魔王学院の不適合者2 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~ (電撃文庫)

【魔王学院の不適合者 2.~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~】 秋/しずま よしのり 電撃文庫

Amazon
Kindle B☆W

魔族を統べる“七魔皇老”アイヴィスを偽りの魔王から解放し、ひとまずは平穏を取り戻したアノス。そんな折、魔王学院デルゾゲードに“錬魔の剣聖”と呼ばれる転校生が現れる。時を同じくして魔族最強の剣士を決する“魔剣大会”の開催が近づく中、なぜか“不適合者”のアノスが、件の転校生と共に選手として推薦され―?不適合者を貶めたい小物のくわだてか、偽りの魔王が仕掛けた陰謀か。いずれにせよ、魔王の採るべき道は一つのみ。迫り来る謀略を、あらゆる理不尽な粉砕せよ!暴虐の魔王が新時代に刻む覇道の軌跡―第二章“魔剣大会編”!!
さすがに古の伝説の魔王その人であるアノス、強さもさることながらその人格といい考え方といい大器そのものなんだけれど、だからこそそんな彼をして自然と敬意と愛情を抱いてしまう彼の今世での両親が二人共素晴らしい人なんですよね。
ただの能天気なアーパーお母さん、とかは思ってないですよ、いやちょっとは思いましたけれど、生まれた途端に喋りだして大きくなって我は魔王であるなんて言い出した子供を恐れもせず引きもせず、全力でうちのアノスちゃんすごい! と受け入れまくった挙げ句に人間のとって前人未到の魔界へとアノスのために躊躇なく引っ越すとか、能天気だけでは済まないその行動力と息子への愛情はとんでもない、とは思っていましたけれど、ちゃんとそれだけ全力で息子を愛するだけの理由が二人にはちゃんと存在したのである。その語りは重く、しかし溢れんばかりの愛情に満ち溢れていて、これは魔王様でも感化させられますよねえ。
もとよりアノスくん、魔王とはいえ全然暴虐の王でもなんでもなく、道理や情を深く解する人柄なのだけれど、同時に大器であるということは相手の思惑なんかをどれだけ捻じくれてても大事な所をちゃんと把握して、解釈して、受け入れ飲み込んで受け止めることが出来る人でもあるんですね。そういう人がですよ、これだけ何の裏表もなくストレートに愛情注がれたら、そらもう真っ向から全力で受け止めてしまいますがな。
今回は鍛冶師のお父さんが鍛えてくれた、愛情のこもった、しかし何の力も備えていない魔剣でもなんでもない剣を奮って戦うのですけれど、ハンデでしかないそれを振るって戦うのは父親の愛情を無駄にしないため、というだけの理由だと思ってたんですよね。でもこれがまた違ったんですよ。ちゃんとその剣には意味があり、意義があった。その剣だからこそ救えた人が居た。まさに、父のアノスへの愛情が、アノス一人では救えなかった人を助けるための大事な鍵となったのである。
アノスくん、俺TUEEEEの典型とも言える無敵っぷりでほんと何でも出来るし、限界なんかないように見えるのだけれど、でも一人ではないんですよね。これほどの男を、しかし支え助ける人たちが周りに居て、彼もまたそれをちゃんと認識してて、心から感謝しその手を取っているのである。
それも、アノスくんに比肩するような力の持ち主だけじゃなく、ほんとなら何の力もないようなお父さんとお母さん、能力的には雑魚に等しいファン・ユニオンの面々。統一派のリサにしても、決して力ある方ではないのだけれど、皆が自分のできる限界を振るってアノスの助けになるように頑張り、それが実際彼の助けになるのである。
ファン・ユニオンの女の子たちの献身、あれなんてそれまで周りでキャーキャー騒いでるだけのアノスファンのミーハーな娘たち、としか認識していなかったのを根底から叩き潰されましたからね。
めっちゃかっこよかった。魔王様からあれほどの深い敬意と感謝を捧げられた存在って前世にさかのぼっても存在しないんじゃないだろうか、というくらいアノスくんが最敬礼でしたもんね。
こういう、力ない人たちも蔑ろにせず、きちんとリスペクトがある作品、それも主人公が俺TUEEEな作品でこういうところを大事にしている作品は、好きだなあと思います。

しかし、今回登場の剣士レイ。前世の魔王の側近だった男の転生でほぼ間違いない男の子ではあるんですが、前世では主君と配下、という関係だったのがこの生では対等の友人同士として新たな関係を結べたのって、まあ記憶がないレイくんよりもむしろアノスの方がなんだか嬉しそうなのがなんともニマニマさせられるところであります。
同性の気のおけない関係、というのがよほど心地よいのか、ミーシャとサーシャに構ってた前回よりもかなりテンション高めで上機嫌なご様子。あまりにも仲良さそうなので、サーシャが拗ねるのもちょっとわかるなあ。なんか出会って速攻で間に割って入れないような男同士の仲の良さ、なわけですから。
さりげなく、サーシャは置いてけぼりして、ミーシャとじっくり時間をとっていい雰囲気醸し出していたのは苦笑してしまいましたが。前回は姉妹二人をマイペースにぶん回していた感もあったアノスくんですけれど、今回はバチバチ魔王様モードではしゃぐ相方はレイくんが居たから満足したのか、わりとミーシャペースに合わせてじっくり付き合ってあげていたところなんぞ、むしろ男ぶりがあがっていて、サーシャにもそれやってあげてください、ほんとにw

意外と敵の黒幕の方は未だ正体を表さず一筋縄ではいかない相手のようで、アノスくん相手にちゃんと同じステージで指し合えているあたり、かなり歯応えのある敵さんのご様子。
ちゃんと敵に相応の格がある、というのもまた面白くて良きカナ。

1巻感想