ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット3 (電撃文庫)

【ソードアート・オンライン オルタナティブ クローバーズ・リグレット 3】 渡瀬草一郎/ぎん太 電撃文庫

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「んー…そこは私と海世くんの仲ですからーー」
《SAOサバイバー》にして、VRMMOの中限定の《探偵》クレーヴェル。そんな彼のリアルをよく知るいわくありげな美女の登場に、戦巫女・ナユタと忍者・コヨミは動揺を隠せない。謎の美女、リリカとクレーヴェルの関係とは?
その一方、現実世界のクレーヴェルの自宅では、ナユタのお泊りイベントが発生。微妙な距離を保ち続けてきた二人の関係に、大きな変化が訪れるーー?
VRMMO《アスカ・エンパイア》を舞台に綴られるもう1つの《SAO》の物語、ここに完結!!

ナユタ、これヒロインとして最強なんじゃないですか? 圧勝ですよ。クレーヴェルこと暮井さんについに手も足も出させずに完落ちさせてしまいましたよ!?
すげえ、唖然でした。それも、まったく小細工らしい小細工も使うことなく情緒的にも感情的にも論理的にすら一部の瑕疵すらなく、暮井さんを全く有無を言わせないまま堂々と正面から押し切ってしまったじゃないですか。
泰然と一歩一歩歩み寄ってくるナユタに対して、暮井さんが一歩も触れることが出来ないまま後ろに退いていき、そのまま崖下に転落していった、という表現が思い浮かんでしまうほど抵抗の余地なくやられてしまった感すらあります。
本来暮井さんほどの人だと、女子高生からのアプローチなんてほぼ一蹴、取り付く島もない扱いのはずなんですよね。事実、クレーヴェルは隙らしい隙は一切見せていませんし、女性に対しても決して主導権を握らせていいようにされるタイプじゃないんですよね。いやまあ傍若無人な姉に対しては振り回されてたりしましたけれど、あれでちゃんと首に縄はつけているようですし。
どちらにしても、まだ未成年の小娘なんぞがどうこう出来る男性ではないはずなのですが、ナユタの方が小娘どころじゃなかったのですなあ。
未成年の女性に手を出すのは倫理的にも法律的にも大問題です、という所を強調してナユタに対して線引しようとしていたことが、あとになってみるとむしろ弱点になってしまったのかもしれません。
暮井さんの方からナユタに手を出すにしても、ナユタの方から暮井さんに何かをして彼に社会的なダメージを与えることにしても、どちらもお互いにそんな事はしないという信頼があれば多少プライベートに踏み込んでも問題になりませんよね、というところからナユタさんグイグイと攻めていって、その上でところで私が未成年じゃなくなったらそもそも問題の発生根拠からなくなるんじゃないですか? という虚を突くようなコンボは見事の一言でした。なまじ、未成年という点を強調して障壁としていた暮井さん側からしても、あれ?じゃあ何も問題ないんじゃない? と思ってしまう心の陥穽。そもそも、予防線として敷いていたそれが暮井さん自身の言い訳になってしまっていた時点でもう大勢は決まっていたのかもしれませんが。
それにしても、押し一辺倒とは程遠い自然にスルリと懐に入り込みつつ、泰然自若な姿勢を見せながらふとした瞬間に垣間見せる弱い部分、それを桐の切っ先にして飛び込んだ先で誕生日による条例的にヤバイ年齢からの脱却を宣告してみせた上での、本気の告白、というハメ技かというコンボの華麗さにはもう言葉もないくらいの見事さでありました。
ナユタさんの恐ろしいところはこれ、まったくの計算ずくでも天然でもないというところなのでしょう。多少の女性らしい奸計は図りつつも常に真摯であり自然な飾らない態度であり、そして怯むことのないくそ度胸でどんと行ってしまう男らしさが、暮井さんをして全く太刀打ちできない有様にしてしまったんですよね。
自分の存在が暮井のトラウマに対しての救いになる、と自覚しながらお互いを依存の対象とさせずに、ちゃんと対等の男女として立脚する付き合い方に終始していたのも、暮井さんからするとどうしようもなかったのでしょう。もっとナユタが寄りかかってきたり、自分が必要以上に彼女に寄りかかってしまったり、あるいはお互いに慰め合うような関係になってしまった、あるいはなりそうな気配があったら暮井さんみたいな人はキッパリと距離を置いてたと思うんですよね。
ところが、ナユタはそういう瑕疵を一切みせない対等の、依存ではなくお互いに真っ当に支え合う関係をテキパキと構築してみせたわけで。こういうところが、周りの人を含めてナユタが女子高生ではなく一回りは年上の大人の女性と勘違いさせるところだったんでしょうねえ。
一方で、甘えるところはグイグイえぐりこんでくるんだから、とんでもないですよ、ほんと。
女子高生を一週間近く自宅に泊まらせてあげる、なんて危険な真似、暮井さんみたいな人が絶対許すはずがない、というかもし他の人がそういうシチュエーションに見舞われていたら、両方に対して冷静かつぐうの音もでないほどの正論で滾々と説教して反省させそうな人なのに……。
あの、ナユタが帰ったあとになんで自分、許可してしまったんだ? と懊悩する暮井さんはなんとも可愛らしかったです。貴方は悪くない、あれはもうナユタが上手としか言いようがない。偶々、話を聞いてしまっていた取引先の虎尾さんがアレは無理、と太鼓判を押すくらいでしたしねえ。

いやもう、ナユタと暮井さんの関係の進展具合については、もう圧巻のナユタさんにアッパレアッパレと感服しきりだったわけですが、世界観の方も非常に面白かった。
SAOのスピンオフという体ではあるんですけれど、例えば同じスピンオフの【ガンゲイル・オンライン】がその世界観を利用して思う存分銃撃戦をドンパチやってるのに対して、本作はVRMMOの世界を利用する、というよりも<SAO事件>が世間に与えた影響についてその被害者たちの現況を踏まえて描きつつ、その先のVRMMOの未来の可能性について、使用者やそれに関わる企業、技術開発、そこから広がっていく社会的な影響、という土台部分にスポットを当てて描いていたのが印象的でした。
今回も、企業体とのコラボレーションやVRMMO世界内での観光事業やVRオフィスなどの事業展開、思考出力という新しい技術の可能性とその未完成っぷりなどについての話が飛び交っていたわけですが。
一足飛びに未来世界が近づいてくるのとは違う、VRMMOという新しい技術革新に対してもやはり社会は、社会の中で生活している普通の人々は、その新しいツールに戸惑いながらも着実かつ堅実に自分たちの生活の中に還元していっている様子が映し出されていて、そういうのって世界観の大いなる基礎工事だと思うんですよね。地に足の着いた土台のしっかりした世界観が、こうやって醸成されていくのは、むしろより強く未来を意識させてくれて、変に近未来的な世界観をぽんと提示されるよりもワクワクしてしまいます。
これで、本シリーズが終わりというのはものすごく名残惜しいのですけれど、いやもう重ね重ね名残惜しいのですけれど、もっと暮井さんとナユタの次元の違う甘酸っぱいのかクールミントなのかわからない大人の関係を堪能したかった、と同時ににゃんこやカピバラさんなど何気にマスコットAIキャラが可愛すぎるところや、謎の方向への展開を見せるアスカ・エンパイアという舞台も見ていたかっただけに、渡瀬さんにはまた何らかの形でこの世界観とキャラクターたちに関わってほしいものです。
ほんともう、めちゃめちゃ好きでした、この物語に登場する人たち同士にたゆたう繊細でありながら剛く靭やかな関係が。

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