真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました (角川スニーカー文庫)

【真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました】 ざっぽん/やすも 角川スニーカー文庫

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Kindle B☆W

「君は真の仲間じゃない―」
最前線での戦いについていけなくなってしまった英雄・レッドは、仲間の賢者に戦力外を言い渡され勇者のパーティーから追い出されてしまう。
「はぁ、あんときは辛かったなぁ」
レッドが抜けた事で賢者達が大パニックになっているとは露知らず、当の本人は辺境の地に移り住み薬草屋を開業しようとワクワクした気分で過ごしていたのだが…
「私もこのお店で働いていいかな?住み込みで!」
突如かつての仲間であるお姫様が自宅まで訪ねてきて!?“のんびり楽しい薬屋経営”、“お姫様とのイチャイチャ生活”、報われなかった英雄による素晴らしき第2の人生がはじまる!

おお、本当にスローライフしてる! 辺境の街で店を持ち一国一城の主として働くのをスローライフというのかはまあさておき、ガチガチのタイムスケジュールに合わせてあくせく生きるのに対してのんびりと自分ペースでゆっくりのんびりと追い立てられることなく生きるのをスローライフというのなら、このレッドくんまさにスローライフを満喫してるんですよね。
スローライフとは? と首を傾げたくなるような作品が多いなかで、そのへんは特筆すべきところかも。
元勇者パーティーの一員というだけあって、最前線から程遠い平和な辺境の街では不釣り合いなほどの能力を持ってはいるんだけれど、それをこっそり振るって無双したり、商売に活かして新たな商売圏を確立する、みたいな派手なことは一切せず、というか殆ど使う機会もなく、地道に薬草を集めて実直に薬草屋を営んで、と本当にこう……前線から退き剣を置いた引退した人間がやるような暮らしなんですよね。戦いの緊張感から解き放たれ、人間関係のストレスからも解放され、のんびりとした時間を満喫しのびのびと穏やかな日々を楽しんでいる。まさにスローライフ!
全然繁盛しない薬草屋の販路の開拓についても、元勇者のパーティーのあれこれとか全然まったく関係ない、些細な工夫から生じたものでしたし。
というか、あれはリットという事実上の恋人というか同棲相手みたいな相手との仲睦まじさを改めて実感するようなイベントでしたし。
お相手のリットも、勇者パーティーに一時加入したイベントキャラ、みたいな感じで過去に関わった人なのだけれど、結局パーティーには加入せずそこで別れたものの、彼女も故国で色々あったらしくほぼ出奔みたいな形で辺境に流れてきたところを偶然再会して、というなんだろうこれ、高校の同級生だった娘と社会人になってから偶然再会して、そのまま盛り上がって同棲してしまった、みたいな雰囲気w
このリットのツン期の終わった元ツンデレ、という紹介文が的確すぎて強烈である。元ツンデレ!
そりゃ、ひたすらデレっぱなしなわけですよ。
薬草屋の開業を手伝っているうちに、そのまま押しかけで住み込み従業員として一緒に暮らすようになり、事実上の同棲生活。レッドの方も全然満更でもなく……どころか、こっちもデレッデレですよね!
お互い嬉し恥ずかしな距離感を徐々に詰めながらの甘酸っぱいやり取りはもうなんだろうこれ。同棲通り越して新婚さん!?
安いながらも指輪なんか送っちゃったりして、式はやんないけれどもう事実婚状態だよね、みたいな暗黙の雰囲気w
レッドもリットも、色々と口を挟んでくるだろう身内関係が、出奔しているが故にまったく周りでガチャガチャすることがないので、誰にも邪魔されずにイチャイチャしっぱなしである。元お姫様とか勇者のお兄ちゃん、という自分の出自、当人たちがもう忘れてるんじゃないだろうか。
忘れてもいいくらいに、幸せいっぱい、ということなんですけれど。

一方おかげさまで、勇者パーティーの方はえらいことになっているようですが。
この作品世界の「与えられた加護に人格が引っ張られる」という設定、何気に怖いものがありますよね。喧嘩屋の加護を得てしまった子供が暴力的になったり、という事から見てもダーティー系の加護を受けてしまうと、高い確率でその加護に意識や人格が持っていかれてしまうみたいですし、事実勇者ルーティーなんぞ、殆ど元の人格を改変されたんじゃないか、というような有り様ですし。このへん、結構ストーリー的にも意図ある設定なんだろうか。
ルーティーの壊れっぷりを見るに、意味深どころではないのだけれど。