ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン (ファンタジア文庫)

【ラストラウンド・アーサーズ クズアーサーと外道マーリン】 羊太郎/はいむら きよたか 富士見ファンタジア文庫

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生まれながらにして、すべてのことが出来すぎてしまうせいで空虚な日々を過ごす高校生、真神凛太朗。暇つぶしのため、あえて“最弱”と呼ばれる瑠奈=アルトゥールの陣営に加わり、来るべき世界の危機を救うため真なるアーサー王を決める“アーサー王継承戦”に参加することになるのだが…。「私のエクスカリバー…売って、お金に換えちゃったから」瑠奈は、聖剣を売り払い、召喚した“騎士”のケイ卿にはコスプレさせて利用したりするロクでなしで!?しかし絶望的な危機に瀕した時、瑠奈は凛太朗さえも認める強さを垣間見せ―。新たなるアーサー王伝説がここに始まる!
作中で引用されるアーサー王伝説の本の著者ジョン・シープって、作者御本人のことですよね、はい。ある程度一通りの文章作ってたりするんだろうか。
アーサー王(ギャル)である。若い女性のお腹だしファッションってエロ可愛いことこの上ないはずなんだけれど、瑠奈っちのそれはすばらしく色気に欠けていますね!!
しかしこれはこれで! 基本的にはいむらーさんの絵は大好物なので、彼女みたいな陽性かつ奔放なキャラクターは主人公らしくていいじゃないですか。
瑠奈っち、確かにクズっぽいロクでなしの類なのだけれど、彼女なりの王様像というのを一貫して貫いている気合入ったネーチャンでもあるんですよね。すべてのクズっぽい言動にはそれを成すべき理由があり、でもイヤイヤやっているわけではなく、心の底から楽しみながら周囲を巻き添えにしつつ、しかし周囲だってノリノリにさせてみんなまとめて暴走させる、という意味ではちゃんと上に立つもの、大衆を率いるもの、皆の想いを背負うもの、としての責任を果たしている。どれほど無茶苦茶に見えても、彼女は立派な王様なわけだ。誰もが彼女のために立ち上がり、彼女の敵に立ちふさがり、彼女のために奮起する。なぜならば、彼女こそ呵々大笑しながら傷だらけになり血まみれになりながら、率先して立ちはだかる壁を切り開いていく道標だからだ。
あのカラー口絵の女の子のくせにボロボロで、それなのにキラキラと輝いて聖剣ぶん回している姿はまさにそれを象徴するものだ、と全部読み終わったあとに納得させられるものだった。あのお腹は良いお腹だ!
それにしても、俺様なんでもできるぜー、俺様の言うこと聞いてりゃ全部勝てるぜー、と調子乗りまくって瑠奈っちに声かけてきた真神凛太朗くん、まったく話を聞いてもらえないどころか途中で遮られて逆に首根っこひっつかまれて、毎回イイように利用され使い倒され振り回されて、???マークが飛び交っている間に見事に便利使いされ倒されてるの、これもまた痛快展開になるんだろうか。面白すぎるんですけどねえ、このあたり。
同じように瑠奈っちに振り回されて毎回「ひーん」と泣いているケイお姉ちゃんが誠に愛しく、この二人の「手下」、うん部下とか仲間とか配下とかじゃなくて手下と呼ぶのが一番相応しい二人を両脇に従わせて、ガハハハと大笑いしている瑠奈っちは、辺境の山賊の親分じみていて、それはそれで一種のアーサー王像なのかもしれない。そこはかとなく蛮族みがあるよね♪
ぶっちゃけ、このアーサー王の継承戦争ってバックグラウンドとか世界観がよくわかんなくて、なんで日本でこれやってんの? とか、そもそもどういうノリでこういうことになってるの? という舞台設定がかなり強引かつ雑にぶっこんできていて、いやほんとわかんないんですけど、てな感じでいまいち乗り切れない部分があるのも確かな話。それを無視して楽しめるほどの野放図な勢いはまだ足りてない。まあそういうもんだからいいじゃない! と思わせてくれるほどのもっとシッチャカメッチャカに楽しくガンガンやっていってくれたら、気にならなくなるかもしれないが。
ケイお姉ちゃんが果てしなく弄られているときこそは、もうなんにも気にならなくなってましたけどね! 瑠奈っち、これだけケイちゃんで遊んでおきながら、自分の行動原理の根源は乙女しまくってるというのはちょっとズルくない? 一人だけ恋する女の子属性あとから垣間見せるとかケイお姉ちゃんにごめんなさいしといたほうがいいじゃない? ケイお姉ちゃんは許してくれるだろうけれど。まあ瑠奈っちはひたすらやりたい放題やってた方が輝いているので、変に物分りの良い良い子ちゃんにならず、この路線で行ってください。今後は真神凛太朗の方もノリノリで付き合いそうな感じなので、より酷いことになりそうでワクワクします。

しかし、モルガンの正体はちょっと予想を外されたというか、え? そっちなの? という人物で、だったらこっちの娘は誰なんだ?? というあたりは次巻以降か。
円卓の騎士たちの中では超有名株のガウェインとランスロットを初っ端から出してしまったので、いやむしろこれからどういうキャラ付けを円卓の騎士たちにしてくのかは逆に楽しみかもしれない。ケイちゃんがある意味はっちゃけすぎてハードルあげまくってる気がしないでもないですけど。

あと、主人公の真神凛太朗。外道呼ばわりされてますし、天才人外扱いですけれど、俺様系なのにメンタル相当繊細ですわねえ。ってか、幼少から天才過ぎて両親からも嫌われて孤独になって寂しい、けど認めるのは癪だから、世の中斜に見て拗ねてます、ってどんだけ真っ当に柔いんだか。天才は天才なんだけれど、バカと紙一重系のそれではなく、根本真面目だし良識的だし頭おかしい系からは程遠いですよねえ。これはもう瑠奈っちに大いに振り回されている方が余計なこと考えなくて済む、という意味でも相性ピッタリなのでしょう。
あの先生のアドバイス、わりと的確に当てはまってたと思うんだけれど、あれが被っていた仮面の方というのは若干首を傾げたくなるんですよね。瑠奈と真神凛太朗のそれぞれの在りようを正確に見抜いて、その上で二人の関係性を深慮してないと、そう簡単にああいうセリフでてこないだろうし。
ああいうセリフを語っていた人が、あとでああなるというのはむしろ演技なんじゃないかと疑ってしまったくらいで。実際はそういうこともなさそうだったのだけれど。
本性の方がよっぽど底が浅くて、むしろ表向きの顔の方が洞察力も人間性も基本的な知性や思想の幅についても広かったり深かったりしてそう、というのはなんともはや。
もう一捻りある登場人物なんだろうか。せっかくだから期待したいところではあるんだけれど。

羊太郎作品感想