霊感少女は箱の中3 (電撃文庫)

【霊感少女は箱の中 3】 甲田 学人/ふゆの 春秋 電撃文庫

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「被服準備倉庫には呪われた人形が置いてあるらしい」
真央が所有する棺に興味を持つ銀鈴学院三年総代・荻童獅朗から、ロザリオ・サークルに依頼が舞い込んだ。それは同じ学校に通う三年生・小木奏の相談―銀鈴学院に古くから噂が絶えない被服準備倉庫の呪い人形の霊に取り憑かれた妹の調査だった。真央や瞳佳たちが被服準備倉庫に向かうと、そこには埃をかぶりながらも布に覆われ異様な雰囲気を纏うドールハウスが一同を静かに待ち受けていて…。妹の身に起こるポルターガイスト現象、奏の依頼裏で暗躍する荻童、瞳佳の身にも迫る学院最凶の霊。事件を追ううちに見えてきた学院の抱える秘密とは―。

この銀鈴学院、ちょっと危険地帯多すぎやしませんかね! 瞳佳ちゃんが予てから絶対に近づいてはいけないと感じていた場所として、今回の舞台となる被服準備倉庫をあげていましたけれど、それ他にも何箇所か強度の差はあれど、近づくとヤバイ! という場所が学院内にいくつか存在しているわけで、調べてみると実際に過去にえらいことになってしまった事例が幾つも残っている、とか普通に通う学校としてはやばすぎるんじゃないでしょうか。どれだけ危険な学校でも、踏み入ってしまうと確実にアウト、な場所とかあってたまるか、というものですし。
……【Missing】の「聖創学院」は別ですよ。あそこは普通に通っているだけで普通ではありえない死に方をしたり行方不明になる人が年間何人も出てしまうような学校ですし。未だに甲田さんの作品に限らず、あそこまでやべえ学校は今までフィクションの中でもお目にかかったことはないです。
比べる対象をあれにしてしまうと、とりあえず近づかなければ大丈夫じゃん? とむしろ安全に思えてきてしまうので、そのあたりは意識から排除するとして、今回はポルターガイスト現象がメインとなるお話。
思春期の問題を抱えた少年少女の間で起こりやすい、コントロールできない超能力の暴走現象。当人の自覚なく発動する念動によって起こるポルターガイスト。この手の話の説明は、様々な媒体で扱われているので、おおよそ知れ渡っているとは思うのですが、この甲田さんの手にかかると案の定凄まじいまでのホラーと化すのである。
ドールハウスという外的な要因、というか触媒、呪いの品のようなものが存在することで、ただの精神の不安定さから顕れる現象、とは言い切れないものが横たわっているだけに、簡単に個々の問題を解決したら終わり、みたいなことに到底ならなさそうなのも大きな原因なのでしょうけれど、とにかく人間の無意識の発露、超能力の暴走、なんてものじゃあ絶対に収まらない異様さが、ぬめった液体に塗れた手で首筋を撫でられるように横たわっているのである。
生きている人間の露骨な悪意が、被害者となる娘たちの周囲に絡みついているのも大きいのでしょう。普通、この手の身の程を知らずに危ないものに手を出す人間は、相応の報いを得る、というのがホラーの定番でもあるはずなのですが、今回の主犯って身の程知らずとは言い切れないだけに尚更質が悪いんですよね。あれほど明らかな邪悪にも関わらず、なんかうまいこと箱の危険範囲外に位置取っていて、リスクは真央たちにばかり押し付けて美味しいところだけ抉り取っていきそうな、そんな狡猾さを感じさせるのです。実際に瞳佳はかなり危ないことになりかけましたし。
なんだかんだと、スポンサーサイドである、というのも辛いところなんだよなあ。他の三家の連中とは役者が違うみたいだし。それでも、それほどの相手だからこそ、安全地帯にふんぞり返っているつもりで一線を越えて自業自得なことにならないかなあ、と期待してしまうのはまあ仕方ないじゃないですか。
今回は前後編の前編というところで、いいところで終わってしまったので、小木姉妹の件、妹ちゃんの依頼も含めて、うまいこと解決してくれたらいいのだけれど、作品の流れ上はたしてスッキリするような結末になるものか。ジクジクとした不安ばかりが染み出してきます。

シリーズ感想