放課後は、異世界喫茶でコーヒーを2 (ファンタジア文庫)

【放課後は、異世界喫茶でコーヒーを 2】 風見鶏/ u介 富士見ファンタジア文庫

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ここは、この異世界でただひとつのコーヒーが飲める場所。現代からやってきた元高校生ユウが切り盛りする喫茶店だ。アイスコーヒーやパンケーキ、照り焼きバーガー、親子丼ならぬ親子パン等など新メニュー開発はもちろん、お客さんの話をカウンター越しに聞いてあげるのも喫茶店のマスターの仕事。女の子にモテたい。一生だらけて生きたい。ずっと愛しのあの子のそばにいたい。立派なお届け屋さんになりたい…この世界の住人たちにも様々な「夢」がある。そして、毎朝のようにカフェ・オ・レを飲みに来るようになったリナリアにも…?とびきりの料理と飲み物で、今日も異世界喫茶は賑わいます。

あ、一巻から結構雰囲気変わったかも。
一巻の段階では主人公のユウには余裕がありませんでした。異世界に放り出され、外の世界を拒絶してこの喫茶店は彼にとっての拠り所である以上に逃げ場であり引き篭もりの穴ぐらである意味が強かった。喫茶店のマスターとしての自覚にやや乏しく、どこか自分の面倒を見るのに精一杯、というところが多かったのである。だから、客に対して何かを提供する以上に客から色んな何かを与えてもらうケースの方が多かった。ユウが主人公なんだから彼が物語の主役である、というのは間違いではないんだろうけれど、憩いの場を提供する喫茶店のマスターとしてはいささかどうなんだろう、というところだったんですね。
ですが、この世界でやっていくのだという覚悟、この世界の人たちと生きていくという事実を前巻で受け入れることができたのでしょう。この巻でのユウは喫茶店のマスターとして店を訪れる人たちの日々を見守り、ときにその日常に一緒に混ざって和やかに過ごし、ときに訪問者たちに訪れる人生の岐路に立ち会い、その行く先にそっと手を差し伸べる。そんな自分が主役ではなく、そこに訪れる人たちを主役として迎え入れ、送り出すマスターらしい立ち居振る舞いが似合うようになってきていました。
お飯事のマスターから、未熟ながらもプロの喫茶店のマスターとして振る舞えるようになっていたというべきか。
お客さんとの距離感も、公私の区別が全くついてないんじゃないかというような有り様から、親身に距離感近く接してくれるマスター、って感じになってましたし。
本人としては客と線引を引くようになった、という自覚もないでしょうし、実際以前と明確に変わったわけではないのでしょうけれど、ユウにマスターらしい落ち着きが出たことでそのへんのフラフラとした感じが自然に収まったのかもしれません。
話の内容も、色んなお客さんとの色んなエピソードに、それも喫茶店での話らしい短編が並んでいたというのも大きいでしょう。てっきり、リナリアとの話ばかりになるんじゃないか、と思っていたのですが、彼女の出番最後の方にちょろっとあっただけで全然出てこなかったですし。
そのかわりに印象深かったのが、やはり常連となった田舎から出てきた厳つい初心者冒険者のおっちゃんの話と、突然店に居座るようになった詐欺師だか賭博師だかよくわからない謎のくえないおっちゃんの話でした。って、おっちゃん二連発である。双方とも、ある意味一期一会の物語であり、喫茶店がやすらぎを提供する場であると同時に、ホテルなどとはまた違う形の人を迎え入れ送り出す、人生の切れ端を垣間見る場所なんだなあ、というのを実感させてくれる話でもありました。
ユウとしても、自身の未熟さと同時にマスター冥利に尽きる出来事でもあったんじゃないかな。そして、常連のお客さんというのが、ときに伝手として最強になるというか……ある種の共犯者というか……。公私の区別はつけるべきなんだけれど、それを踏まえた上でプライベートでも友人関係になれる、というのはいいですよね。それも、本来なら関わり合いにならないような立場の相手とも、客とマスターという立場から始めることで親しむことが叶う場合もある、と。
コルレオーネ氏、可愛いウサギさんだけれど今回はひたすらに男前でした。ってか、粋でした。カッコいいねえ、こういう大人の男性って。ウサギさんだけど。
ともあれ、喫茶店という主題が前回よりもより色濃く、鮮やかに描き出された良い続編でありました。面白かった、というよりも味わい深かった、という感じで。

1巻感想