ゼロの大賢者 ~若返った最強賢者は正体を隠して成り上がる~ (角川スニーカー文庫)

【ゼロの大賢者 ~若返った最強賢者は正体を隠して成り上がる~】 夏海 ユウ/吉田 依世  角川スニーカー文庫

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『大賢者』である壮年の英雄ジークフリードは、右腕だったギルバルドの狡猾な策略で地位と名誉、力までも奪われる。彼は無実の罪によって“還らずの森”に放逐され、瀕死の吸血鬼の少女と運命の出会いを果たす。自らを犠牲にし、少女に血を捧げた彼は―吸血鬼に変貌し、少年へと若返っていた!無限の魔力を取り戻し、吸血鬼の特殊能力も手に入れた彼は、『ゼロ』と名を変え、助けた少女と共にギルバルドへの復讐を誓う。「悪いな、無限の前に十も百も関係ないんだ」かつて大戦を終結させた英雄が、今度は『ゼロ』から駆け上がる!!若返った最強賢者による成り上がり冒険譚、此処に開幕!!

タイトルに反するようだけれど、あんまり正体隠してなくないですか!?
いやまあ年齢や見てくれは変わってるし、ゼロなんて偽名も名乗ってますけれど、力を隠すこともないですし殊更気をつけて隠している様子もないですし、結局振り返ってみると出会った人には敵味方問わずみんなバレますたよ!?
暴れん坊将軍とか水戸黄門的な流れとしては、正体明かして悪者をやっつける、というのは王道といえば王道なのですけれど。ああでも、既に権威を奪われ反逆者となっているジークさんとしましては、前述した将軍様各位とは大幅に立場が異なるんですけどね。
しかし、黒幕のギルバルド氏ですけれど実力的に圧倒的な上位者であるジークさんを入念に罠にかけてようやく無力化して捉えたのに、殺さずに放逐って手落ちもいいところなんじゃないでしょうか。
一瞬、実はギルバルド氏イイ人でなにか事情があるのか? とすら疑ってしまったのですが、特に理由もなく普通に悪い人のようで。そりゃあ、“還らずの森”という場所が戻ってくる者がいない死刑と同等の追放刑の刑地だというんだから、処刑したのと一緒と考えるのも仕方ないのかも知れないですけれど、実際は吸血鬼ハンターがうろちょろしているように人の出入りが皆無ではなく、実際ジークさんはティアという少女と速攻で遭遇して速攻で相互に助け合うことになったわけで。
結果として、ギルバルド氏超余裕ぶっこいて大失態犯したというのは言い逃れできない事実なんだよなあ。大丈夫か、黒幕。
まあ肝心のジークさんからして、そんな大丈夫か黒幕なギルバルド氏を何の疑いもなく重用して、あっさり罠にかけられ、大事な主君を傷つけられ、とやらかしまくってて、これもし反逆者とでっちあげられなくても、宰相として相応に責任とらないといけなくなる案件だったんじゃないでしょうか。
現状、大切な女王陛下は敵の掌中に収められたままで、相手が何を企んでも、陛下に何をしようとも手出しできない状況に追い込まれてますし。ジークさんもうちょっと焦ってw
今の所メインヒロインらしいティアはというと、ジークを吸血鬼にした以外では闇夜を道案内したくらいで一緒についてきているだけ、という微妙に宙ぶらりんな立ち位置になってしまっていて、何気に扱い難しそうですし。ハーフバンパイアと言って戦闘力があるわけではなし、何か重要な背景を背負っているわけでもなし、どうするんだろうこの娘。
むしろ、旅立った途端に出会って助けることになったサクラとその義父の物語のほうがドラマティックで、終盤あたりはこの二人の親子の物語が主軸となって作品を推し進めてたんですよね。悲劇的な結末を迎えるであろうこの二人の物語を、強大な力で無理矢理にハッピーエンドへと持ってくゼロの無双っぷりを楽しむ展開だったのかもしれませんけれど、あの親父さんとサクラとの絆の熱さ、健気さが大きく存在感を示していたために、あくまでゼロはそんな二人を助ける助っ人役みたいな感じに微妙に脇に押しやられてた気もするんですよね。それはそれで、よくサクラたちが描けてたってことだからいいんですけれど、もうちょいゼロにしてもティアにしても父娘に押し負けない存在感が欲しかったかなあ、なんて思ったり。