襲来!

さらに若き皇帝ウィランがただひとり友と呼ぶ男、眠れる獅子ダノールが国家防衛のために目を覚ます。

だがレオナートは自覚していた。強敵との出会いに武者震いをする己を。
そしてこの一戦が歴史に深く刻みこまれるであろうことを――

「我ら、これより神話に入る!!」

あまねく神々よ照覧あれ、我が驍勇にふるえよ天地!
宿敵アドモフ帝国征服に挑むアレクシス軍飛躍の戦い、成るか?
魔法がないから熱く燃える痛快戦記、激闘の第7巻!
アドモス帝国とレオナート軍との最終決戦が繰り広げられるこの第七巻ですが、これって実質皇帝ウィラン三世の物語だったのではないでしょうか。
元帥皇女メリジェーヌの叛意が明らかになるまで、弟帝であるウィランは超保守派であり始祖であるレゴ帝に憧れ自らをそれになぞらえたいと思っているだけの特に特徴を感じさせない平凡な若い皇帝、という風情でした。おそらく、作中のキャラクターたちから見てもそれほど変わらない評価だったのでしょう。
しかし、実際の彼はそんな平凡とも力ない皇帝とも程遠い、大国の皇帝に相応しい器を持つ人物だったのです。その冴えは、メリジェーヌのクーデターを未然に防いだところから顕著に表に出るようになってきます。
別段、爪を隠していた、というわけでものでしょう。でもこの事件で覚醒した、というわけでもなさそうなんですよね。それまでにも片鱗はきちんと見せていたし、メリジェーヌの反乱が発覚したのは妹姫の密告という偶然の要素もあったわけですけれど、内向きの影働きにしっかりとした人材を雇っていたり、ダノールとの出会いから交流を得ていく段階で見識を高めていったりと、下地はきっちり整えられていたのです。
それでも、まさに彼が皇帝として見事な成長を見せ始めたのは、このレオナート軍の侵攻が始まってからの事ではないでしょうか。未曾有の国の危機が、彼に加速度的に皇帝としての自覚を……、そして多くの挫折が盲目的にレゴ帝の再現を目指していた硬直的な思考にひび割れを促し、誰かのモノマネではない唯一無二の、ヴィラン三世という皇帝像を自ら覚醒させていくのである。
その中で、若く経験も乏しいが故に重臣たちから軽く見られ、思う通りに国を動かせないもどかしさにのたうち回り、また自分の浅はかな考え方が国の行く末に動脈硬化を起こしつつあったことを理解して苦しみ、いわゆる王の孤独と呼ばれる孤立に苛まれながら、しかし目指すべき皇帝としての境地を自ら見出し、忠誠を通り越した真の友情を交わす友であるダノールと本当の意味で心通じ合わせ、意思と願いを通わせあい、王の孤独を癒やしてくれるその存在に救われ、皇帝として最良の幸せを感じ得る。
レオナート軍の国境越えからこっち、帝都への侵攻までの決して長くない期間に、この若き皇帝は王としての、皇帝としての様々な絶望と失望と希望と至高を味わうことになるのである。その中で、彼は歴代の皇帝の中でも類稀なる名君としての資質を、開花させていくこととなる。
いやもうほんとに、途中からどっちを応援して良いのか、と思い悩んでしまうほどに、このウィラン三世というキャラクターが輝きだしていくんですよね。さらに、ダノールとの友情もアドモフ帝国が追い詰められていくにつれて、どんどん盛り上がっていくし。お互いがお互いに殻を破り合い、皇帝として将帥として、そして友として覚醒していく様子はもうどっちが主人公なんだか、と。
ここまで来ると、メリジェーヌいらん事せんかったらアドモフ安泰もいいところだったのに、と思ってしまうんだけれど、何気にメリジェーヌもウィランの覚醒を目の当たりにして同じことを思ってしまったんじゃないのか、という反応を示してましたしね。
ただ、人種や嗜好におけるマイノリティの保護を打ち出しているメリジェーヌとしては、保守派なウィランの政治方針とはどうしても対立せざるを得なかった以上、こうなることは仕方なかったのか。
ウィランも姉の反乱とレオナートの逆侵攻がなければ、保守的な志向を変えてレゴ帝の真似事ではない自分の皇帝像を手に入れることは難しかっただろうし、このような覚醒も権力の掌握も長い長い時間をかけないと難しかっただろうから、どうしても収まるところには収まらなかったのだろう。
それでも、ここまで覚醒したウィラン皇帝、ダノールとのコンビという意味でもこのまま退場というのはもったいなさすぎるなあ、決してレオナートと相いれぬどころかむしろメリジェーヌよりも性格的には相性良さそうなんじゃないのか、このまま皇帝としてレオナートの盟友になってくれたほうがアドモフ軍が味方としてよく動いてくれるんじゃないか、とか思っちゃうところなのだけれど……。
長年の仇敵でもあり、首都を落とすまでの決着を得てしまった以上、指導者たるウィランをそのままというのは禍根が残るのは致し方ないところなのか。
でもだからこそ、このウィラン三世の降伏後の顛末というのは、意外であって痛快だったんですよ。
うわぁっ、そう来たかー! と。
頼りになる味方として残ってはくれなかったとしても、こういう終わり方をされてしまうと文句のつけようも不満もなんもないですわ。これもまた、在るべきところ、在るべき姿へと収まった、というものなのかもしれません。あまりにもしっくりと収まりすぎて、微笑が浮かんでしまったほどに。
ウィラン三世の歴史的評価も、なるほどあの人なら、他の人がいうのならともかくあの人の視点からするとまさにその通り、だったのでしょうし、ダノールの評価に関してもあの裏切り者の末裔という血筋、立場にずっと苛まれ続けてきた彼のことを思えば、もうこれ以上無い支援じゃないですか。
なにより、このウィラン三世はその友情の厚さこそが魅力でした。イイ男だったんじゃよ。

クンタイト騎兵、物凄いイキった登場してきたわりに、恐ろしくあっさりと降されてしまって、若干オイオイ、となってしまいましたけれど、あの弓騎兵、一兵科として捉えるとレイヴァーンが対処のしようがない、というように絶大な威力を発揮するんですよね。
それまで吸収して、となるとレオナート軍って凄まじい諸兵科連合と化しつつある。しかも、今回の顛末でレゴ戦術を扱うアドモフ軍まで取り込むことになったわけだし。アランくんなんか、レイヴァーン軍を率いることで、その動かし方学んじゃってますしね。

まさかこの段階でアドモフ帝国を下す、なんて急転直下なところまで転がるとは思ってなかっただけに、レオナート軍これからどうなるのか、どうするのか。そもそも、母国であるクロード帝国との関係置き去りにされたままなだけに、一地方軍にも関わらず敵国を倒しちゃって吸収しちゃうことになりそうなレイナート軍が、母国からどう扱われるのか。アドモフと比べても盛大に腐りまくってる地元なだけに、一波乱じゃ済まなさそう。アドモフ帝国をどうするのかの問題もありますし、なんかアランがえらいこと企んでましたしね。チョット待って、それシェーラさんが激おこになりません!? いや、軍師としては怒るどころか政略としてむしろ推奨して然るべきなんでしょうけれど、軍師としては埒外な陽キャラで軍全体のマスコットでもあるシェーラさんの場合、そんな自分を殺して主を立てるような陰な反応を素直にするのかしら。あと、レオナート自身がどう反応するかわからない!
ええい、いったいどうなるんだ!(ワクワク

シリーズ感想