はたらく魔王さま! 0-II (電撃文庫)

【はたらく魔王さま! 0−供曄]促原聡司/029 電撃文庫

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アルシエル率いる鉄蠍族が加わった新生魔王軍内で、幹部ルシフェルの謀反が発生! 待遇への不満から、魔王城を破壊して飛び出して行ってしまったのだ。
ルシフェルが向かったのは、マレブランケ族の勢力圏である南方。魔王やカミーオは、いずれ南進をすべく計画を立てていたが、最強のハグレ悪魔と恐れられるルシフェルとマレブランケ族との接触を危惧し、予定を早めて進軍を決断する!
魔王軍を迎え撃つのは、頭領格のマラコーダ率いる大軍勢。幻術を操り戦場を混乱に陥れる戦術に、魔王たちは大苦戦を強いられる。さらにはマラコーダと組んだルシフェルが敵として現れ――?
魔界の統一を目指す魔王の許に、後の魔王軍四天王となるアルシエル、ルシフェル、アドラメレク、マラコーダが集うまでを描いたエピソード・ゼロ第II弾。大会戦の果てに、魔界と天界の真実が明かされる!
サタン・ジャコブが魔界の王になるまで。そして魔王軍四天王が集うまでの魔王軍勃興編第二弾。表紙見ると、サタン確かに体格もたくましくなってるんだけれど、本編の頃の魔王サタンと比べるとまだスマートで真奥寄りなんですよねえ。
それだけ、まだこの頃は魔王としての貫禄はなかったんだ。まだ、寄せ集めのごった煮集団のリーダーであって、王様と呼ばれるには相応しくはなかった。というよりも、まだみんなから認められてはいなかった、というべきか。それとも、王という存在に対してまだ悪魔たちは誰もどう捉えるべきかわからなかった、というべきか。
サタンは既にこの頃、マレブランケ族を攻める前までに王としての在り方、目指すべき形を示してるんですね。それを承知していたのはカミーオとアドラメレクだけではあったのだけれど、今を生きるだけで汲々としていた悪魔たちに、あくまで自分たちの種族だけで生存する、というだけだった悪魔たちに、未来を見せ、魔界全体の繁栄を約束してみせた。それこそが、サタン・ジャコブを魔王足らしめたものだったのだ。決して、彼が誰よりも強かったから彼を魔王として崇めたのではない、というのがこの巻を読むとよくわかる。
サタン・ジャコブとカミーオ、そして魔王軍四天王と呼ばれた四人は野心や欲望だけではなく、確かに魔界全体のことを考えていたのだということがよくわかった。
でもだからこそ、彼らは人間界に攻め込まなくてはならなくなった、とも言えるんだろうなあ、これ。現状のままでは、遠からず魔界は持たなくなる、という判断があったからこそ人間界に攻め込んだはずだったし。
この、まだ破れて従属したとはいえサタンに心服など全然していなかったアルシエルが、サタン・ジャコブが考えていたこと、そのスケールのデカさを知るに連れて心動かされていき、彼が姿を消したときに彼の抱いていた夢を、サタンが自分に託すつもりだった、と知った時の、そして彼以外の者が継いだとしてもその夢を引き継げるだけの枠組みをしっかりと作り上げていたことを理解したときの、衝撃。後々、勇者に破れたときも魔王を助けて一緒に地球に流れてくるほどにサタンに心服しきったアルシエルにどうやってなったのか。この反抗的な彼の姿からは想像つかなかったのだけれど、ちゃんとそうなるだけの大きな変転がアルシエルの中にあったんだなあ。
意外だったのがマラコーダでした。対人類との戦いっぷりからこの人、マッドサイエンティストタイプのヤバイ人なのかと思ったら、思いの外理知的で全体のことを考えて動ける人だったんですねえ。好奇心強くて色々やらかすタイプかもしれないけれど、裏で悪いこと企むような人ではなさそうだし。謀略家ではあったかもしれないけれど、他者から誠実とみなされるタイプの謀略家だったのかもしれん。
色んな思惑があったとはいえ、四天王全員冷たい関係なんかじゃなく、ちゃんと絆があったんだなあ、と思うと感慨深い。
ルシフェルもちょっと見方変わったんですよねえ。言われてみれば、彼こそがサタンと一番付き合い長いわけで、ルシフェルとサタンって部下とかじゃなく、こうしてみると対等の友達だったんだなあ、と。精神面で幼いだけに、なんだかんだと弟分扱いみたいになっちゃいますけれど、アルシエルにかまけてばかりだから拗ねちゃったりとか、そりゃあれだけれど。でも、サタンが真奥になってもなんだかんだとルシフェルに甘いというか気安いのって、こういう付き合いの長さもあるんだろうなあ。
傅役としてのカミーオ翁も必要不可欠だったでしょうけれど。最初からこのお爺がサタンを立ててくれて支え続けてくれたからこそ、サタンもちゃんとやれたわけですしねえ。この巻で、それまでの保護者としての振る舞いを切り替えて、臣下としてサタンを魔王として仰ぎ見たシーンなんぞ、魔王軍の屋台骨が誰だったのかを知らしめたのではないでしょうか。お爺のあの振る舞いの切り替えこそが、真の意味で魔王軍を新生させたとも言えますし。
しかし、ちょっと残念だったのは魔界が思いの外狭い感じだったことかなあ。距離的な広さじゃなくて、勢力の少なさが。アルシエルの一族とマレブランケを支配下に入れただけでほぼ魔界統一状態になるとは思ってなかった。印象として尾張・美濃を支配下に置いたとか、畿内を抑えたくらいの感じで、ここから魔界全土を制圧していくぜ、的な盛り上がりを勝手にこっちでしてしまっていたので。もっと有象無象の様々な勢力が跋扈しているのかと思ってたんだが。それだけ、族滅が進みすぎて魔界全土が衰退傾向にあったのかもしれないけれど。
とはいえ、サタン・ジャコブ魔王として立つ。普段の日常ものとは毛色が違いましたけれど、面白かったです。女っ気、さっぱりなかったけど! 女悪魔出てたっていうけれど、全然女性としての存在感なかったよ!

シリーズ感想