新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙III (電撃文庫)

【新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙 3】 支倉 凍砂/文倉十 電撃文庫

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賢狼ホロの娘・ミューリの旅、舞台は島国ウィンフィール王国へ!

聖職者志望の青年コルの旅の連れは、「お嫁さんにしてほしい」と迫ってくる賢狼の娘ミューリ。海賊の島から出た二人は、嵐に巻き込まれウィンフィール王国の港町デザレフにたどり着く。
教会が機能していないその町で、コルは「薄明の枢機卿」と呼ばれ、まるで救世主のような扱いを受けることに。
そしてコルはミューリの求愛に向きあうべく、自らを「兄様」と呼ぶことを禁止し、関係を変化させようとするのだった。
そんなコルたちの前に、イレニアと名乗る商人の娘が現れる。彼女はなんと羊の化身であり、“ある大きな計画”に協力してほしいと持ちかけてきて――?
……ちょっと待って。ちょっと待って。
長らく行方がわからなくなっていたホロの仇でもある「月を狩る熊」の情報がようやく、思わぬ所から出てきたわけですけれど、なんかスケールが桁違いなんですけど。
「月を狩る熊」って実は熊じゃなくて、ゴジラなんじゃないの? ほら、最近の日米各実写版もアニメ版のゴジラもわりとごっつくなって見方によっては熊みたいだし。
そうだよ、ゴジラだったんだよ、クマーは。でなければ、くまモン。
いずれにしても、新大陸の話が出てきたけれど、これ絶対に踏み入ったらあかん暗黒大陸なんじゃなかろうか。変に刺激してクマーが帰ってきてしまうと、いきなり話が「その日、人類は滅亡した」とかいうたぐいの話になりかねない、とすら思ってしまう馬鹿げた存在なんだけれど。ちょっと話を聞いただけでも。
それくらい、オータムさんが教えてくれたクマーの情報や、新大陸で目撃されたクマーの話って、ゴジラ規模なんですよね。なんで、海底に足跡残ってるんだよ。それも、巨大なクジラの化身であるオータムさんが、長らく足跡と気づかなかった、というくらいのデカさの。
いやだから、ゴジラだって、そいつ。

羊の化身であるイレニアが持ちかけてきた話、或いは彼女の野心であり、人ならざる者たちの夢とも言えるその話は、同時にウィンフィール王国がもくろんでいる国家事業の秘密を明らかにするものでもあり、コルは信仰の問題はどうしたんだ、と戸惑い憤ってるけれど、ぶっちゃけるとコルが最初区別していた2つの問題は決して同時に存在できないものではないんですよね。
どちらか一方の目的のために、片方の目的を踏み台にしてしまおうとしているのではなく、どちらも欠かせない両輪になろうとしていることを、コルは最終的に気づいたようだけれど。
いずれにしても、話は宗教改革や旧来の教会からのウィンフィール王国の離脱という問題に収まらない大きなものになってきてしまった。コルは薄明の枢機卿なんていつの間にか二つ名までついてしまって、中心人物の一人とも言える立場に追いやられてしまったのだけれど、その二つ名が身の丈にあわないとコル自身戸惑っているように、話のスケールもコル自身の身の丈を越えようとしているのではないだろうか。もちろん、それを誰よりも痛感しているのはコル自身なのだけれど。少なくとも、新大陸にまで足を踏み入れるほどの何かを、コルは持っているのか。
ミューリは、世界各地を旅して回りたいという願望はあっても、最終的にはあの両親の待つ温泉宿へと帰るつもりである。狼の化身であるミューリにとって、世界は自分の居ていい場所を見つけられないところではあるんだけれど、でも帰るべき場所はあるんですよね。だから、そこを捨ててまで終わりのない旅を続けることはできないし、新天地を求めているわけでもない。
イレニアが語った夢は、ミューリにとっても心躍るものだったかもしれないけれど、でもそこはミューリがたどり着きたい場所ではない。
でも、コルが行くとなったら、ミューリはどうするだろう。こればっかりはコルの胸三寸でありましょう。今までと同じ関係のままなら、ミューリはもうそこまでついていけない気がする。でも、コルがついてきてくれ、と願えるような関係になったら、ミューリはついていくでしょう。
まあその前に、関係がどうあれミューリを思ってコルがそのような決断をすることは難しいでしょうし、それが自分の役割かというとそこまで思い切るような出来事には遭遇していない。逆に言えば、新大陸を目指すに足るだけの理由を得てしまう展開も、決して否定できないのだけれど。

しかし、この世界における羊さんは、羊の化身は、どの人も覚悟極まってるなあ、と感心させられる。羊は無力どころか、新たな地平を切り開いていく開拓者のようじゃないか。
でも、よりにもよってイレニアさん。羊のくせに、「狼」にあれだけ惚れ込んでしまうなんて。かのオオカミさん、まったくもう相変わらずキレッキレだねえ。全然変わらず元気そうで良かったですよ。

シリーズ感想