ノーブルウィッチーズ8 第506統合戦闘航空団 英雄! (角川スニーカー文庫)

【ノーブルウィッチーズ 8.第506統合戦闘航空団 英雄!】 南房 秀久/ 島田フミカネ&Projekt World Witches 角川スニーカー文庫

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ハイデマリーがサントロン基地上空付近で交戦して間もなく、大型ネウロイがガリア全土へと攻勢を開始する。絶望的な状況の中、微かな活路を見いだした黒田とハインリーケは母艦ネウロイへと突貫を仕掛けるが…!?
「ゆくぞ、黒田中尉!」
「はい!もうひと稼ぎしますよ!」
旧501メンバーが宮藤芳佳の救援に向かう最中、時を同じくして繰り広げられていた激闘の一幕が明らかに。繰り返される激戦。そして異なる身分に戸惑いながら、華族として部隊に招聘された少女が辿り着いた“高貴なる義務”の答えとは!?ノブレス・オブリッジを体現する魔女達の物語―感動の大団円!

劇場版ストライクウィッチーズで旧501メンバーが再集結している一方で、他の統合戦闘航空団もネウロイの再侵攻に当然激戦を繰り広げていたんだよ、もちろん第506ノーブルウィッチーズも!
ということで、劇場版ストライクウィッチーズの際のノーブルウィッチーズの戦いを描いたシリーズ完結編。
というか、劇場版ストライクウィッチーズでのネウロイの再侵攻って、史実におけるバルジの戦いがモデルだったんかー。映像観ているときにはさっぱり気づかなかった。小説の方も読んでいなかったので詳しい戦況、ネウロイの侵攻経路なども把握してなかったので元ネタとなる戦史があることすら気づいていなかったのですが、本作読んでるとなんか見覚えのある合衆国の部隊の名前がつらつらと出てきたり、あからさまにアルデンヌ方面の戦域が弛緩してたり、とお膳立てが出揃っていたわけで、ようやく「あ、これバルジ大作戦!?」と気づくに至ったわけです。
劇場版のアニメでもアイゼンハワー将軍がバストーニュに言及していたようですし、分かる人は一発でわかったんでしょうなあ。
戦気が見える。
というわけではないのですけれど、大戦を前にしたときその気配の変化を感じ取れる人、というのは居るもので……。B部隊のジーナ中佐のあの歴戦の勘はほんとパないわ。しかも脳筋ではなく裏側に通じた手練手管も持ち合わせているわけで。この人って統合戦闘航空団の隊長ももちろんこなせるだろうけれど、むしろ特殊作戦群の司令とかの独立性となんでもありの手段を有した部隊を率いたら半端ないことになりそう。「欧州一危険な女」にもなれそうな気がする。
今回のバルジの戦いだって、ジーナ隊長の決断の迅速さと勘の良さとこんなこともあろうかと、という備えがなかったら果たして戦域を支えられていたかどうか。
これまでノーブルウィッチーズでは、ネウロイとの戦いよりもむしろ国同士のパワーゲームやガリア内部の王党派の暗躍などへの対応など、人間同士の争いの中で非常に難しいバランスを取りながら部隊を育てていく、という方向性で描かれていて、ネウロイとの戦闘は殆ど定期の巡回と散発的な襲来への迎撃くらいであった。それが、今回は本格的なネウロイの大規模攻勢への迎撃戦ということでかなりの緊迫感が漂う中でのストーリー展開だったんですよね。
ガリア東部に配備されていたリベリオン陸軍の細かな動向なんかも描写されて、殆どの人間が予期していなかったネウロイの反攻と、対応しきれずに瓦解していく最前線。そんな中で決死の思いで踏みとどまる部隊の兵士たち。と、久々にストライクウィッチーズ・ワールドの戦時の激しさを思い出させてくれる内容でした。
そして、地を這う兵士たちにとってウィッチたちがどれほどの希望であるのかも。
バルジの戦いでも有名なバストーニュ包囲戦。リベリオン第一〇一空挺師団が市民を護って抵抗を続けるバストーニュ。ネウロイの大軍に完全包囲されつつあるバストーニュに突入し、最後の盾として獅子奮迅するジーナ隊長率いるノーブルウィッチーズB部隊。ウィッチたちの弾も魔力も空挺師団の弾薬も潰えて全滅までもうあと僅かというリミットに、さあネウロイの大軍を切り裂いてのA部隊の救援は間に合うのか。
とまあ、ラストに相応しい大激戦でありました。
悲壮感すら漂う中で、それでもいつもの調子を崩さず明るく元気な黒田の邦佳ちゃん。ほんと、ウィッチの中でもこの娘のメンタルは最高峰の一人なんでしょうなあ。わりとうじうじと悩むところがあるハインリーケにとっては、彼女の揺るがぬ明るさこそが頭の痛いところであり、何より信頼しているところなのでしょう。ハインリーケ姫デレた、と邦佳ちゃん騒いでましたけれど、何を仰る。随分前からプリン姫さま、邦佳ちゃんにデレッデレじゃあなかったですか。まあそれを、御本人が認めたのだから邦佳ちゃんも喜んでしかるべきか。

ロザリー隊長も残る魔法力を使い切って、実質アガリ。胃薬もハインリーケに引き継いだことですし、やっと一息ですなあ、と言いたいところだけれど、このあともなんやかんやと総隊長職は続けるんでしょうね。上層部とのダーティーな駆け引きはまだまだハインリーケでは難しいでしょうし。トラブルの責任はほぼほぼロザリー隊長へと放り込まれる予感。

シリーズ全体として、スパイの暗躍や結構人死にも出てたし、ウィッチたちの旧友もネウロイとの戦闘で戦死していたり、と戦時の仄暗い哀切とした雰囲気が流れているストライクウィッチーズの作品としては結構特殊な展開の作品でしたけれど、それでも邦佳ちゃんを中心とする明るくもしたたかな面々のやりとりで暗い方暗い方へと落ち込まずに、うまいことバランスが取れてたように思います。
なかなかこういう国際謀略モノ、ネウロイ相手じゃなく人間の組織相手の戦いというのは人気出づらかったかもしれませんが、私はけっこう好きでした。それ以上に、黒田邦佳というキャラはこのストライクウィッチーズ作品全体の中でも特に好きな一人となりました。いつか、アニメで動いて喋って守銭奴している彼女が観たいものです。

シリーズ感想